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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
219/871

218P

「はあはあ、バウアー!! バウアー!!」


 そんな風に叫びながら、十字傷の男は町中を走ってた。町中を走り回ってすでに息も絶え絶え、そして体中も汗だくだった。


「うえっごほっがはがは……」


 いつもは長時間運動をすることなんてない十字傷の男だ。喧嘩っ早いやつだが、喧嘩なんてそんな何十分もかからない。だからこそ、こんな長く動くなんて一体何年ぶりなのか……


「そっかおれってもう健康じゃ……ちっ」


 どうやら十字傷の男が考えてるのはあの夢のこと。あのときの、若い、健康的な体。それの感覚のままだったらしい。そんな訳無いのに……今の十字傷の男の体はぼろぼろである。それこそ見た目通りに……ずっと喧嘩をしてきたその体は常にどこかが痛い。


 腰であったり、膝であったりだ。それに顔の傷を無意識にカリカリとするのは、その傷が疼くような感じがあるからだ。酒もタバコもやってた十字傷の男は、体の内部だって相当ダメージを受けてるだろう。今はまだ20代だからそこまで表面化して出てくることはないだろう。


 でもきっと、これから歳を重ねるごとに、体はどんどんと悪くなっていくかもしれない。でも幸いなことに、犬を買い始めたことで、そういう酒もタバコも十字傷の男はやめている。


 だからこのままもう酒もタバコもしなくなれば、もしかしたらまだ肉体の回復力で内臓系はどうにかなるかもしれない。喧嘩をして蓄積してきたダメージはどうにもならないが、きっと歳を重ねると内臓のほうがダメージ的に重くなっていくだろうから、ある意味で犬は将来の健康を運んできた……とも言える。


 でもその犬もいなくなれば……またまたきっと悲惨な生活をこの男は送るのだろう。必死になって犬を探してる十字傷の男に周囲は冷ややかだ。それはもちろん十字傷の男が危ないやつにしか見えないからってのもある。そしてそんな奴が何かを必死に探してる……それが面白いのか、こっそりと動画を撮って『ぷぷ、ヤバい奴がなんか必死なんだけど』とかいうタイトルで動画をアップしてたり……


ギロッ


 ――と十字傷の男は一人のスマホを向けてるやつを見た。


「なんだぁお前……おいおいおい」


 とか言ってその男性に近づこうとした。そして手をのばす。その手は自然とグーになり、そのままその男性の顔を撃ち抜く……かと思われたけど、十字傷の男は踏みとどまった。


 いつもの……いや以前までの十字傷の男だったら間違いなく暴力を振るってた。そこにためらいなんてなかっだろう。なにせ自分を馬鹿にしてるやつは許さない――そんな心情があった。


 けど、どうやら今は違った。再び握った拳を解く。そして「ひい!?」とビクビクとしてるそいつの肩に手をおいてこういった。


「なぁ、ちょっと手伝ってくれよ」


 それでも十分、その男性には恐怖しか伝わってないみたいだ。

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