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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第四十三話Part6

 その日は雨の日だった。シトシトと降り続く雨。それが授業のBGMになりちょっと湿っぽい空気が教室を満たしてた。誰かが作ったてるてる坊主が一つ……窓のレールに置かれてた。

 きっと吊るす手段がなかったんだろう。


「ふぁー」


 彼は退屈してた。彼の席は中央寄りの位置で、後ろにも前にも、そして左右にもクラスメイトがいる。彼は勉強を真面目に受けるタイプではなく、雨が降ってる外を時折気にしてた。

 それは昼休みに外で遊べなくては困るから、昼まではやまないかな? という思いである。それに……


 ぐうー


 そんな控えめな音が響く。お腹を擦って机に突っ伏す。どうやら彼は腹が減ってるようだ。一応ノートと教科書は広げられてる。でも書き込む姿勢はまったくないし、そもそもが今は社会の授業だったけど、出してるのは国語の教科書だった。

 ただ広げて体裁を取ってるだけだ。


(腹減ったな……)


 朝からわんぱくな彼は朝くったエネルギーは朝には消費してしまうらしい。だから昼のためにも給食が楽しみでしかたなかった。そして頭に浮かぶのは今日の献立……そしてふと、彼女……幾代をみる。

 幾代は変なやつだ。それが彼……いやこのクラスの共通認識だろう。誰とも話さず、ただ静かにそこにいるだけ。でも凛としてるその姿勢は華やかさ? というのがあった。彼女は背筋が伸びてて、廊下を走ったりもしない。こんな田舎には珍しいほどの……というか彼は幾代くらいしか、あれだけ教育というのが行き届いてる存在をしらない。

 授業が始まるまではワイワイガヤガヤとしてるのが教室で、授業の鐘がなると、皆が慌てて席につく……そんなのだろうと思ってたけど、幾代は違う。幾代は休み時間も席を離れないし、教科書を広げてる。立つ動作、座る動作までもがさつな田舎者……とは違ってた。

 いや田舎者なのはまちがいないんだけど、きっとクラスの誰もが「違う」ことを意識してたはずだ。だからこそ、彼女は一人だったと言える。そんな幾代に話しかける様になったのは、ある日放課後にあまりにもエネルギーを使いすぎてヘトヘトだった彼が道端で寝てると、そこをツンツンとされたからだ。


「んが……なんだ?」

「あっ、死んでなかったんだ」


 ――それが二人の最初の会話だった。

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