表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第3章 浮上!邪神学園
32/33

琉詩葉参戦!

 魔衣の『月光唱歌(がっこうしょうか)』が棲舞愚を凍らせていく。

死の子守唄(ララバイ)が、遂に巨龍を討ち果たすか?

校庭に立つ獄閻斎達は、白い魔氷に覆われて行く棲舞愚の姿を、固唾を飲んで見守っていた。

だが、その時。

「あぁ!」

 歌が途切れ、屋上から魔衣の悲鳴が響いた。

何が起きた?悲鳴の元を見上げて獄閻斎は目をこらした。

魔衣が、屋上の縁に立った美貌の教師が、右手をおさえて苦しげな顔。

なんということ。その手に突き刺さっていたのは、黒鉄色に不吉に輝く、十字手裏剣だった。

何者かの放った特殊な投擲武器が、広げられた魔衣の右手を刺し貫いたのだ。


「何者!」

 魔衣が美しい顔を怒りに歪めて、空を仰いだ。

見上げた先には、雷雲を背にして空中にたなびく方形の影。


 しゅ!しゅ!しゅ!

影の中から教師向かって矢継ぎ早に降ってくる、十字手裏剣の雨あられ。


「くっ!!」

 咄嗟に飛び退って手裏剣の雨をかわす魔衣。

おお、目を凝らして見れば、方形の影の正体は、巨大な『凧』だった。

黒雲の切れ目から洩れた日の影となって、その姿は見えないが、凧に乗った何者かが空中から屋上の魔衣を攻撃しているのだ。


「うかつ!助太刀か!」

 獄閻斎が憤懣に燃える眼で大凧を仰ぐ。

老人は懐より己が棒手裏剣を取り出すと、空中の凧に向かってはっしと投げ打った。


「冥条流焔術、『緋礫(ひれき)』!!」

 獄閻斎一声。途端、棒手裏剣から真っ赤な炎が噴き上がる。

灼熱の焔弾と化した手裏剣は、ぼうぼうと風を切りながら、空中の大凧に正確に命中した。


 次の瞬間。


 ぱああああああああん。


七色の灼炎を撒き散らして、大凧が爆ぜた。


「ああ!」

 エナと電磁郎は、頭上の異色に息を飲んだ。

炸裂した大凧が空の黒雲に咲かせたのは、七色の燦爛。大輪の花火だった。

凧に乗っていたはずの敵は、花火と共に微塵と砕けたかに見えた。だが……


「手裏剣!火遁の術!これは……忍者の技!」

 花火を見上げる獄閻斎の眼は依然として厳しかった。

頭上の敵は、この大輪に紛れて姿をくらませたのだ。


「棲舞愚!いつまで呆けている!こんな目晦しも見抜けぬとは愚鈍な龍め!」

 校庭に響く姿の無い何者かのくぐもった声。


「ぐ……!ごぉおおお!死郎、かたじけない!」

 棲舞愚の咆哮。魔衣の歌が途切れ、その身を覆う氷は溶け、巨龍は、再び自由を取り戻していた。


「許さんぞ女!一秒で死ね!」

 棲舞愚、そう叫ぶなり間髪いれずに、


 ごおおおおおお!


その口から、紅蓮の劫火を屋上向かって吐きつけた。


「うぅ!」

 屋上で傷ついた魔衣めがけて、猛火が迫る。

絶体絶命、だがその時!


 びゅーーーーーーーーーん!


突如、巨龍の正面の地面が、二つに裂けた。

校庭を割って吹き上がった金色の光の奔流が、巨龍の炎をもまた二つに割って、空中にかき散らした。


「なんだと!」

 棲舞愚が驚愕に吼えた。


 ずずずずず……


地鳴りとともに、校庭が、揺れた。


「何か……来る!」

 エナは振動に足を取られないよう踏みとどまりながら、揺れる地面に目をやった。


 どかーーーん!


爆音と共に、土煙を上げて、校庭に大穴があいた。


「おお!」

 獄閻斎が驚嘆の声。


校庭の大穴から空中に飛び出してきたのは、棲舞愚に、この巨大な火龍に劣らぬ体躯の、黒々とした巨大カブトムシ。

『蠱毒房』の甲虫王、『プルートウ』だった。


「へへ~!お祖父ちゃん、お待たせ~!」

 見ろ。空飛ぶ甲虫王の頭角にまたがって、手綱を引きながら獄閻斎を見下ろしているのは、アメジストの杓杖を携えて紅髪を揺らした一人の少女。


 琉詩葉だった。


「おお……!よくぞ戻った、琉詩葉!!」

 感極まった獄閻斎が、鼻をすすりあげながらそう叫んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ