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ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第2章 琉詩葉、特訓だ!
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蠱毒房頂上決戦

昆虫王に、あたしなる!

 ずにゅるるるるるる!

紫に輝く招蠱大冥杖。錫杖の光が床に落とした琉詩葉の影から、ズルズルという不気味な異音と共に、何かが盛り上がってきた。


「どぅおおお!」

 錫杖に呼びだされ異界から頭をもたげてきた『それ』に足をとられる琉詩葉。

転ぶまいとした彼女は、咄嗟にそれの粘つく背中に、しがみついた。


 おお、琉詩葉の影を割って現われた巨大な塊が、彼女を背負ったままブルブルとその体を震わせて、うごめく触角の先端に生じた目で、昆虫達を睨んだ。

 なんたる異形か。

彼女が呼びだしたのは、その全身をヌラヌラとした粘液で覆われた、

アフリカゾウ程もある巨大な、銀色の、ナメクジだった。


背中の前面に生じた褐色の甲羅の上にはちょこんと、琉詩葉が乗っている。


「ぶごぉ~~!」

 琉詩葉の新たな徒『ダイオウヤミナメクジ』が、四本の触角を震わせながらおぞましい咆哮を暗闇に響かせた。


「な……ナメクジ……あたしの技って、こんなんばっか?」

 新たな使徒の背中に乗って、ビミョーな顔の冥条琉詩葉。


「ま……まあいいや、行け!ダーク・スリザー!」

 ここで文句を言っても始まらない。

気を取り直した琉詩葉、甲羅に掴まりながら彼女に迫ってくる巨大昆虫軍団を睨んで、そう言った。


 ぴしゃり!琉詩葉の錫杖がスリザーの背中を叩いた。と……どうだ。


ずどん。銀色の全身を巻きバネのように撓わせて、スリザーの体がまるで跳ね馬(テスタロッサ)のように、空中に跳ね上がった。


「おおぉう!」

 振り落とされまいと、必死に甲羅に生えた突起にしがみつく琉詩葉。

宙に舞ったスリザーの図太い体の落ちて行く先には……カマキリ、カミキリムシらの昆虫軍団。


 ずどーん!


 ナメクジ、まさかの先制攻撃!

その外見からは想像も出来ない俊敏さで放たれた重量級のボディ・プレスが、

技を避け損ねたコガネムシとカミキリムシの体を、粉微塵に叩き潰した。


「ぎぃぇえええええええ!」

 だが、次の瞬間!耳をつんざく裂帛の気合いが琉詩葉とナメクジに突き刺さる。

咄嗟にボディプレスから飛び退り、奇声を上げながらナメクジの背中に斬りかかってきた、緑の魔影。

鎌状の前足を振りかざした昆虫剣鬼、巨大カマキリだ。


 がちん!だが……おお見ろ。鎌はナメクジの背中に達さず。

(スリザー)の背甲から立ちあがった琉詩葉が、右手に構えた大冥杖一本で、鎌を防いでいる。


「へへ……そうはイカの……」

 琉詩葉、蟷螂剣と必死の鍔競り合い。しかし次の瞬間……


「キンカクシ!」

 そう言って鎌を振り払いざまに、琉詩葉が跳んだ。しゅらん。

スクールローファーの先端から飛び出す鋼の刃、琉詩葉の隠し剣。

ばつん。あ、次の瞬間には彼女の放った白刃回し蹴りの一閃が、鋼の刃が、カマキリの頭部と両鎌を同時に落とした。


「いいね~うちら!息合ってるかも!」

 どうにか体力の回復してきた琉詩葉が笑う。琉詩葉、スリザーの背中にふわりと再着地。


 だがナメクジの前面には新たな敵が迫っていた。


「ぐが~!」「ぴちゅぴちゅぴちゅぴちゅ!」

 強靭な剛顎を誇るパワーファイター、ノコギリクワガタ。そして巻貝一族の天敵、マイマイカブリの異色タッグだ。


 がぁきいぃ!まずはクワガタがナメクジに体当たり。鋏状の大顎でナメクジの胴体をギリギリと締めあげる。

だがナメクジも一歩も引かず。ガブリ四つの両者の横から……


 ずぶり。


 ああ!ナメクジの脇腹に噛みついたのは巻貝の宿敵マイマイカブリ。

従兄のカタツムリを常食するこの憎らしい殺し屋の顎が、普段ナメクジに向けられることはない。

だがここは死合(しあい)の場。マイマイカブリは己が口吻を、必殺の武器としてナメクジに突き立てたのだ。

ぐずり。口吻から注入された消化液が、ナメクジを体内から溶かしていく。


「ずちゃ~~!」

 さしものナメクジも苦悶の咆哮。勝負合ったか?しかし、

びゅるん。ナメクジの体内から飛び出した何者かが、マイマイカブリの頭部に巻き付いた。


「ぶぐぅー!」

 頭部を締めあげられながら苦痛と驚愕の鳴き声を発するマイマイカブリ。

 何が起こった。傷口から飛び出した黒いロープの様な奇怪な線虫が、巻き取った殺し屋の頭部に食い込み、砕いて、すりつぶしていく!

あ、琉詩葉は気付いた。寄生虫だ。スリザーの体内に潜んでいた奇怪な住血線虫が、宿主を殺さぬよう、外敵を排除したのだ。

 惨なり!必殺の(あぎと)でナメクジを討ったかに見えた殺し屋も、標的の体内に潜んでいた思わぬ伏兵に頭部を砕かれ悶絶しながら息絶えた。


 ずずぅううううううう。


 床をのたくって体勢を立て直すナメクジ。残るはクワガタ一匹。

だが、脇腹に穿たれた傷は深い。既にナメクジにクワガタに拮抗するパワーは無くナメクジの胴体を挟む鋏の大顎が、容赦なく彼の体に食い込んでいく。


 打つ手なしかスリザー。

だがナメクジ、最後の一手。びゅるんびゅるん。彼の四本の触角が、不気味に戦慄いた。


 びゅっ!


 突如、四本の触角から、何かが射出された。

ナメクジがクワガタの頭部に発射したのは、どす黒く粘ついた液体だ。


 じゅううううううう。


 何が起こった?液体のかかったクワガタの頭部が、鋏の顎が、白煙を上げながら、みるみる内に溶けて行く!

「ぐごおおおおお!」

 クワガタが断末魔の悲鳴を上げた。

パワーファイターの顎が溶け折れる、頭部が崩れて無くなっていく。

 どどう。

無残、昆虫連合最後の一匹も、ナメクジの放った必殺の溶解液の前に、ついに斃れて石畳に転がった。


「ずちゃ~~!」

 勝利の雄叫びを上げる、琉詩葉の徒ダーク・スリザー。


「こ……今度こそ勝った……」

 ナメクジから飛び降りた琉詩葉が安堵の一息。


 だがしかし……


 ずずーーん!


 巨大な何かが墜落するような轟音。『神殿』全体が大きく揺れた。


「こ、今度はなんなのさ~!」

 琉詩葉が、マジ勘弁な顔で闇の奥を見た。


※ナメクジも昆虫ではありません。溶解液も出しません

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