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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第四十二話Part3

 鬼男は大きく息を吸って大きな声を出した。実際小頭には声を発する前に耳を塞がれてたから、どれだけ大きな声だったのかはわからない。でも……その声が凄まじいってのは伝わってきてた。


 それは空気の震え――だって肌にビリビリとその振動の強さが伝わってきてた。確かにこれなら、一点を攻撃するパンチとかよりも、広範囲に威力を伝える事ができるだろう。

 そしてその鬼男の狙いはあたってた。実際見えもしてない相手だった。それをよくこれまで見えない中、殴ってきたな――と小頭は思ってたが、それでは結局、変わり身の術? をされてかわされてきてた。

 それはきっと鬼男の感覚と小頭の曖昧な指示のせいだろう。実際見えない相手の位置を正確に伝えるのは難しい。画面ではそこにいても、1秒後に画面と同じ場所にいるとは限らないからだ。


 いや、むしろ1秒後には同じ場所にいないほうが普通だろう。けどそれをわかってるからこそ、鬼男はなんの躊躇いもなく行動してたとも言える。でもそれでも捉える事はできなかった。だからこそ、今度は音を使った。音はきっと拳よりも速さと範囲を兼ね備えてるだろう。


 空気の震えさえ感じるほどの咆哮……それによって現れれた存在……それは……


「あわわ……」


 ペタン……とその場に腰を落としたのは……子ども? 何やら民族衣装みたいなのに身を包んだ簡単な顔をしたへんな存在。観る限り、忍者ではなさそう。なんだろう? 雪ん子とか……そんなのかな? と小頭は思った。


「えっと、あなたは……」

「油断するな。これも罠かもしれない」


 なるほど……と小頭は思った。確かにいきなり姿を見せたそれが、本人……とは限らない。本当に騙すことに長けてる存在なら、予想外の事が起こっても、まずは身代わり位は用意してるだろう。

 そしてそれは相手を騙しやすい姿をしてるはずだ。なんか衣装は凝ってるのに、顔はまるで指に目と口を書いただけ……みたいなのも怪しいとそう言われたら思えてきた。流石は鬼男は戦闘慣れしてる。

 小頭は思わず心配する心が出てしまったが、それが相手の思う壺なのかもしれないのだ。なにせ先に攻撃を仕掛けて来たのは、眼の前のこいつ。それを忘れてはいけない。

 間抜けで簡単そうな顔をしてるし、その体が子どものように小さいといっても、こいつは「人」ではない。


「ちが……僕は……」


 それでもただの点のような目をうるうるさせて、小さな体を震えさせ、手が見えないほどの裾で涙を止めてる姿は、小頭には可哀想――に映ってしまう。


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