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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
151/871

150P

(いい夢は見れたかな?)


(見れたんではないでしょうか? リラックスはしてましたよ)


 野乃野足軽の問いかけに、頭の中でアースがそう応えた。野乃野足軽は昼休みが始まったと同時に、教室を出ていった。なぜかというと、絶対にここ最近は毎日のように山田奏がやってくるからだ。


 薄情……と思われるかもしれない。なにせ野乃野足軽は平賀式部が山田奏を苦手としてる……というか嫌ってるのを知ってる。そして野乃野足軽は平賀式部に好意がある。それならば……他の男がちょっかいを掛けてるのなら、身を挺してでも守るべきなのではないか? 


 それが『男』ではないのだろうか? とね。野乃野足軽だってもちろんだけど、それを考えなかった訳では無い。けどハッキリ言ってとても都合が悪いのだ。野乃野足軽と平賀式部の関係……そう書くとまるで二人が恋人同士の様な感じに思えるが……実際はそこまではいってない。


 でも二人の関係をただの友達と周囲に伝えたとしても、それはそれで問題なのだ。だってなにせ誰にもいってない。野乃野足軽は一応知り合いとしてそれなりの関係を気づいてる桶狭間忠国とかにもいってない。


 実際、彼にも言えるわけはない。そもそもが桶狭間忠国に近づいたのだって、平賀式部に対して、彼が怪しいことをやってたからだ。そしてそれは山田奏だって同じだ。実際、周囲にいる人達は、そこまで山田奏の異常性に気づいてる人は少ないだろう。ちょっとなんか「重め」なのかな? とか感づいてる人は出てきてると思う。なにせ平賀式部は明らかに嫌がってる。


 それを隠そうとはしてない。なのに山田奏は毎日来てる。まるで嫌がられる事を楽しみにしてるかのように……である。だから多分、山田奏がちょっとおかしいんじゃ? と思ってる人は増えてるだろうが……それでも圧倒的に今までの印象が良いんだろう。山田奏はそれでも今でも大人気なのだ。


 そしてだからこそ、ここでもしも野乃野足軽が平賀式部との関係性をバラしたとしたら……ただただ、敵が増えるだけで何も解決なんてしない……という結論に至ったのだ。


 だからこそ、学校では野乃野足軽は何もできない。


「本当は逃げてるだけなんだよな」


 ボソッと野乃野足軽は小さく……本当に誰にも聞こえないような声でそうつぶやいた。それはきっとアースにだって聞かせたくなかったからだ。頭の内で思えば、それはアースに伝わってしまう。


 だからこそ、ちいさな小さな声でポツリとそんな事を呟いた。野乃野足軽は学校では何もしないと決めた。だけど、教室で……いや隣で山田奏と平賀式部が話してるを見るのは辛かったのかもしれない。


 それが例え、全然平賀式部が楽しんでなくても。なにせ誰もが言う……


『あの二人ってお似合いだよね』


 ――と。見た目だけなら、本当に二人は似合ってる。美男美女……それこそ王子様とお姫様なのだ。逆立ちしたってあのお似合い加減に野乃野足軽では到達しないだろう。きっと町中を二人で歩いてても、山田奏と平賀式部なら誰も文句なんて言わないだろう。


 けど野乃野足軽なら? それはきっと野乃野足軽自身が一番良くわかってる。だから辛くなるんだ。


「野乃野君!」


 学校の廊下を歩いてる野乃野足軽を大きな声が呼び止める。その声を野乃野足軽はわかってる。けど、どうして? って思いのほうが強い。だって今はきっとまだ山田奏がちょっかい掛けてるはずだから。


 でも振り返った野乃野足軽の背後には息を切らせてる平賀式部がいた。そして周囲がとてもざわざわしてる。それはそうだろう。なにせ平賀式部がこんなに声を出したことなんてなかった。だから周囲は驚いてる。


 


「えっと……平賀さん? どうしたの?」


 とりあえず野乃野足軽は平賀式部に呼び止められたが、なるべく平静を心がけた。周囲がざわついてるが、それを見ないようにして、これは何でも無いこと――と見せようとしてるんだ。


 でもそんなのはどうやら意味がなからったらしい。だって次の瞬間、平賀式部はこういったのだ。


「好き……私、野乃野君が好きなの! 好きすぎて苦しいよ!!」


 その瞬間、野乃野足軽の時が止まった。

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