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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第四十五話part5

「何なのこの人……」


 育代はそのミイラを見てそんな事を呟いた。でもなんとなくだけど……この人が重要な人……なんだろうという事はわかった。だってこんな所で……豪華な服をきてミイラになってるんだよ? これで重要な人物じゃなかったらなんなのか? 


「不審者? そんなわけないよね」


 そもそもただの不審者なら、この高そうな服も胸元にある大きな宝石があるネックレスも頭にある冠も取り除いてるだろう。そうこのミイラはとても高そうなものを身に着けてるのだ。普通に考えてこの人がただの不審者なら、そんな怪しい奴の死体を放置したとしても、身に着けてる金目のものは取るだろう。

 そうじゃなく、全てまるまるこの人の者は残されてる。つまりはこの人はきっとこの村にとって重要な人……と言う事なんだろう。この村で重要な人……というのなら一人、育代は心当たりがある。


「この村ができたきっかけ……迫害の呪術師……万千代……様?」


 そんな話を以前に聞いたことがあった。この村の成り立ち。それは子供を集めて語られるのだ。この村の教育の為だろう。この村の教育は『恨みを忘れてはいけない』――である。そんな思想が子々孫々と受け継がれてきたのがこの村だ。


 呪術というものを煮詰めて、恨みを配合して熟成して熟成して……でもその毒は外だけに向くのではなく、内側に蔓延してる。だからこの村は……周囲よりも早くどんどん人が減ってる。

 あと何年……この村が存続できるのか……その焦りがこの村の大人にはある。それはいつだって優雅にふるまってる花月様にも……だ。周囲の大人は何かを成そうとしてる。それは感じてる。そしてそれの実験台に使われてるのはこの村の子供たちだ。

 その当事者になってるのが今は育代ということだ。昔はそれこそ、別の……お姉ちゃん……と呼んでた子がいたような気がする育代。でも……その『お姉ちゃん』はいつの間にか、村で見ることはなくなった。それからだ。それから育代が花月様に名指しされるようになった。


「私……なんで」


 育代は驚いてた。そしてちょっと悲しんでた。それはなぜか……それは今まで、そのお姉ちゃんを忘れてたからだ。今この瞬間に、思い出した。沢山の想い出があるのに、今まで忘れてたなんて育代には信じられなかった。

 地面に染みが出来る。静かに、自然と涙が育代の頬を伝ってく。

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