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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
204/871

203P

「なんなんだ? お前はよお!!」


 そういって十字傷の男はコンパクトに素早く動いて、側面にいく。そしてそこから逃さないように肩でタックルをかます。


「ぐおああああ!?」


 ガシャンと大きな音が響く。だけど、もう嫌気がさしてる警備員はやってこない。通路の奥を見てるように見える顔に靄がかかってる人物を見て、十字傷の男は冷や汗をかく。


「へへ、死神か? お前、死神だろ」


 肩を抑えつつ、十字傷の男は笑ってる。だが、その顔は笑えてなんてなかった。ひきつってる。今までどんな状況でも、それこそ事情聴取されてる時だって、へらへらとしてた十字傷の男。


 けどそんな男が笑えてない。笑おうとしてるが、笑えていないことに本人は気づいてない。


「狩ってやるぜ! 死神よっ――へ?」


 次の瞬間、なぜかさっき見てた視界が十字傷の男には九十度向きが変わってた。何が起きたのか全くわからない。理解ができない十字傷の男だ。なにか違和感がある。


 それは下半身だ。熱いような寒いような……不思議な感覚。視線をさまよわせると、近くにあるものがあった。それは……十字傷の男の下半身部分だ。腰から下の部分がそこにはあった。そして視線を下の方にやると、確かに下半身がない上半身だけの体がみえた。


「あっ…………ああああああああああああああああああああああああ!!」


 大絶叫だ。それはきっと留置所全体に響くような……そんな叫び。けど……


「な、なんでだよぉ」


 十字傷の男はそんな風につぶやく。それはなんでこれだけ叫んだのに対面の牢屋にいる奴さえグースカと寝たままなのかとか、なんで自分はまだ生きてるんだとか……そんな疑問が含まれてた。


 でも答えなんて出ない。目の前の人物? いや、その存在は何も語りはしない。ただそれが今までの常識では計り知れない存在ということを十字傷の男は認識して人生初めての謝罪を口にした。


「ご……ごごご、ごめんなさい。ごべんなさい! ごべんなさい! ごべんなさい!!」


 それは十字傷の男にとっては人生初めての心からの謝罪だった。今まで嘘しかついてこなかった奴の心からの謝罪。けど、それが通じるかどうかはそれを受け取る者次第だ。


 そして大事なことは、十字傷の男はそんな泣き叫ぶ奴をさらにいたぶるのが好きな最低な奴……だったってことだ。行いとは自身に帰ってくるもの……という真理がこの世界にあったりする。


 靄のかかった存在はその手を上半身だけの十字傷の男にかざす。そして手のひらを上の方に向けたそこから何かが垂れてくる。それは黒い……黒い何か。


 それが十字傷の男の顔にかかっていく。


「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ……」


 十字傷の男には何をされてるのか、これに何の意味があるのかなんてわからない。けどただただ、恐怖が増していくことだけを感じて、声を発してた。そして頭にたらされる黒い何かが、十字傷の男を溺れさせてその視界を奪っていく。暗く冷たい留置所に、男の叫びが響く。けど、それが誰がに届くことはついぞなかった。

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