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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
294/871

293P

「いや待てよ……ここには三人で彼女たちは来た……」


「え?」


「それってつまりは……」


「うん? ちょっ……その……何考えてるんです?」


 野々野小頭は引いてた。なにせ……だ。なにせ男三人の期待に満ちた眼差しが野々野小頭に注がれてるのだ。そしてその意味……それはさっきの三人の会話を聞いてれば自ずとわかる。


 そう大川左之助達はもしかしたら野々野小頭にも力があるんじゃないのか? って期待してしまってる。だってだ。まさか一人しかいないだろうと思ってた力の持ち主……それがなんと二人も居たのである。そうとなればあと一人である野々野小頭だって何か『ある』――と思ってしまうのはある意味で普通のことなのかもしれない。


 一番のイケメンである朝日蔵三がつかつかと歩んでいって、その無表情のまま、野々野小頭の肩を掴んだ。その際驚いて「きゃ」っとちょっと言った野々野小頭。でもそんなの朝日蔵三は気にしてない。てか彼は、自分がやってる事わかってない。ただただ確かめたい……その一心だろう。なにせ目の前に本物がまだいるかも知れない……という可能性があるんだ。だから彼も必死だったんだろう。


 まあだからって、いきなり女の子に触ったりしたら下手したら犯罪である。


「君も……力を?」


「あっ……いえ。全く」


 肩を掴まれたのはびっくりしたものの、野々野小頭はいたく冷静にそう返した。けどそんな事を言われてもそう簡単に「ああ、そっか」なんて受け入れられない朝日蔵三たちである。


「そうなのか?」


「はい、私はそんな変な力持ってません」


「そっか……ああ、うん。そうだよな」


 はっきりと冷めた感じでそう言いきる野々野小頭に朝日蔵三は静かに納得した。確かに二人つづいたが、だからってそんなに本物がそこら中に居る訳はないってのは理解してた。


「君は違うのか……がっかりしたような、安心したような……じゃあなんで?」


 失礼な東海道馬脚の言葉。なんでなんてそんなのは野々野小頭には決まってる。


「私が草案ちゃんの友達だからですよ。怪しいYouTuberの根城に女の子一人でなんて行かせられるわけ無いじゃないですか」


「俺たちの事信用してなかったんだ……」


 野々野小頭の言葉にリーダーらしん大川左之助が声のトーンを落として言う。でも信用なんてあるわけもないだろう。なにせ初対面である。


「どうして信用されるなんておもうんですか? 草案ちゃんみたいに女の子釣って食べてるYouTuberなんて沢山いるでしょう?」


「俺たちは違う!」


「そうだとしても、私達にはそんなのわかんないですし。しかも最初からスタジオ兼自宅に誘うって……普通の感覚の女の子ならのこのこ来たりしませよ」


 そういう野々野小頭だけど最後に小さく「草案ちゃんはのこのこきたけど……」とか呟いてた。普通はいきなり自宅に誘うなんてのは、もうそんな気が満々としか野々野小頭には思えなかった。


 でも力を手に入れて、更には承認欲求がマシマシになってる草陰草案はのこのことやってきた。勿論野々野小頭とかは止めたけど、そもそもが暴走するのが普通の草陰草案だ。放っておいても行くのなら一緒に行くかしか無い。


 なのでアンゴラ氏にも来てもらった。色々と苦労が見える野々野小頭である。確かにこうやって見てると三人はただのオカルト好きなんだろうってわかる。けどチャンネルでは猫を被ってる人なんてたくさんいるだろう。


 そんなのを見極める方法なんて無いんだから、最初から信用なんてあるわけない。


「とりあえず君は友達の為に来たってことだね。友達にあんな力があってもいいのか?」


「まあ、ちょっとは引きますね」


「それだけ?」


「それだけですけど?」


「そっか。君は良い子なんだろうね」


 そんな事を言ってくる大川左之助に野々野小頭は心のなかで「キモ」とか思ってた。これが朝日蔵三なら違ったかもしれない。その美形な顔で言われたら「キュン」となってたかもしれない。けど大川左之助はお世辞にも美形ではなかった。言うなればボケ担当? みたいな? そんな顔してた。

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