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98話「怒り爆発の土砂崩れ魔法!!」

 コータロ率いる人造人間が全員出払っていて、無人のはずの空母。


 内部は薄暗く、金属の壁や支柱で構成されている。機器や電子回路のような灯りが所々。

 ドングリやカメムシのようなロボットが徘徊(はいかい)していて、監視、メンテナンス、操作などの役割をそれぞれ()()っている。

 浮遊機や作業用ロボットを格納(かくのう)している広大な広場。

 そして個室や司令室など多くの部屋が、頑丈な扉で閉じられている。



 とある淡い光を放つカプセルがベッドのように並ぶ部屋。

 ガション、とカプセルが上下に二分割すると管からプシューと煙が溢れる。中から人影が足を床に下ろす。


「クソッ! ……なんなんやがぜ!? あのインド(サムライ)!」


 なんとコータロだった。悔しがって形相を震わせている。


 彼は自ら戦場に(おもむ)くタイプではない。だが、この手で憎き敵を八つ裂きにしたい。そこで仮の肉体、例えば自分の肉体をベースにしたロボットなどに精神を飛ばして操作するシステムを確立させたのだ。

 いわばアクトが瞬殺した方の肉体はニセモノだったのだ。


「高かったんやがぜッ!! あの機体ッ!」



 ずっと長い間、仮の肉体で過ごしたため、生身に戻るとなると歩くのにもフラフラする。

 仮の肉体をやられた後、しばらく戦いの様子を観て形成が不利になったために、生身で出て来ざるを得なかった。


「……だが、ここまで追い詰められるやと……。まさか……学校のヤツラが、そ、そんな……強うてありえへんがぜ…………」



 人造人間総動員の上に、夕夏(ユウカ)家の全面的なバックアップを受けてさえ、多くの人造人間はおろか、最強格のジダ公まで敗れるという最悪なシチュエーション。

 このまま惨敗すれば、間違いなく総統ヤミザキの怒りを買う事になる。


 心境は穏やかではなく、顔面真っ青で冷や汗いっぱい。不安でたまらず心音がバクバク鳴っている。

 おぼつかない足取りで金属の通路を進む。



 とある大きな扉を前にして、コータロは息を飲む。


 カード認証ドアコントローラーにカードを通すと扉はゴゴッと鈍く開いていく。隙間から光が広がる。



 ポコポコ……。ポコッポコポコッ……。ポココッコッ……。


 気泡漂う液体満ちる大きな筒状のカプセル。その上下を何本かのチューブで繋がれている。その周囲の機器の灯りが点滅している。


 中には肌色のダンゴのような奇妙な肉塊が漂う。



 コータロはカプセル前へ足を止める。不安げに目を細める。

 とっておきの秘密兵器こと『究極完全体』。発案は馬淵(マブ)ドラゴリラ。一度起動すれば、誰も止められぬ最強最悪の殺戮兵器になる。扱いを誤れば日本全土が消し飛びかねないほどだ。



「ウッホホ……、(コータロ)よ! 不安かいな?」


 振り向けば、モンスター化としたオカマサとドラゴリラが立っていた。その足元に黒い円がある。

 コータロは突然の事に見開く。

 歩み寄ったオカマサは神妙な顔でコータロの肩に手を置く。


「……すまない。俺たちが不甲斐(ふがい)なくモンスター化して『魔界』へ堕ちたばかりに、不安にさせたな」


 コータロはうるっと涙ぐむ。

 会えないと思った親しい二人が来てくれたのだ。これほど嬉しい事はない。


「ま、魔界から出て来れたんやがぜ?」


「せやな……。けども『魔界』は案外暮らしやすいんやで……。秩序(ルール)なき弱肉強食の世界やから、な~にしたって許されるんや……。それはともかく、ケン治が敗れるまでつもる話せへんか?」

「そうだな。恐らくケン治は敗れるだろうが、それでも学院のヤツらに多大なダメージを与えてくれるはずだ。

 その時こそ、この『究極完全体』で一方的な殺戮の始まりだッ…………!」


 オカマサはニタリと邪悪な笑顔を見せた。フッフッフ!

 これこそ我が敬愛(けいあい)なる二人なのだと、コータロはしみじみと感慨(かんがい)していく。




 エレナの弧を描くようなかかと落としがレンスの頭上を穿ち、ツノが砕かれ血飛沫が舞う。そのまま地面にレンスの頭を押し付けるように叩きつけた。


「ぐぼぁっ!」


 顔を埋めたまま吐血が漏れる。


 エレナはふうと息をつく。ジャンプしてクレーターから出るとリョーコと目を合わせ、親指を立てた拳を見せ合う。



「ナッセちゃーん! あたし勝っちゃったぁ────っ!!」


 モニターに映るナッセに向かって、明るくて可愛らしい笑顔で手を振る。

 それにリョーコは「あざと~」とジト目で見やる。


 それでも脇目も振らず、エレナは相変わらず「ナッセナッセー!」とハート吹雪を撒き散らしてラブコールを繰り返す。

 当のナッセは赤面して両手で目を隠し「やめて……」と女々しく呟く。

 やはりヤマミが「止めなさい」と食って掛かり、それにエレナが「ジャマミ~」と言い争いに発展するのも恒例になってきたぞ。


 そんな喧騒(けんそう)にマミエは眉間にシワを寄せて、歯ぎしりしていた。



「それにしても疲れたわ~」


 リョーコは高揚していた気分が落ち着くと、膝をついて屈み込む。


 オーラと魔法力を混ぜて放出する混合オーラ『エーテル』は、普段の倍くらい消耗する。そのため疲労も半端ではない。故に短期決戦用。長期化する戦争では向かないため、これまで使用を控えていた。


 しかし!


 ドゴォォォン!!


 二つのクレーターから噴き上がった衝撃波で破片が舞った。

 リョーコとエレナは振り向く。汗が頬を伝う。焦燥を帯びる。やはりと言うかバイオとレンスが怒りの形相で姿を現していく。


「ま、まさか……? あの薬、一つだけじゃなかったの~??」


 エレナは再び魔法金属(ミスリル)に身を変えた。しかし「うぅ……」と片目をつむってガクッと体勢を崩す。



「ブッ殺す!!」


 バイオとレンスはビキビキビキッとシワや血管をあらわに浮かばせた。より畏怖させられる険悪な威圧感で、大地を揺らしていく。

 ダメージをリセットさせられ、更に体力まで満タン。

 それに対し、リョーコとエレナは満身創痍で身構えるのすら辛い状況だ。


 負けるかも知れない……。

 だけど、それでも最後まで望みを捨てないっ!


「だって! あたしは、ナッセちゃんと一緒にいたいからっ!!」




 怒りの形相でマミエは顔を真っ赤にして、頭上から湯気を上げてきた。


 父様が何度も「後継者ナッセと子作りして、優秀な遺伝子を増やすのがお前の役目だ」と厳しく言われるようになってから、心の片隅に拒絶反応が生まれていた。それでも父様のために、夕夏(ユウカ)家の優秀な娘として受け入れようと思っていた。

 だが、仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターでの戦いでナッセがチヤホヤされたのをきっかけに、強い拒絶が湧き上がった。

 そしてエレナのウザイまでのナッセへのラブコールで限界を迎えつつあった。


 いつもナッセナッセナッセナッセうるさいっ…………!!



 エレナは「ナッセちゃんのためにっ!」と前蹴りを放つが、レンスは大きな掌でボスンと受け止める。もはや力は残っていない……。


「ぎゃっはっはっは~~~~!! そんなに好きなら、ナッセちゃん寝取ろうかしら?」

「そうそう! ナッセの尻の穴は格別モノでしょうね~~!」

「ナッセちゃんは私たちも好き~~! なんちゃって~~!」ギャハハ!


 レンスは愉悦に醜く歪んだ笑顔で、大きなゴツい拳を振り下ろそうとする。



 ブチン!


 ついにマミエはキレた!

 嵐のような烈風がビュゴッと吹き抜け、バイオとレンスはピクッと竦む。ゴゴゴゴ、地鳴りが大きくなっていく。

 激しく迸る稲光を全身に纏い、マミエの『刻印(エンチャント)』が怒りに燃え上がるように赤く輝く。


「あ、あんたっ!?」

「またメスガキぃ~~?」


 マミエは凄まじい怒りの嵐を放ちながら一歩一歩前進してくる。


「ふっ! ふははははっ! アンタもナッセが大好き系~~?」

「まぁ~た! ナッセちゃん好き好きクソ女登場ってウゼ~!!」


 ハハハハ、バカにするようにバイオとレンスは嘲る。が、マミエはキッと睨む。



「大ッ嫌いだ────ッッ!!!」


 マミエは怒りを爆発させ、合唱!!

 地鳴りが大きくなり、マミエの足元から岩混じりの土砂が高々と起き上がった。それは左右横一直線の津波のような土砂崩れとなって前進を始めた。

 天変地異とも思えるソレに、バイオとレンスは目を丸くして驚愕する。


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!!


 地響きと共に、怒涛(どとう)(おお)(かぶ)さろうとする土砂崩れが、ちっぽけなバイオとレンスに迫る。

 さすがのバイオとレンスはバックステップを繰り返して、必死に逃れようとする。だが押し寄せてくる土砂崩れから岩石がビュンビュン降ってくる。

 それをバイオとレンスは腕を振り回して(しの)ごうとするが、岩石の嵐は執拗に降り続け、徐々に二人を傷付けていく。

 同時に距離を詰めてくる大規模土砂崩れによる圧迫感(プレッシャー)


「くっ! こ、このアマッ……!!」

「な、なんでこんな規格外のメスガキが多いわけッ!? こんなん厄日(やくび)よッッ!!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!! 土砂の濁流(だくりゅう)が容赦なく、二人の足元を(すく)う。


「ぐ、ぐわああぁああぁぁああ!!!」


 圧倒的猛威の土砂崩れが、ついにバイオとレンスを周囲の建造物もろとも、超重量の膨大な量の激流で押し流してしまう。ドドドドド!!

 それからしばらく洪水のように超重量の土砂の激流が、押し潰し引っ掻き回すように広範囲に荒れ狂っていく。巻き込まれたハス太たちも「うわああああ」と次々飲み込まれてゆく……。

 収まる頃、辺り一面は土砂の海で平らになってしまった……。


 血塗(ちまみ)れのバイオとレンスは、半身を土砂に埋めたまま白目で絶命していた。



「ふす────!」


 頬を(ふく)らましたまま、鼻息を吹くマミエ。

 それに呆然とするリョーコとエレナ。


 マミエは、エレナの方へ振り向いて「ナッセ禁止!」と凄む。それに驚き、エレナは「なんでよっ!」と激昂。


「ナッセ大嫌いだから!」

「ナッセ大好きだから!」


 マミエとエレナは「う~~~!」と唸りながら、互いに顔を近づけて火花を散らす。


「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌~い!!」

「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き~!!」


 ポコポコと軽めに拳を振るって殴り合うエレナとマミエ。まるで子供のケンカだ。



「は~~あ! 付き合ってられないわ」


 呆れたリョーコは首を振る。

あとがき雑談w


ヤミロ「あ~逃げたから退屈だぜ……。なぁ『シュプリーム・クリスタル』」

シュプ「クオオ~~ン!!」


 巨大なユニコーンみたいなもので、額の螺旋状のドリルのような角が特徴。胸元に輝くような宝珠が埋め込まれている。

 ヤミロの作り出す『賢者の秘法』を核に生まれる魔獣。空飛べる。

 おもっクソ強い。


ヤミロ「あ、そうそう。例の紹介行くぜ?」


我瑠羅(ガルラ)バイオ(蛮族(バーバリアン))』『我瑠羅(ガルラ)レンス(蛮族(バーバリアン))』

 双子のオネェ。男顔負けの強面で額を縦スジで連なる。金髪で左右を挟むカール。体躯は三メートル級の大男。

 服はインナーワンピのボディコンで、一方が桃色でもう一方が紫色。

 遺伝子を組み替えられた完全な人造人間である。

 バイオはパンダ、レンスは熊に身を変えれる蛮族(バーバリアン)

 威力値50000



 次話『これは反則的! ケン治の秘密!?』

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