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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
167/871

166P

「とう!!」


 そう言うと桶狭間忠国は走り出した。その速さたるや、エンジンでも付いてるのか? と思うほどだ。けどソレだけの巨体。更に言えば学校前で登校時の生徒が溢れてるのに、その巨体を誰かにぶつける……なんてことは桶狭間忠国はしない。その巨体には見合わない程に俊敏に、そして軽快に走ってる。


 あれだけの巨体だとそれこそ効果音的にはドスドス――とかなりそうだろう。けど、逆に桶狭間忠国の走る姿はとてもきれいで、そして音が一つもしなかった。特殊な足の付き方でもしてるのか分からないが、まるでヌルヌルという感じだ。


 そして重そうなのに驚くほどに軽快だ。走って飛んで、柵とか超えて、屋根に飛び移るその姿はまるで忍者。一体彼はどうなりたいのか? とおもうほどだ。


「彼は何? 忍者なの?」


「あながち間違ってないかも」


 そんな事を言ってる先では、警察が必死で桶狭間忠国を追ってるが……流石に追いつくことはできそうにない。それこそ警察が本気になって、かなりの人数を動員して捜索をする。それこそ凶悪犯相手のように……すればどうにかなると思うが、流石にそれだけやる理由もないだろう。


 交番の警察官が数人ではどう考えても桶狭間忠国を捕まえられるとは思えない野乃野足軽だ。


「ふふっ忍者ってなに?」


「そんなの俺だってわかんないよ。ははっははは」


 なんか野乃野足軽と平賀式部は笑いだしてた。きっと受け入れがたい……というか、理解しがたい桶狭間忠国という存在に、脳が理解することを拒否したから、この現実? を受け止めるために、面白かった事にしてるのかもしれない。


 でもそれは二人にとってはとても大きなことだった。なにせ、ここ数日……いや付き合いだしてから初めて、こうやってお互いにしっかり笑ったんだ。


 こうなる前は、ちょっとした会話の中で笑い合う……なんてのはあった。けど、野乃野足軽はこの付き合い出した理由に納得なんてしてない。だから、罪悪感を感じて『笑う』なんてことができなくなってた。


 出来たとしても、愛想笑いだけ。そんなのは平賀式部は直ぐに気づいてた。けど、今の笑顔は違う。本当にただただ、桶狭間忠国が訳わからなくて、おかしかったのだ。だから笑えた。


 奇しくもだけど、桶狭間忠国によって、二人の間にあった見えない壁に亀裂が入った。

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