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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第四十話part5

 彼……『アラン』は草陰草案のファンだった。最初に小頭がアラン・ハンスと会ったのは、海外だ。因みに言っておくと、小頭はちょっと前まではパスポートなんてもってなかったし、初めてアランと会った時もパスポートは未所持だった。

 なのにハワイで初めて邂逅を果たしたわけだ。野々野家は決して貧困層ではないが、物価も上がり続けて、円の価値も下がってる昨今、海外旅行なんてやる余裕はなかった。それに足軽はまだ一年だが、大学だって見据えるまでもうたった三年もないのだ。

 そして小頭だって来年には高校生だ。高校が無償化されてるといっても、入用な物はおおい。それに公立ではなく私立に行く……なんてなったら無償化なんて話は何の意味もない。いや、小頭は普通に公立に行く気だが。

 なので海外旅行に行く余裕なんてないのだ。だからわざわざパスポートなんてとってなかった。ならばなぜにパスポートもない小頭が海外に行けたのか? それは勿論、草陰草案のおかげというか、巻き込まれ……というか、それである。草陰草案はその貴重な回復の力によって各地に引っ張りだこ。大人気の存在だ。

 でも草陰草案も精神的にはただのちょっと中二病が入ってる普通の女の子だ。だからこそ、友達がいてほしいと思うものだろう。そして草陰草案の友達は野々野小頭しかない。そうなると必然的に小頭を連れまわすことになる。

 もちろん毎回毎回なんてのはちょっとは遠慮の心がある草陰草案だからできないが、ある程度は無理矢理拉致する感じで小頭を連れてったりしてた。


 その時に使うのは彼女専用のプライベートジェットである。ただの女子中学生が持つプライベートジェットってなんだよって感じだが、もってるんだからしかたない。沢山の富豪を救ったり、権力者を救ったりしてる草陰草案はそれだけ恩もどでかい。だからプライベートジェットだって買ったというよりも贈られた物だ。

 それに彼女は各国で特別なVIP待遇である。貴賓であるといっていい。それも最上級だ。流石に天皇よりは下にされてるが、首相よりは上かもしれない……そんな待遇で迎えられておかしくないくらいなのだ。


 そしてここで重要になるのはそんな貴賓である草陰草案に会える彼……アランだって当然ただものではない。彼は御曹司といって言いだろう。小頭もそこまで詳しくは知らないが、株主の意向で勝手に連れてこられたり、切ったりされる立場にはない富豪の方だ。先祖代々……といっていい富豪の系譜ということだ。

 だからアメリカ政府にも深いつながりがあるような……そんな立場の向こうも所謂VIPである。

 彼はあった時から草陰草案への好感度がマックスだったといっていい。そんなことは小頭だってわかってた。でも小頭は恋をしたんだ。まるで絵本の中から出て来たような王子様だと思ってしまった。彼の優しさは草陰草案に向いてるが、真摯で上流の教育をうけた彼は、もちろんだけど小頭にだって優しかった。

 日本では受けたことないエスコートとかだって小頭にだってしてくれた。王子様のような彼がだだの女子中学生である小頭与えくれるお姫様のような待遇。それで惚れない女はいないだろう。

 滞在期間のたった数日間の交流……それだけの期間の恋。だからそれを知ってるのは草陰草案くらいだろう。彼女の恋はその数日で始まって、極限まで高まって、そして告白をして振られる……というテンプレートでちゃんと幕を閉じていた。


 その時に野々野小頭にはちゃんとわかってた。彼は……アランは草陰草案しか見てないって。小頭がアランに燃えるような恋をしたように、アランも草陰草案に燃えるように恋焦がれてた。

 それがわかってるから、このアランが、本当じゃない……と小頭にはわかってしまったんだ。

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