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だれもが打ち明けられないこと  お題:禁断の克服

世界には二種類の人間しかいない。


受け入れる者と、受け入れない者だ。


ぼくは子供をかばって、車に轢かれた。


代償に片腕の自由を失った。しかも、それは利き腕だ。


日常生活においても公共生活においても、苦労は絶えない。


どうやらぼくは他の皆よりも時間の流れの遅くなった世界に所属してしまったらしい。


なにをするにも遅れていた。


勉強はノートに文字を書くだけで一苦労。


食事は誰かを必ず待たせてしまうし、風呂だって洗髪や洗体がこんなに億劫な行為だと思いもしなかった。


無論、焦りを感じた。


ぼくはこうして皆においていかれてしまうんだと。


そのことをある人に話すと、その人はこういった。


「あなたのしたことは素晴らしい行動です。胸を張って生きなさい」


だが、それなりに年齢を重ねて、なにか働こうと思った時、障害は生じた。


はじめは愛想の良い笑顔。それなのに彼らの返事は決まって「お断り」だった。


しかも言葉でなく、妙に綺麗なワープロ文字であとから電信されるのだから応える。


いっそのこと口頭でいってくれたらいいのに。


べつのある人はこういった。


「だれも言わないだろうが、おれはいう。おまえのしたことはきわめて馬鹿な行為だよ」


ぼくもその通りだと思った。


風の噂で知ったことだが、ぼくの救った少年は不良になり、麻薬を売りさばいたりしているらしい。


正しいなんて決められることはない。なにが間違っているとも決められないのだ。

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