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ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第2章 琉詩葉、特訓だ!
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のこたん再び

「どわ~!」

 大冥杖に引っ張られて祠に飛び込んだ琉詩葉を待っていたのは、地下深くへと続く急傾斜のスロープだった。

スロープを何処までも何処までも転げ落ちていく琉詩葉の悲鳴が、暗闇の中にこだました。


 ばさっ!突然、琉詩葉の体が宙に舞った。スロープが途切れて、空中に投げ出されたのだ。

「でー!」

 湿った風が彼女の紅髪をゆらす。墜落する……?


「まずい!」

 琉詩葉は咄嗟に受身の構え。


 ごろん!

次の瞬間、琉詩葉の体が冷たい石畳の上に転がった。


「あ()つつつ……!もーお祖父ちゃん、いきなりなんなのさ!」

 起き上がって周囲を見回す琉詩葉。明かりは無く、目の前は真っ暗だ。


「明かり明かり……」

 琉詩葉は、右手の大冥杖をかざした。

錫杖はすでに琉詩葉を誘うのを止め、今は彼女の意のままだ。

錫杖にあしらわれたアメジストが、ちらちらと瞬き始めた。


 ぼおおお。大冥杖の先端にぼんやりと紫色の灯りがともる。


「なんなの、ここ……!」

 紫光に照らされて浮びあがった光景に、琉詩葉は息を飲んだ。

 そこに広がっているのは、まるでいつか何かの本で見た、外国の古代地下神殿を思わせるような壮麗な光景だった。

闇の中を等間隔で立ち並ぶ無数の巨大な石柱が、錫杖の光の届く限り、何処までも延々と連なっている。

石柱が支えていると思われる天井は、どれほどの高さに在るのだろう。明かりは届かず闇の中だ。

「ぬぬ!」

 琉詩葉はすぐ手前にある柱を見上げた。何かが彫られている。

よく見ればカマキリ、カブトムシ、クワガタムシといった様々な昆虫のレリーフが、黒大理石と思われる柱の全面にびっしりと刻まれている。


「『蠱術』の修行場か、嫌な予感しかしないんだけど……それにしても……」

 琉詩葉は、開いた口がふさがらなかった。


「ここって、ほんとに学園の下?」

 各所におかしな仕掛けの多い聖痕十文字学園だが、まさか、地下にこんなものまで!

琉詩葉は振り返って、自分が転がり落ちてきた壁のトンネルを見上げた。

あそこから地上に戻れるだろうか?だめだ、高すぎる。壁をよじ登るような足掛かりも、道具も無い。


「あーもー!別の出口探さないと!」

 あても無く歩き始めた琉詩葉。その時、


 もぞり。突然、琉詩葉の脇腹を何かがつっついた。


琉詩葉が小脇に抱えたスクールバッグが、もぞもぞと動いているのだ。


 ぴきゅぴきゅ。

バッグの中から何かの鳴き声。


「でっ!忘れてた!」

 あわててバッグを開けた琉詩葉の眼の前に、


 ぴきゅ~!


 中から飛び出したのは、筆入れ程しかない、小さな金色のつちのこ。

電磁郎との立ち合いで琉詩葉が偶然召喚したこのUMAは、

なぜかそのまま彼女に懐いてしまい、戦いの後も琉詩葉から離れないのだ。


「ごめんごめん、ノコタン、苦しかった?」

 そう言って琉詩葉は、つちのこを手に取ると、石畳に放してやった。


「お?」

 琉詩葉は目を見張った。彼女の周りをコロコロ転がりながら、『ノコタン』の体が、ぼんやりと金色に光り出したのだ。


「きゅっきゅっきゅ~!」

 ノコタンが、彼女を離れて、闇の中を前進し始めた。金色の光が黒い石柱や石畳に照り返っていく。


「んー?ついて来いってこと?」

 琉詩葉は、つちのこの後を追って『神殿』の奥に歩き始めた。


「まったく、やっと電ちゃんに勝てたのに……」

 一人ブツブツ言いながら、闇の中を進んで行く琉詩葉。

それにしても……琉詩葉は先程の落下で手足についた擦り傷を見て思う。

あの高さから投げ出されて、このくらいで済んだのも、電磁郎との『特訓』の成果だろうか。


 以前はあれほど手を焼いていた電磁郎の『教鞭』も、今朝は易々と見切る事ができた。


「へへ……成長したってこと、あたし?」

 急速に治っていく手足の擦り傷を見ながらニマニマの琉詩葉。

生まれつき持っている人並み外れた回復力が、更に増したようだ。


「おーい!だれかおらんかー?」

 校庭での勝利を思い出し、傷の治りに気を良くした琉詩葉。

そう大声で周りに呼びかけながら、闇の中を進んで行った。

今なら、どんな相手にでも勝てそうな気がする。


 だが琉詩葉の甘い考えは、数秒後には吹き飛ばされた。


「ぎしゃ~~!」

 柱の奥の闇から、金属を擦り合わせるような不気味な鳴き声。

がさがさがさがさ。琉詩葉に近づいてくる『何か』の足音。迫りくる足音の出所は、一ヵ所からではなかった。

前から、右から、左から、上から。


「あぇ……上から?」

 琉詩葉は、立ち並ぶ石柱を見上げる。


「ふおぉ!」

 息を飲む琉詩葉。柱に、何か、とまっている!?


「ぎしゃ~~!」

 石柱を伝って下りてきた巨大な黒い影が、琉詩葉に飛びかかってきた。


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