第四十九話Part2
「あの夢ってすごく願ってる事を叶えて……ううん、叶えてるように見せて捕えるものじゃないの? おばあちゃんもおじいちゃんも互いに互いと離れたくないとか思ってたのかな? それが叶ったはずだよね?」
小頭は後ろの鬼男にそう尋ねる。叶ったのなら、それで満足できる筈である。そうして『この夢がいい』――と思わせて夢に捕える。そういうものだと小頭は理解してた。でもおじいちゃんもおばあちゃんも戻ってきた。
「あの二人は恐ろしいと思ってる事も、そして願いも一緒だったんだろう」
端的に、鬼男はそういった。それはつまりはおじいちゃんもおばあちゃんも離れることが何よりも怖いと思ってることで、だから一緒にいる願いの夢を見てた。
「でも……二人は現実でも結ばれてるよ?」
「だから戻ってきた。満足する夢だったから、現実と同じだから、普通に満足して出てこれたんじゃないか」
そんな事って……と小頭は言いたい気もするが……けど確かにそれしか考えられない。鬼男の願いとか夢とかはちょっとのぞき見した程度だからあんまり参考にはできないかもしれないが、小頭は自分自身で夢を見たんだからよくわかる。
初恋での失恋……その失恋をひっくり返すような夢だった。それはそれは小頭にとってはつらい思い出……いや、思い出にも出来てないような出来事だ。だからこそダイレクトに心を直撃したといっていい。けど、初恋といってもそれは一つの恋。さっきのおじいちゃんとおばあちゃんの夢とか、それこそ鬼男の夢……それと比べたらなんか一つの恋って全然しょぼいな……とちょっと思う。
もちろん小頭くらいの年代だと惚れた張れたは十分に大きな事だ。関係性が狭い学生の期間ではそれは大きな出来事として記憶に残るのは誰もがそうだろう。けどだ。けど、さっきの夢も鬼男の夢もなかなかに激しかった。叶わなかった後悔、もう取り戻せない時間……自身の生まれによる制約……そんなものを破ったりさ……なのに小頭は一つの恋。それも長年想ってた……とかじゃない。一目惚れである。
(私って浅いのかな?)
そんな不安が胸に渦巻いてしまう。初恋で夢に引きこもるなんて……なんか浅くない? と小頭は思ってしまうんだ。だって鬼男はもうなんか取り返せない命とかありそうだったし? おじいちゃんとおばあちゃんは二人の未来を勝ち取ったようなものだ。
なのに……である。なのに小頭は初恋って……初恋が叶ったから夢にいる? あっさ……である。
「どうした?」
鬼男が両手で顔を覆ってる小頭に不思議そうにそう声をかけた。それに対して小頭は――「うっさいばか」――と理不尽な言葉を投げつけてた。




