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ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第3章 浮上!邪神学園
28/33

巨龍襲来

 獄閻斎の手のうちから放たれた、目にも止まらぬ白刃一閃。

しぱん!空を切る音。

「いぅう!」

 少年の呻き。

なんということ。正確無比な老人の剣は、彼の孫娘よりもさらに幼い少年の喉を、真一文字に切り裂いたのだ。

「獄閻斎様!」「理事長先生!」

 獄閻斎の背後で昂っていた電磁郎とエナも、老人の放った情け容赦ない一撃を目の当たりにして、思わず体が竦んだ。


「おうぅぅ!」

 裂かれた喉を手で押さえて、後ずさる少年。

堪らず校庭に斃れるかと見えた、だがその時。


「なぁんてね!」

 少年の声が校庭に響き渡った。

あ……!電磁郎とエナは空を見上げた。声の聞こえた先は、頭上の岩塊、ルルイエ学園だ。


「ではこいつは!」

 地上の少年に目線を戻した電磁郎。

見ろ。獄閻斎に斬られた少年を。

小さなその体は、四肢の先からボロボロと崩れ落ちると、灰色の土塊と化かして校庭に砕け散ったではないか。


「やはり目晦ましか!」

 厳しい眼で空を仰ぐ獄閻斎。


「理事長、開戦の合図、確かに受け取ったよ」

 笑いながら遠ざかっていく少年の声


「僕も今すぐ戦いたいところだけど、まずは『彼』が独りで()りたいって言うんだ……みんな、遊んであげてよ!」

 そう言って、少年の声が消えた、次の瞬間。


 ごおおお。風の巻く音。チラチラと、日が陰った。

「何?」

 エナは顔をしかめて、太陽の方を見た。

ばさり、ばさり。何かの羽ばたく音。

霧の晴れた校庭むかって、朝日を背にして、何かが飛んで来る。


「うぅ!」

 エナは顔をそむけた。

上空から、火の粉を帯びた熱風が吹きつけてくる。熱風はエナと電磁郎、そして獄閻斎の体を、容赦なく叩く。

まだ寒々しい校庭の桜の枝が、熱く乾いた風に撓った。


 ばさあっ!

おお。巨大な翼をはばたかせ、ついに嵐の源が聖痕十文字学園に降り立った。


「う……うそ!」

 エナは左手で口を覆った。

「ぬうう!」

 驚愕に言葉もない電磁郎。

校庭に立ちつくした三人を、緑に燃える眼で睥睨する赤い影。

見ろ。蝙蝠の様な深緑の翼で日を遮り、赤金色の鱗に覆われた三階建ほどもある爬虫の巨体。


 やって来たのは、巨大な(ドラゴン)だった。


「邪神廟七部衆が一番槍、素舞愚すまうぐ見参!」

 龍が、耳まで裂けた口から真っ赤な炎を漏らしながら、そう名乗った。


「なんと!」

 獄閻斎もまた、驚きを隠せなかった。

ルルイエ学園代表選手七人の先鋒は、人ですらなかったのだ。


「ぐははは!『夜見の衆』如きこのわしだけで、まとめて灰にしてくれるわ!」

 素舞愚すまうぐと名乗った龍が、三人を舐めるように見まわしながら、地獄から轟く様な重声で流暢にそう言った。


 爬虫が……人の言葉を話す!二度驚きの電磁郎。


 だが、オウムを飼った事がある方ならおわかりだろう。言葉を仕込まれた彼らオウムの鳴き声は、まさに人間の声と聞き違う程である。

 あるいは、昼の日中に公園のベンチで一日、辺りを飛びまわるカラス達とお話し続けてみるがよい。

一週間もすればカラスと貴方の間には、日本語で『こんにちは』『またお前か』『ばーか!』『逃げろ!』くらいの、簡易な会話が成立しているはずだ。


 まして鳥の先祖である爬虫類の王者(ドラゴン)、鳥の数百倍の脳髄を擁する彼ならば、人語を解し話したところで、さしたる不思議は無い。


 ぼおお。素舞愚すまうぐが、大きく息を吸いこんだ。

「いかん!電磁郎、炎浄院、さがれ!」

 慌てた獄閻斎が背後の二人に号令。だが次の瞬間、


 かっ!


 開かれた龍の顎から、炎が迸った。三人に迫る劫火。


「冥条流焔術、『緋獄嵐流(ひごくらんる)』!!」

 獄閻斎が咄嗟に刀を抜いて、そう叫んだ。


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