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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
69/871

68P

「何か心当たり……いや、なんでもない」


 野々野足軽は思った。何を聞いてるんだ−−って。だって平賀式部はこの学校でも三本指に入ると言われてる美少女である。心当たり? 全校生徒だろう。女生徒も半分入る? いやいや、美少女は性別関係なく好かれるから。それに今やジェンダーフリーが叫ばれる昨今である。これを男が送ってると考えるのは早計だろう。まあどうみても男っぽいが……なにせ達筆なのは男女関係ないと思うが、女性なら告白するなら達筆な人でももっと可愛らしい文字で書くだろう。


 字がうまいということは、そこらへんもっと自由度高いと思える。女の子に送るのに、この字はない。下手したら読めな。達筆すぎて。流石にミミズがはったかのうよう……とまでは言わないが,こんな字を見慣れてない現代っ子にはなかなかに厳しいものがあると野々野足軽は思った。


(待てよ……これだけの思いがこもった手紙だ。簡単にサイコメトリできるんでは?)


 手紙に目を落として野々野足軽はそんな事を考える。実際サイコメトリは思いが強くこもってるものほど、鮮明に読み取れるってことがある。実際野々野足軽は練習で色々と家にあるものをサイコメトリしてそれを実感してる。


 この手紙はどう見ても、これを書いた当事者はめっちゃ気持ちを込めて書いてるのがわかる。となると、サイコメトリで深くこれを送ったやつの気持ちを読み取ることが出来るはずだ……と野々野足軽は思った。


(でもそれって、気軽にやっていいことか? 他人の気持ちを知るなんて……)


 そんな躊躇が野々野足軽には生まれてる。家族ならそんな遠慮なんてなかったわけだが、流石に他人となると躊躇われる。


「どうしたら……やめてもらおうにも、誰かわからないから……私、不安です」


 そう言って平賀式部はそっと指で野々野足軽の手に触れてくる。それは本当にちょっとだけ、指先だけが触れる感じ。添えてるわけでもない。遠慮してるのが伝わってくる。本当ならこの話をするのも躊躇ったのだろう。野々野足軽と平賀式部の関係は友達なのか、ただのクラスメイトなのかまだ曖昧なところがあるからとか、異性だからとか、きっと色々とあるんだろう。


 けどそれでも彼女には野々野足軽くらいしかこのクラスには相談できる相手がいないのだろう。多少なりとも学外でも話したことがある相手……だからこそ選ばれたと勘違いしないように野々野足軽はする。


 でもそれでも…… わずかに触れた指からでも、彼女の不安は野々野足軽に伝わってきた。わずかに震えてる。そんな女の子の様子を見たら、ためらいなんてどこかに言ってた。


「ちょっとその手紙、よく見せてもらっていい?」


「はい、どうぞ」


 そう言って平賀式部から手紙を受け取る。そして手紙を見てるふりをして、野々野足軽はサイコメトリを発動させた。

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