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ルシフェリック☆バースト!  作者: めらめら
第2章 琉詩葉、特訓だ!
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影執事天幻寺

「オラオラ冥条!あと校庭十周!」

「ひーん、もう勘弁してよ電ちゃーん!」


 放課後の学園、竹刀片手の電磁郎が朝礼台から琉詩葉に檄をとばす。

獄閻斎のお墨付きをもらった彼は、これまでの鬱憤を晴らすかのように連日、暗くなるまで琉詩葉をしごき上げていた。

ジャージの琉詩葉、涙目で校庭を周回している。


「耐えよ琉詩葉、電磁郎の教練で根を上げるようでは、『十文字蠱毒房じゅうもんじこどくぼう』の(ぎょう)、とても生きては乗り切れぬ」

 理事長室から沈痛な面持ちで校庭を見下ろすのは冥条獄閻斎。

その手には、琉詩葉から取り上げたアメジストの錫杖、『招蠱大冥杖しょうこだいめいじょう』が握られている。


天幻寺(てんげんじ)、戻ったか……」

 校庭に目を遣ったまま老人が呟いた。


「はは、獄閻斎様、天幻寺はこれに」

 獄閻斎以外は人影の見えない理事長室に夜斗(ないと)の声が響いた。


 ずずずずず。


これはいかなることか、理事長室を赤々照らす夕陽が床に落とした、獄閻斎の長い影。

血色の床に生じたその黒影から、水面を割って浮き立つように、一人の男が生えてきた。


老人の影から立ち上がったのは天幻寺夜斗。美貌の青年は長身痩躯を優美に屈し老人にかしずいた。


「天幻寺、わしにもはっきり判るようになった……この世の境を潜行する『奴ら』の妖気……戦まであと数日」

 夜斗を向きもせず獄閻斎は厳しい声で言った。


「獄閻斎様、仰せの通り夜見の衆、既に戦支度は整えております、電磁郎(でんじろう)魔衣(まい)も戦意充分、あとは『司厨士』殿のお帰りを待つのみ」

 そう答える夜斗。穏やかだが凛然とした青年の声。


「うむ……残るはお前だ琉詩葉、夜見の頭領たる大冥条家、その跡取りとして戦いの先陣に立つのはお前……」

 老人は今一度校庭を見下ろして言った。


「耐えよ、琉詩葉……」


「それにしても獄閻斎様……」

 老人に問う夜斗。冷静そのものの彼の声に、わずかに険が生じた。


「裂花とかいう女、なぜ今まで学園で野放しに?あのような妖怪一匹、お命じ下されば、すぐにでも……」

 青年は顔を伏したまま歯がみした。


「落ちつけ天幻寺、先の戦でかろうじて『奴ら』を退けたのも、あの女の力添えあってのこと……我らは裂花ともまた、浅からぬ縁があるのじゃ」

 答える獄閻斎の声は暗かった。


「かしこまりました……ですがあの女、今度また、琉詩葉様にあのような狼藉を行うなら……私は……」

 憤懣を噛み殺すような声をたて、ふたたび獄閻斎の影に沈んでいく夜斗。


「裂花、何故我らを助ける……何を考えておる……」

 残された老人は一人呟いて、落ちかかる陽を眺めた。


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