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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
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398P

「とりあえず……」


 野々野足軽はこの初めての力を楽しいからと撃ちまくる……なんてことはしない。なにせ野々野足軽はこの力が強大だと感じてる。下手に撃つと何が起きるか、どんな影響が起きるかわからない。だからこそ、この力の元……それを使うことにした。それは今まさに、ドラゴンが野々野足軽を攻撃してる風の刃。

 前はそれこそ、わずかに壁を傷をつける……程度しかできなかった。これなら普通に念力で捻りつぶした方が簡単だ。だから使ってなかった。そもそもスパッと切るような場面もなし……念力ならもっと自由がきく。念力は万能のなのだ。けど今は前よりも格段に風を使える。そのための力が、野々野足軽には生まれた。それに……


(風のドラゴンに風で勝つ……なんて面白そうだ)


 そういう思いもあった。自分の得意に誘い込むのもいいが、相手はもうそんなに時間がないのだ。そしてあの抜け殻になったドラゴンはただどうしようもない怒りや絶望を野々野足軽にぶつけてるだけ。ほぼ八つ当たりみたいなものである。野々野足軽は「ふざけんな!」って言っても許されるだろう。

 けどそんなことはいわない。むしろ憐れんでる。そしてそんなドラゴンを利用しようとしてる自分自身を「最低だな」とかちょっと思ってた。


ズパッ――


 今までもドラゴンの風の刃を打ち落としてた野々野足軽だ。だからちょっと力を込めた。今までは相殺してた。力で無理やりに……だ。イメージとしては感じれる風の刃を操った風で受け止めて霧散させてる……みたいな。そんな感じだった。けど今のは違う。明らかに攻撃の意思を持って、風を鋭利な刃物のイメージをのっけた。そして今までの感覚でこのくらいならドラゴンの風の刃を上回れる力で放った。そしてそれは狙い通りだった。まずは一つを上回って見せた。


 それでもドラゴンは止まらない。いや余計に怒ってるようにみえる。たくさんの風の刃をそれこそ沢山……もっと言えば雑に放ってくる。


「なんで……」


 思わずそんな事を言ってしまう野々野足軽。なにせこの行動が理解不能だからだ。なにせ力を使うたびにドラゴンは弱体化してる。それなのにむやみに力を放つ? そんなことは野々野足軽ならしない。絶対にだ。でも……きっともう、あのドラゴンはそんな事さえわかってないのかもしれない。


「哀しいな……もう、いいんだ。お前のその絶望はもう、救われてるんだから」


 そういって野々野足軽は手を前にだす。突っ込んでくるドラゴン。その体はもう靄になりかけてる。そんなドラゴンへ野々野足軽は気合を入れた風の刃を十字にして放つ。頭の先から尻尾の先まで切り裂かれるとドラゴンは世界の空へと帰っていった。

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