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ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第3章 浮上!邪神学園
33/33

大昆虫空中決戦

「わちゃー、なんかしっちゃかめっちゃかな事になっとるねー」

 空中の『プルートウ』から校庭を見渡して、琉詩葉が呆れ顔で言った。

各所が焼け焦げた校庭に立つのは、疲弊しきった獄閻斎、エナ、天幻寺。

彼らの秘術になおも屈さず、憤怒の眼で琉詩葉を睨めあげるのは、赤金の巨龍、七部衆『棲舞愚』。

屋上には傷ついた担任の魔衣。そして、学園の上空に異容をさらして浮ぶのは漆黒の奇岩城『ルルイエ学園』だった。


「め……冥条さん……!?」

 琉詩葉を見上げてエナが呆然。欠席していたクラスメートの、とんでもない『復帰』に開いた口が塞がらない。


「琉詩葉様、よくぞご無事で!」

 普段はクールな影執事天幻寺も、その美貌に喜びの色を隠せなかった。


「琉詩葉!『蠱毒房』の行、よくぞ耐え抜いた!」

 地上の獄閻斎がウルウルしながら孫に叫んだ。


「さあ!新たな『使徒』と共に、こいつをやっつけるんじゃ!」

 老人が『花殺め』で棲舞愚を差して琉詩葉に言う。


「わかってるって、お祖父ちゃん!まったく孫使いが荒いんだからー!」

 琉詩葉は地上の巨龍を見下ろして、ニヤリと笑った。


「ぐぬうう!虫けら如きが、舐めるなぁ!」

 そう言って琉詩葉とプルートウを見上げた巨龍棲舞愚。彼の口腔から再び紅蓮が滾った。

 

  ごおお!


 巨龍の吐きだした劫火の渦が、琉詩葉向かって一直線。

紅蓮が甲虫に命中。炎がプルートウの鼻先に騎乗した琉詩葉を包んだ、……と見えたその時。


 ぼしゅうう


棲舞愚の放った炎が、プルートウの角先で二つに割れた。

「おお!あの技は!」

 地上で目を見張る獄閻斎。

プルートウの角先に生じた金色の光の衝角が、劫火を二つに断ち割って、空中に散らしている。琉詩葉は無傷だった。


「プルートウ・インファナル衝角(ラム)!」

 甲虫王の手綱を引いた琉詩葉が、得意げに叫んだ。


「虫けらがバリアーだと!小癪な真似を!」

 怒りに歯噛みした巨龍が、深緑の翼を大きく羽ばたかせた。

ばさり。棲舞愚の体が校庭から浮き上がる。龍が怒りに燃える眼で口から炎を漏らしながら猛然と空中のプルートウに迫って来た。


空中戦(ドッグファイト)か……ならば!」

 琉詩葉が甲虫の手綱を引いた。


「インファナル加速(スラスト)!」

 びゅんっ!プルートウの体節の各所に形成された推進装置(スラスター)から生じたジェット噴射。甲虫は瞬時に加速すると大空に舞い上がった。


「おのれ逃すか!」

 風を切り、巨大な翼を撓らせて甲虫に追いすがる棲舞愚。


 どん!どん!どん!


巨龍の口から、燃え滾る火球の三連発。紅蓮のプラズマ火球が、プルートウの翅を、琉詩葉のすぐ脇を掠めて行く。


「まずい……振り切れないか」

 甲虫の後尾にぴたりとついた棲舞愚を振り返って、琉詩葉が顔を曇らせた。


「ならば……制動(ブレーキ!)エン旋回(ターン)!」

 琉詩葉が手綱を引いて叫ぶ。

びゅん!推進装置(スラスター)が角度を反転させて推動。プルートウの体が空中で急停止して、その角先が巨龍に反転した。


「なにい!」

 驚愕の棲舞愚。咄嗟に甲虫の体を避けようとするも、小回りの利かない棲舞愚の巨体は勢い余って甲虫に衝突した。

ばちいいいん!プルートウの正面に形成されたインファナル衝角(ラム)が、棲舞愚の胸を強打する。


 激突した両者は、もみ合いながら地上向かって落下していく。

「今だ!プルートウ!」

 がし。甲虫が、六つの脚で巨龍の体を押さえこんだ。


「ぐごおお!放せぇ!」

 ぼおお。棲舞愚が再び琉詩葉むかって口腔から放火。だが炎はインファナル衝角(ラム)に阻まれ琉詩葉には届かない。


 ぴたり。プルートウの頭角の先が、巨龍の頭に照準を定めた。

ばくん。黒々と屹り立つ角が、二又の真中からぱくりと割れて、内部から露出する金色に輝く砲門。


「プルートウ……インファナル鉄槌(ハンマー)!」

 琉詩葉が渾身の力で手綱を引いて叫んだ


 びゅーーーん!


「が……!」

 巨龍の怒号が途絶えた。

プルートウの角から発射されたフォトン・ブラスターの一撃、金色の必殺光線が、棲舞愚の頭部を直撃したのだ。


「か、勝った!」

 琉詩葉の握った手綱が緩む。だが……!


 びゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅ……


「嘘!」

 琉詩葉が目をむいた。

棲舞愚に命中したフォトン・ブラスターが、巨龍の頭部に吸い込まれていく。


「ばあえ!いあうあをひぁあいほぉおえい、ほんあおおぁひうあえあうあぁーーーー!」

 棲舞愚が、燃える眼で琉詩葉を睨んでそう言った。


 なんということだろう。巨龍が己が口で必殺光線を、インファナル鉄槌(ハンマー)を咥え取り、噛みちぎり、飲みこんでいく。

 雷撃の効かない棲舞愚の体には、フォトン・ブラスターの一撃もまた致命の技たりえなかったのだ。


「ひぃえぇ!ふううぇ!」

 琉詩葉の目の前で、巨龍が大顎を開いて炎眩を漏らした。


「ま……まずい!」

 狼狽する琉詩葉。フォトン・ブラスターを発射するため、すでにインファナル衝角(ラム)は解除している。

 絶体絶命、だがその時!


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