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頭の上の化物  お題:奇妙な罪人

いつからか化け物が纏わりつくようになっていた。


伝記に描かれているような虎とも獅子ともいえない白い猛獣。


どうやら普通の人には見えないらしく、迷惑きわまりないことにぼくだけが見えてしまうらしい。


そして、こいつはツバサも持たない獣のくせになぜか空をも自在に飛び回ってしまう。


いっそのこと、そのまま北風に乗って雲の彼方にでも消えてくれれば嬉しいのだけれど――


「……その口を結んだ表情。よからぬことを考えているな、おぬし」


「べつに。どこぞの野良化物が消えてくれることをただ願ってるだけだよ。」


「ふふん。そんなことは無駄だといってるだろうに」


化け物は名をコキアという。


彼の言う通り、様々な神社をめぐり除霊を願うも意味はなかった。


世の霊能力者のほとんどが嘘っぱちらしいことを僕は十五の歳にして知った。


ただ本物もいないことはなかった。


最終手段で探偵経由で紹介してもらったのは本物の霊能力者だった。


見た目はただの主婦のようなオバサンだったが、彼女にはちゃんとコキアの姿が見えていた。


ただし、彼女はぼくの思うような対応はとってくれなかった。


『除霊だなんてとんでもない。そんなことをすれば大変なことになるわよ』


そして詳しい事情は教えてくれなかった。


どうやら縁起の良いものらしいが、だったらせめて世間で有名な座敷ワラシくらい可愛らしいものであれば良かったのに……


「おまえはいったい、なんの目的でぼくと一緒にいるのさ」


「言っておろう。我はおぬしの未来のトガなのだと」


「あー、頭が痛い。ぼく、SFもオカルトも好きじゃないんだよ」


「我を無視して現実逃避してもべつに構わんがな。それは果たして賢い選択といえるかな。いつまでたっても、我はおぬしから離れられんぞ」


「だって信じられるかよ。ぼくが未来になって犯罪者になってるだなんて」


「だからこそ、我がおぬしの前に現れたのではないか」


「いや、だから……その「だから」が意味不明なんだよ」


「むう、困ったものだ。我も早くこの世から去りたいのに」


「だったら勝手にどっかにいってくれよ!」


しかし、彼はいつまでも付き纏った。

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