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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
198/871

197P

「おいおーい、兄ちゃん随分モテてるじゃねーか。俺たちにもおすそ分けしてくれねーか?」


 頬に十字傷があって、頭は半分髪がなく、上半身の服も下半身の服もなぜか異様にボロボロな、そんな一団が山田奏へと絡んでる。その周囲には女生徒たちが十人に満たないくらいいた。他には山田奏の友達である男子生徒もいる。

 いうなれば彼らはクラスの中心、陽キャの軍団だ。そういう奴らはやっぱりだけど、数がいれば気が大きくなるらしい。やばい見た目をしてる十字傷の男はあと二人くらいを従えてるが、それでも向こうは三人、そうなると倍くらいの数の差はある。

 もちろん山田奏他、男子諸君は女子を頭数には入れてないだろう。それでいくと、男子は山田奏を入れて四人くらいだ。そうなったらなかなかに厳しいと普通は思うだろう。なにせ男子高校生でもそんな血の気が多いわけじゃないだろう。あからさまにヤバそうな三人だ。普通なら逃げてもおかしくなんかない。

 でも誰もそんなことはしない。ここにいる山田奏のグループはチンピラの数人に恐れるようなやわな奴らではないらしい。もちろんそれは女子がいるから……というのもあるだろう。女にいい格好をしたいのはどんな時代でも、年代でも男なら変わらない。

 それに山田奏たちは部活もして、そこそこ鍛えてる。それが自信にもなってるんだろう。目の前のチンピラたちは異様な見た目をしてるが、よく見たらどう考えても顔色は悪いし、結構ガリガリだ。

 これなら自分たちでもなんとかできる――と山田奏たちはアイコンタクトをとって、立ち向かおうと意思疎通ができてた。


「やめてください。女の子たちが怖がってます」

「ははははは! おいおい、見た目だけじゃなく、態度もかっけーな」


 一番ヤバそうな十字傷の男がそう言って派手に笑う。すると後ろの取り巻き? なのか仲間なのかわからない二人も笑い出した。でももちろんだけど、山田奏たちはこいつらを不気味に思うだけだ。


(なんなんだこいつら?)


 とかいう視線を山田奏たちは交錯させる。どうしたらいいのかわからないからだ。


「おいおい、お前らも笑えよ」

「づっ!?」

「山田!!」


 いきなり何が起こったのか……理解したときには空が見えてた。そして鼻から広がる鋭い痛み。


「何するんだおらぁ!!」


 そういってガタイがいい山田奏の友達が前に出る。そして十字傷の男をつかもうとするが、その手を交わして、懐に入ったそいつは軽くガタイがいい友達を突き飛ばす。するとバランスが崩れてたのか、後方にたたらを踏んで倒れこむ。その時、女子とかを数人巻き込んだ。


「おいおい、どうした? ちょっと押しただけだぞ」

「やめてください。今なら、見逃しますよ」


 鼻を抑えながら、山田奏は立ち上がった。


「はは、見逃す? 見逃してください――だろ?」

「いいえ、これ以上暴力をふるうというなら警察に通報します」

「警察? はっ、だっせーな!」

「ダサい、ダサくないとか、そんなのはどうでもいいことですよ。それよりも――」


 そういって山田奏はスマホを取り出す。電話をするぞ――という脅し。


「はっ、興ざめだよ。なら仲良くしよう」

「何言って」


 山田奏が混乱してる間に、十字傷の男は近づいてくる。そして山田奏を通り越して、女子の手をつかんだ。


「俺とも仲良くしようぜ」


 そういって十字傷の男の男は腕を彼女を引き寄せる。「きゃっ」と小さな悲鳴が出る。


「やめろ!」

「おいおい、俺は仲良くしてるだけだぜ」


 そういって頭に顔をくっつくけて、クンカクンカしてる十字傷の男。それをやられてる女子はガタガタと震えてる。抵抗したいが、怖いんだろう。

 彼女はギャルみたいな見た目で、普段ならきっと勝気なんだろう。でも今は少女のように、震えることしかできないでいる。


「おいお前らも仲良くしていいぞ」


 そう十字傷の男が言うと、ほかの二人も動き出した。流石にほかの女の子たちも毒牙にかける訳にはいかないと山田奏の友達たちが立ちふさがる。奴らが近づいて女子がキャーキャーいって逃げる。その間に男子が立ちふさがるって感じになってる。


「ほうら、アピールしたいならこのくらいしないとな」


 十字傷の男は自分が捕まえてる女子生徒のスカートを何のためらいもなく持ち上げた。そしてその中身が勿論だけど山田奏の視界にはいる。


「やめ……て」


 女子生徒が絞り出すような声を出して涙がこぼれる。その瞬間、山田奏は拳を振り切った。

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