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ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第2章 琉詩葉、特訓だ!
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蟲使いと少年

 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ……


 地鳴りと揺れがようやく収まると、今度は震源と思われる神殿の奥から、何か別の音が聞こえてきた。

車のエンジン音のようなその音は、琉詩葉とナメクジに向かって一直線に近づいてくる。

「また敵!?もう、いっぱいいっぱいなんすけど……」

 涙目で闇の奥に目を凝らす琉詩葉。彼女向かって飛んでくる、小さな赤い、二つの光点。


「あ……」

 琉詩葉は息を飲んだ。エンジン音ではない。翅音だった。


「や……やばい!逃げるぞスリザー!」

 光点の正体を知った琉詩葉が、必死にナメクジに叫ぶ。


「ずにゅる……」

 琉詩葉を再び背中に乗せて、その場から走り去ろうと震えだすヤミナメクジの体躯。


だが、時は遅かった。


 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ……


キチン質の巨大な翅で周囲の空気を震わせながら、屹立する石柱の間を縫って『それ』が琉詩葉に迫ってきた。

一対の複眼を真っ赤に輝かせ、凄まじいスピードで飛んできたのは、まるで黒光りする空飛ぶ蒸気機関車。


 ヤミナメクジの更に二倍に達しようかという体躯の、巨大な、カブトムシだった。


「ぎゃお~~ん!」

 まるでコントラバスの様な恐ろしい重低咆哮をあげながら、カブトムシがナメクジに衝突した。


 ずがががが!


 空飛ぶ巨大甲虫の体当たりをまともにくらい、石畳を転がるヤミナメクジ。

「うわ~~!」

 琉詩葉は成す術なくナメクジの甲羅にへばりついている。


「ずにゅ~~!」

 どうにか体勢を立て直したナメクジが、石畳に着陸して翅を収めたカブトムシを睨む。

甲虫に向けられた四本の触角が、ブルブルと震えだした。


 びゅっ!軟体生物の頭部から放たれた必殺の溶解液が、甲虫めがけて飛んで行く。だが……

じゅん。なぜだ、漆黒の溶解液はカブトムシに達する前に、空中で瞬時に沸騰、蒸発した


 なにが起こったのだろう、琉詩葉には眼前で起きた事が理解できなかった。

ばくん。さらに驚くべきことが起きた。甲虫の頭部に黒々と屹り立つ角が、二又の真中からぱくりと割れた。

角の内部から露出したのは金色に輝く、砲門だった。


「ぎゃお~~~ん!」

 必殺の気概と共にカブトムシが、ナメクジの頭部に己が角先の照準を定めた。


 びゅーーーーん!

 

 光が、迸った。琉詩葉は眩しさに顔をそむけた。

なんと、カブトムシの頭部砲門から放たれたのは、金色に輝く熱線!


 じゅん!


フォトン・ブラスターの一閃はナメクジの頭部に命中。頭部は一瞬で蒸発し消滅した。


「そんな~!ダーク・スリザー!」

 石畳に崩れ落ちるナメクジの背中から飛び降りながら、琉詩葉が叫ぶ。


だが、使徒の敗北を悲しむ暇など無かった。

巨大甲虫が金色の砲門を、今度は琉詩葉に向けたのだ。


 びゅびゅびゅびゅびゅ……


不気味な装填音と共に輝きを増していく甲虫の頭角。

「万事休すか……」


へたりこむ琉詩葉。だがその時。


「やめろ!プルートウ!」

 金色の死光に照らされた神殿に響きわたる、凛とした一声。


「え……?」

 思わず顔を上げた琉詩葉の眼の前に、


 たん。


 一体何処から現われたのか、立っていたのは一人の少年。

純白の詰襟に輝いている金鎖の装飾。白々と闇に靡く艶やかな銀髪。

端正なその貌は、だが怪我でもしているのか、その左目を覆っているのは真っ黒な眼帯だ。


「冥条琉詩葉!三日三晩の戦い、よくぞ耐え抜いた!」


 甲虫の放つ金色の光の奔流を背に負って、少年が琉詩葉に言う。


「え……なに、君、いつのまに……?」

 思いがけない事態にドギマギの琉詩葉。


「お前を、大冥条の跡取りと認めよう!ヤツとは、俺が話をつける」

 そう言って美貌の少年は妖しく笑うと、カブトムシの方を向いた。


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