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ぼくがネコと一緒にいるということ お題:見憶えのある弔い 制限時間:15分

そのネコは死んだはずだった。


つい先日、学校帰りに友達と一緒に校舎の裏の土深くに埋めたことは記憶に新しい。


そのことは宿題の日記にも記したし、先生が「大変だったね」という評価もしてくれた。


だから、生きているはずがない。


もしかすれば、そっくりなだけかもしれないと思い、試しに路傍の石を拾って近くに放ってみた。


ネコは前足を小さくあげて、警戒するような構えを一瞬みせてから、ゆっくりと石に近づき、

それからその場にくるっと丸まり、首だけを向けて自分のことを凝視した。


動きから視線、表情のすべてが酷似している。


いくら見た目が似ていても、性格や仕草まで完璧に似ることはないだろう。


亡霊かもしれない、子供心にまずそう思った。


けど、ネコの背中に触れてみると確かな手触りと体温を感じた。どうやら実体もある。


どういうことなんだろう。


ぼくは困惑し、声をかけてみた。


「おまえ、生きてたのかい……?」


すると、ネコはさらに近寄ってきて、ぼくの靴を前足でさすった。


ゆっくりと優しく、なにかを懐かしむように何度も撫でてきた。


「……雨だ」


ばらばらと音を立てて、大粒の雨が灰色に淀んだ空から降り下りてくる。


「風邪ひいちゃうよ」


ネコを抱えて、屋根の下に逃げようと試みるが、不思議なことにネコを抱えたとたん、ぼくの体はまるで動くことができなくなった。


雨が強まるにつれて、体は金縛りにあったみたいに動かなくなった。


「……どうなってるの?」


うまく声も出ない。ひんやりと冷える外気。空の色はどんどんと暗くなっていく。


止まない雨。ネコもまたじっとぼくの腕元でうずくまっている。


「先生!」


なけなしの力を振り絞って、その場を通りかかった先生を呼び止めた。


けど、先生はぼくらのいる場所をすり抜けて、どこか遠方に行ってしまった。


そうか――ぼくはようやく理解した。


ネコに触れられること、そして、空から降っているものは雨ではないことに。


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