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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
271/871

270P

はてさて、妹に泣いて頼まれたら、世の中の「お兄ちゃん」は断れないものである。いや偏見かもしれないが、野々野足軽は少なくともそういう「お兄ちゃん」であった。普段からベタベタとするような兄妹仲ではないにしろ、ちゃんと家族愛……みたいなものはある。


 それに昔は……そう昔は野々野小頭は「お兄ちゃんお兄ちゃん」と言って、いつも野々野足軽の後ろをついてくるような妹だったのだ。中学生になって思春期に入ったのか、野々野足軽のことを避け気味になってしまった。けどそんな妹が頼ってきた。それな無下になんて出来ない。


パタン……


 とりあえずどうやら野々野小頭は誰かと連絡を取ってた。そして頼りになる人達がいるから……ということでその人達と合流する場所に一緒についてきてほしいってことだったから、制服のままの野々野足軽は自室に戻って着替えることにした。


『大切なら、全てを話してしまえばいいのでは?』


「全てってなんだよ」


『わかってるでしょう?』


 人形をしたアースがベッドに寝転んでそんな事をいって来る。コイツはどんどんとなんか仕草とか動作が人間っぽくなっていくな……と思う野々野足軽だ。とりあえず制服を脱ぎだす野々野足軽。


「それを言って、どうするんだよ? 引かれるだけだ」


(よしんば、信じてくれたとしても……それにこの力を家族だからって安々と見せたりなんかできない)


 そう野々野足軽は思ってる。なんにでも、慎重になりすぎるって事は良いことだと野々野足軽は思ってた。桶狭間忠国にはバレてしまったが、これ以上を増やす気なんて無いのだ。


『まあ何にしてもですが……本当にしらないのですか? 自作自演してるんでは?』


「寧ろ俺はお前を疑いたいんたが?」


『私? なぜ?』


「いや……」


 とりあえず制服からラフな格好に着替えた野々野足軽はジッとアースをみる。確かに休日の一連の出来事は野々野足軽が関わってた。それは事実だ。どうやら色々と噂が広がってるらしいことを知ったからだ。あんまり嗅ぎ回られると困る……と思った野々野足軽はちょっと脅しておこうと思ったのだ。


 まあそれだけではないが……それこそアンゴラ氏とか呼ばれる人に力を……授けたというか、そんな風に見せたのは野々野足軽である。何やら面白くなるかな? って思ったのだ。そこらの高校生が力を得たらもしかしたら自慢しまくるかもしれない。


 野々野足軽はそうではなかったが、普通の高校生とかなら、そっちの方が普通の行動のような気がしてた。それに周囲に言いふらさなくても、SNSや親しい友だちとかには言うかもしれない。


 でもあくまで分別ある大人なら? そんな風に思ったのだ。けどもっと脅しておいたほうが……と今はちょっと後悔してる。けどそれも……だ。それも、もしもアースが面白がってやってるだけ……なら何の問題も無いと思う野々野足軽だ。


 けど人形をしてるが、顔なんてものはないアースである。その表情はわからない。慮ることしか出来ない。そして野々野足軽にはアースの思慮を慮る事はできなかった。


「とりあえず俺も小頭の友達の事は把握してない。確かに一人で廃ビルに夜に行ってたのはしってるけど……一応そこから出るところまでは見てたわけだし……ちょっとした脅しだって……」


『あの後に何かあったのかもしれませんね。そもそも女子中学生が夜に出歩くのは相応のリスクが有るでしょう』


「それはそうだけど……でも、じゃあいきなり誘拐されたっていうのか? 確かに変質者の噂はあったけど、あれってあいつじゃん」


 最近この街で注意喚起される噂はへんな男が首輪を持って『ご主人さまになってください』と女性にいう輩が出るということだ。そしてそれの犯人を野々野足軽は知ってる。だからそいつらではないとわかってる。そもそもがそいつらなら、すでに野々野足軽は草陰草案の居場所を把握してるはずだ。


 でもそんな事はなかった。


「もしかして……本当に俺以外の力の持ち主?」


 そんなつぶやきをしつつ、気を取り直して野々野小頭とともに合流場所に向かった野々野足軽である。

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