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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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???話partD9

「これは……」


 野々野足軽は顔の左半分……そこをささげて最悪の所、死だってあり得た。だって脳が……顔が……頭が半分なくなるのだ。普通は死ぬ。そう思うのは当然だ。けど……どうやら野々野足軽は賭けに……いや、想定してたことになってこの力の中を漂いつつニヤッと笑った。


 実際、野々野足軽の頭の半分はなくなってる。でも……見える範囲はなにも変わってない。こんな事はあり得ないだろう。だっていつも見てる範囲……視界というのは両目で見てる範囲だ。だからこそ、片目を閉じて改めて見ると、ちょっと視界が変わる。両目で見たものを脳が上手く処理していつもの視界は保たれてる。

 だから左の顔がなくなったんだから、本当なら左目の視界はなくなって、右目だけの視界になるはず。でも……そんなことにはなってない。確かに視界は変わった。けど……それは右側に寄った視界じゃない。ちゃんと両目でみてる視界だ。その証拠に、右目を閉じても、野々野足軽の視界は確保されてた。


「これって、新たな力の影響を受けた視界ってこと?」


 見えてる範囲は変わってない。けど……見えてるものは変わってた。実際、今の足軽は左側の顔と、腕と、脚がない。でもこれで確信できた。


「いくぞ」


 野々野足軽はなくなった左腕を動かす。感覚はあるから、それが出来る。それに……実は左の顔をささげたことで、その目には無くしたはずの腕も脚も見えてた。まるで透明な体になってしまってるように見えるけど……野々野足軽にはなくなった側の体が見えるようになってるのだ。

 そしてその無くした左腕なら……


「やっぱり」


 なくしたはずの左側の顔に触れることが出来た。その感覚もある。どうやら脳が『ある』……と錯覚してたわけじゃないらしい。ちゃんと脳は仕事をしてた。そこにちゃんと左腕も左足も、そして左側の顔だってあったんだ。ただ、存在が別の何か……に変わっただけで。

 野々野足軽には今、2つの力が混在してる。右半分のこれまでの力……そして左半分のこの界域にあった力に侵食された体。もしかしたら野々野足軽の体の左半分はチャンネルが変わってしまった……のかもしれない。ほら、電波の周波数とかそんなのが変わったらザザーッ――という音しか対応した機械でも拾わなくなるじゃないか。

 最近の若者……それこそ野々野足軽やら野々野小頭なんてのはラジオなんて知らないかもしれないが、右側と左側……それぞれが違うチャンネルになったと言うのなら、存在してるけど……どっちかの目で見たときは見えない……みたいなのも説明できるかもしれない。


 でも野々野足軽には一つ、とても気になる事がある。


「これって、ここからでられたとして……大丈夫なんだろうか?」


 それである。

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