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ある日、超能力に目覚めた件  作者: 上松
第一章 超能力に目覚めた少年
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136P

おしゃれなカフェって何のために行くんだろうか? そのお店の雰囲気が気に入ってるとか、そこに行くと落ち着くとか……もちろん、美味しいメニューがあるとかもあるだろう。


 でも総じて、やっぱりカフェって落ち着けるものじゃないだろうか? 少なくとも野乃野足軽にはそういうイメージがあった。けど……


(早く出たい)


 ――そう思うしかない状態になってる。それぞれの席というか、客が自分の世界に、自分たちの世界に入って喋ったりしてる分には別に気になったりしないんだろう。でも、今はそういう状況ではない。


 寧ろこれなら席につかなかったほうがいいのでは? と思うくらいだ。店内のおしゃれなBGMに紛れるようにして、ヒソヒソとした声が聞こえている。もちろんそれは野乃野足軽にだけじゃないだろう。


 べつに今は野乃野足軽は聴覚を力で強化してたりするわけじゃない。いつもの、それこそ普段どおりの状態だ。それで普通に野乃野足軽にだって聞こえてるんだから、山田奏にだってきこえてるだろう。周囲の声が。


「きゃあ、今飲んだ……」


「お口にふふ……跡がついてる」


「飲んでる姿も格好いい」


 そんな声がきこえてた。実際、野乃野足軽もチラチラと山田奏の事を見てた。別に普通に飲んでるだけだ。山田奏は良いところの坊っちゃんらしく、所作とかが綺麗なところはたしかにある。それに姿勢もいい。だから女子が一挙手一投足にキャーキャーというのも仕方ないのかもしれない。


 野乃野足軽達は別にそれを飲んでる時に、特に喋ったりすることはなかった。ただ静かに飲んで、そそくさとカフェを跡にする。これはもしかしたら山田奏も早くこの場所から出たいと思ってたのかもしれない。実際、このカフェから出れば……野乃野足軽もそう思ってた。けどどうやら、恋する女子の思い……それを甘く見てたみたいだ。


「ついてきてますよ」


「そうだね」


 野乃野足軽と山田奏にバレてない……と思ってるんだろうか? それともバレてもいい……という思いでやってるのか、あのカフェにいた何組かの女子が野乃野足軽達の後をつけてきてた。


「モテるってのも大変なんですね」


 そんな事を野乃野足軽は言ってみた。それに対して、なんか微妙な笑顔で山田奏は笑った。そこには色々な感情が含まれてたような気がするが、野乃野足軽はこれだけ思う。


(イケメン的な苦労だからやっぱり同情できないな)


 ――とね。

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