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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
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191P

「もうやめとけよ」


 そんな言葉が桶狭間忠国の耳には入ってきた。そんな言葉を聞いて、黙ってられないのが桶狭間忠国という男だ。なにせ桶狭間忠国は目立たないようにしてるが、自分に自信がなくて、周囲にびくびくとしてるような奴じゃない。


(自分が話しかけたって……)とか(迷惑なんじゃ……)や(絶対に笑われてるよ)とかいう被害妄想で自信がないから教室で大人しくしてるわけじゃないのが桶狭間忠国だ。その鍛え抜かれた肉体、そして磨き抜かれた格闘技術。それらはいつだって桶狭間忠国に自信をくれる。実際、桶狭間忠国は喧嘩とかで相手を恐ろしいと思ったことなんてない。


 それがたとえ上級生でも、何かスポーツをしてたとしても、それに不良でもチンピラでも、ネジが一本はずれてるような奴がナイフをもってその切っ先をベロっとしてた時だって、桶狭間忠国は恐怖なんて感じなかった。


 そしてそれを証明するように、今まで対峙してきた奴らは次の瞬間には桶狭間忠国のそのこぶしのもとに一撃で地に付してきたんだ。でも……今はそれらの輝かしい過去が本当にあったことなのか? と思えるほどにガタガタと震えそうだった。それを必死に桶狭間忠国は抑える。


 本来なら、体の内からくる震えを押さえつけるなんてことはできないだろう。なにせなんで震えてるのか、どうして体がそんな動きをするのか、普通はわからない。なんとか震えを止めたくても、そう意識すると余計に震えてきたりするものだ。でも桶狭間忠国はそれを成してた。


 これまでずっと、筋肉と対話してきた男――それが桶狭間忠国である。それが無理やりにでも震えをとめるということを成しえてた。


(ありえない……自分が……こんな……)


「もう一度いってやるよ。もうやめようぜ」


 そういって野々野足軽が壁から離れた。そして歩き出した。野々野足軽はやけに歩く音を響かせながら、桶狭間忠国の方へと歩いてくる。トンネル内だからとか、二人きりの空間で、そして異常に桶狭間忠国が緊張状態にあるからとか……色々な言い訳は考えられる。ただただ、桶狭間忠国がそう感じてるだけなのかもしれない。


 けどそれはつまり……


(そんなバカなバカなバカな!! そんなことあり得る訳が……だってずっと鍛えてきた。向き合ってきた。そして、僕は……僕のこの体は自分を裏切ったことなんてないんだ!!)


 そう思って、強く強く桶狭間忠国は近づいてくる野々野足軽を見つめる。動かない体に、やけに大きく聞こえる足音……そしてさらに桶狭間忠国には驚愕の光景が目に入った。そして思わずカタカタと震えを止めきれずに鳴り出した口からこんな言葉を紡いだ。


「なんだ……それは……」


「なんだって、なんだよ。ただ、歩いて影分身してるだけじゃないか?」


 しっとりと耳の奥をなめるようなかのように、野々野足軽の言葉が桶狭間忠国の耳を、脳を侵食してた。


「あっ……あぁ……」


 何かを言いたかったのだろう桶狭間忠国の口から次に漏れ出たのはそんな言葉にならない声だけだった。それだけ桶狭間忠国の頭は限界に近づいている。

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