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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第二章 きっと世界は変わってない
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第三十三話part5

 大きくせりあがる海。実は既に小頭達からはもう海坊主は見えない。それだけ海が持ち上がってるのだ。あとは海坊主がその手を離せば、高さ数十メートルの津波として、沿岸に押し寄せる事になるだろう。

 地震も起きてない……それどころかこんな浅瀬の方でいきなり津波が起きるなんていったいどういう風に観測されてしまうのか……普通は津波なんて地震が起きて、それが海の底だったりで、そのエネルギーが海に伝わって波となって陸に押し寄せるって感じだから、いきなり陸の近くから起きるなんて……あるんだろうか? でもそんな常識は今や色々と変化してる今のこの星には通用しないのかもしれない。


「おばあちゃん……」


 なるべく邪魔しないように……と小頭は声を掛けないようにしてる。でも流石に高波が目の前に迫ってるとなると焦る気持ちはある。とりあえず小頭は手を合わせて拝むようにしてる。それでも漏れ出た声……それか育代に届いてたのかはわからない。

 でもそれ以上はいわない。それに動かない。信じてるからだ。


 あとはもう離すだけになってるとおもったけど、海坊主が波を離す様子がない。見えないからどうなってるのか小頭にはわからないが……「あれ?』――とは思う。もしかして……育代の呪術は出来てるのではないか? とね。


「おんぬしの祖の根、ここに得られり」


 その言葉と同時に、持ち上がってた波がその場に落ちていく。そして次に見えた海坊主……その姿は小頭にもわかるくらいに違ってみえた。具体的にはその体だ。海坊主の体は海色をしてた。肌が青かったんだけど、その肌に黒い文字がなんかびっしりと刻まれてる。

 梵字みたいにみえるそれは、とてもなんか『呪術』っぽい……と小頭は思う。つまりは……だ。あれは育代の仕業なんだろう。その体の全体に育代の呪術が浸透した……とみていい。


「おばあちゃん……」

「ええ、成功よ」

「凄い! おばあちゃん!」


 そういって小頭は後ろからおばあちゃんに抱き着く。するとふらっとして育代の膝がカクンと折れて砂浜にストンと二人してへたりこんだ。そんなに強く抱き着いたつもりはなかったけど、小頭はいきなり体重をかけた事を謝る。


「ご、ごめんなさい」

「ううん、凄くうれしい。小頭を感じれてね」


 どうやら育代的にはどんな形であれ、孫である小頭に愛情を表現されるのは嬉しいらしい。それはどんなに疲れてても……だ。


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