第四十七話part2
『早くいくニャー!』
もちろんそれは少年の思い込みだっだだろう。だって現実では猫が喋るなんてことはない。もしも本当にそう聞こえたというのなら、それは少年の都合のいい思い込みだ。そう、言ったように思いたいだけ。
けど、確かに少年はそれを受け取ったと思った。本当ならあの猫たちにだけ気を取られてくれててればよかった。けど、育代を担ぐ少年に一番豪華な服を着た人が気づいたようだっだ。
「あいつを捕えなさい! 育代を取り返して!!」
こっちに指を突き付けて凄い顔をしてその女の人は言ってきた。まるで鬼……そう鬼みたいだ……と少年は思った。その言葉を受けて、猫を追ってた子供たちが少年の方に来る。少年は慌てて入ってきた通路に逃げる。
でも少年は育代を抱えてる。小学生の女の子は男の子とそんなに体格が変わらない。それは育代と少年もそうだった。実際体重とかは育代の方が軽いだろう。彼女は細かったし。でも、身長はほぼ変わらなかった。
そんな人一人を抱えてるんだ。そんなに早く走れるわけはない。
「はぁはぁはぁ……」
そんな風にすぐに息が上がる。でも少年は足を動かし続ける。後ろは……みない。気にしたって仕方ないとおもったんだ。今はただ足を前に進める事だけを少年は考える事にした。そして奇跡は起こった。
「ゼハァ……ハァハァ……」
彼は鍾乳洞を超えて城を抜け出して、森にまでやってこれてた。本当に奇跡だった。なにせ誰とも会わなかったのだ。追いつかれることもなかった。そんな事ありえないと少年自身が思う。でも、実際そうだった。
だからここまでこれた。森の中の木に育代を寄りかかせてちょっとした休憩をとる。流石に限界だった。既に足は棒のよう。でもまだ安心はできない。
「んくっんくっ――ぷはぁっ!」
水筒をあおって水を喉に流し込んだ。
「これからどうしよう……」
ふと育代の事を見てるとそんな言葉がついて出た。勢いでこんなことをしてしまったが、実際、問題が少年の頭には思い浮かぶのだ。このまま育代を家まで連れていく? それは一番の候補だろう。でも……それでどうにかなるだろうか? と考えた。両親は受け入れてくれるだろうか? この前はかくまってくれた……でもずっと……なんてのは無理だと思った。
それに……
「あいつらは異常じゃ……」
そう、あの村の奴らは異常だ。もしかしたら、親に危害が及ぶかもしれないと思ったら、家にかくまう……というのも危険だと少年は思ったんだ。




