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お題:もしかして土地

 どう驚けばいいのだろう。まだ十五年しか生きていない私にはとても正しい反応が分からなかった。

 とりあえず通学カバンを落としてしまったのはわざとではない。呆然と立ち尽くし、なんとなく脱力していたのだ。

 目の前に島が浮かんでいる――こんな馬鹿げた現象があるものだろうか。

 どうしてこんな大事な時に周りに誰もいないのだろう。私は思わず舌打ちした。なんともいえぬ高揚感だった。まるで嫌いな人間の弱点でも見つけてしまったかのように。

 そして、私はすぐにでも自分以外の人間から同意を得たかった。この驚きを共有したかった。とはいえ、校舎裏なんて陰気な場所を放課後に好んで尋ねる者は滅多にいないだろう。

 空飛ぶ島の大きさは随分と小さい。机を四つくらい並べた面積だろうか。それに多少の丸みを帯びさせた程度の土地が虚空に浮かんでいたのだ。

 私は恐怖を覚えはしたがそれよりも好奇心のほうが優先した。気がつけば島の近くまで歩み寄り、その中を覗き込んでいた。

 草木はずいぶんと生い茂っていた。湖のような水面もあり、どうやら島の内部には水脈も流れているようだった。まるでジオラマ作りの模型じみた景色だったが、しかし、それらは確実に生きている。私の髪を撫でるそよ風が、島の木々をもそっと揺らしていた。そこに成っていた豆粒ほどの果実を噛んでみると、実際のフルーツのように甘い味が口に広がる。

 いったい、だれの仕業なのだろう。不思議に思っていると、島から小さな声が聞こえた。

「人の食べ物を勝手に食うな」

「へ?」

 わたしがよく見ると、そこには小人がいて、看板が立っていた。

『私有地につき、無断利用厳禁』

 世の中は広い。

 私はたまらず絶句した。


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