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ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第2章 琉詩葉、特訓だ!
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世界開始のとがの御伝え

「琉詩葉、お前の手に持ってるそれは何じゃ?」

 獄閻斎が琉詩葉に言う。


「え?……招蠱大冥杖しょうこだいめいじょう、『蠱術(こじゅつ)』の触媒」

 アメジストの錫杖をかざして訝しげに答える琉詩葉。


「ではこれは?」

 獄閻斎がパチリと指を鳴らす。

ぼおお。一瞬、空中に燃え上がった紅炎。


「それは……お祖父ちゃんの『焔術(えんじゅつ)』」

 熱気から顔をそらして答える琉詩葉。


「電磁郎の『雷光剣(らいこうけん)』は?」

「あれは……電ちゃんの特異体質」


「では天幻寺や魔衣の……まあいい、キリが無いわい」

 獄閻斎が質問をきりあげた。


事程左様(ことほどさよう)に、全ての人間は持って生まれた、あるいは訓練で培った自分だけの『秘術』を使うことができる」

 彼は学園を囲む街並みをぐるりと見渡して、そう言った。


「我々冥条家は、特にその才に秀でた家系、琉詩葉、お前もそうじゃ」

 獄閻斎が琉詩葉を見て言う。


「現に特別の訓練を課さずとも、お前はその錫杖で多くの蟲どもを操ることができる、だがな琉詩葉……」

 獄閻斎が続けた。


「冥条家に伝わる古文書にはこう記されておる、はるか昔、我々人間は『秘術』など持っていなかったというのだ」

 彼は遠い眼でそう言った。


「ふ~ん、随分不便だったんだね、『決闘』の時とか、どうするんだろ?」

 いまいち実感の湧かない琉詩葉。


「でもじゃあ、いったい『秘術』って、いつから使えるように?」

 琉詩葉は首をかしげて尋ねた。


「おそらくは、『大崩壊』の後じゃ」

「『大崩壊』?」

 琉詩葉、聞き慣れない言葉に、またまた頭が?で埋まっていく。


「そうじゃ、古文書『冥条家死法儀式めいじょうけしほうぎしき』に曰く……」

 獄閻斎が重々しく言った。


「遥か昔、世界は一度、粉々に砕けて消え去ったというのだ」

「世界が砕けた……消えた……なんで?」

 息を飲む琉詩葉に、


「わからん、この世を統べていた荒ぶる神々の、怒りとも、気まぐれとも伝えられておる」

 獄閻斎もまた首をかしげて答えた。


「だがな、それを哀れんだ一柱の女神がいたのだ、この世界を愛でていた女神がな」

 獄閻斎は空を仰いで言った。


「女神は、砕けた世界の欠片をよせ集めた、そしてそこから、新たな世界を再創世(リジェネレイト)した……」

 彼は再び琉詩葉を向いて言った。


「それが、今の我々の『世界』じゃ……人間が『秘術』を持つようになったのは、その時からと言われておる」


「ほ、ほほ~!でも、一体なんで?」

 いきなり明かされた世界設定に困惑気味の琉詩葉。

彼女は老人に更なる疑問をぶつけた。


「女神の力が足りなかったためじゃ、新しい『世界』は、砕ける前の世界ほど丈夫ではなかった……

脆くて、傷だらけで、ちょっとしたことで、すぐに再び崩れて消えそうになったという……そこで、女神は一計を案じた」

 神妙な顔で獄閻斎が言う。


「『世界』の中に生きる我々人間全てに、ほんの少しずつ、女神自身の力の一部を分け与えたのだ、

『世界』を内側から守り、繋ぎ、(いつ)に保てるようにな……その力が……『秘術』じゃ」


「ず……随分フランクってゆうか、人頼(ひとだの)みってゆうか、いいかげんな女神さまだねー」

 あきれ顔の琉詩葉。


「でも、そのおかげで、あたしたちも『秘術』が使えるんだ!」

 琉詩葉は少し嬉しそうだ。


「なんて名前なの?いいかげんな『そいつ』!」

 そう訊く琉詩葉に、


「『まりか』様……古文書にはそう記されておる」


  獄閻斎はぽつりと答えた。


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