52話「無頼漢ダンゴ爆誕!!」
素朴で美人とは言えないが最愛の妻、武劉ミカコ。そして目に入れても痛くない可愛い娘、武劉リササ。
ワシには勿体無いくらい温かい家庭を持って、幸せだ!
玄関前にて、武劉フクダリウスは妻子に見送られていた。
「あなた……。はい、弁当!」
「いつも有難い。ミカコがいてくれて、ワシは安心するわい」
「うふふっ」
微笑む妻。そして小学生のリササが満面の笑顔でフクダリウスに抱きつく。
「パパ!! 今日も勝ってね!」
「はっはっは! 連戦連勝! ワシはママとリササちゃんがいる限り、絶対負けぬぞ!」
「うん! テレビで応援するー!!」
斧を背中に、フクダリウスは笑顔で手を振りながら玄関の扉を開けた。
そう、ワシには帰る家と家族がいるのだ……。
「おおーっと!! な、なんと!? 『無頼漢』チーム全員が融合体して、一つのモンスターとして降臨されました──ッ!!」
黒いサングラスがチャーミングな、全身タイツの実況で、ドッと湧き上がる観客。
「なに……これ……!?」
ナッセ、リョーコ、そしてノーヴェン、ミコト、コマエモンは驚きに呆然としていた。アクトは何故か落ち着いている。『夕夏家第二陣』のメンバーは無表情のまま、立っているだけだ。
ズズズズ……!
煙幕が立ち込める中、巨大なシルエットが蠢く。そして縦に並ぶ三つの双眸がキランと輝く。
全身を支える、四つん這いの毛深い太い手足がついた大きな顔のキンタ。その上にメイプルリーフを模した仮面の大きなフクダリウスの厳つい顔面。更にその上に巨大な両腕を左右から生やすタネ坊の大きな顔。
【無頼漢三団子】
地属性・狂戦士・中級上位種・攻撃力1900/守備力1700
団子のように巨大な顔を三つ連ねている巨大なモンスター。ゴリラのキンタが駆け回り、フクダリウスが威嚇し、タネ坊の太い腕で繰り出す攻撃は脅威だ。気をつけろ!
ドン! 珍妙ながらも三つ連ねた巨大なモンスターが聳えた。
「うほー!! なんか凄ぇ力が溢れるんや!?」
「おうよ! 誰にも負けない気がするぜッ! バーニン、ごおおおお!!」
士気高揚と大きな顔のタネ坊とキンタははっちゃけている。しかし真ん中のフクダリウスは押し黙っていた。
「なんや? もはや最強のモンスターとなってもうたのに、浮かへんな?」
フルフル震え、歯軋りし、顔は激昂に満ちていく。
「ワシは……、ワシは、こんな事で人間を止めたくなかったわッ!! この馬鹿野郎!!」
ビリビリ、一同が竦むほど怒りは激しい。フクダリウスは顔面を真っ赤にしてシワを寄せていた。ゴゴゴ……!
「ちょお……、怒るこたぁないやん?」
「怒るわ!! 流石に限度があるだろう? ワシの生活はどうなる?? こんな姿で家へ帰れるかあッ!」
「まぁまぁ、乗りかかった船。一心同体として生きるしかなかろう。俺は相棒のキンタとフクダリウスと一体化した事が本当にバーニング嬉しいよ」
へへ、と気恥ずかしそうに笑顔を作るタネ坊。
「黙れ小童が!! 全然嬉しくないわ!!!!」
「…………うっほっほ、大丈夫や。ワイかて考えもなく【融合体】使ったりせへん。忘れてるさかい、ここは仮想空間で、ワイらは分身やで? 現実は元の姿のままや」
「そ、そうか?」
「ああ。迷惑をかけてすまない。だが、今は力を貸してくれ……。俺らのバーニング底力をみんなに思い知らせてやろうぜ!」
ついに団結した三人の意思。ズン、と太い足が踏み鳴らして木々を潰し土煙を巻き上げる。
身構えるナッセ、リョーコ、アクト。そしてノーヴェン、ミコト、コマエモン。
三つのチームが雌雄を決するべき、互いに見据え合う。
いずれも強敵……。意を決して、剣を握る拳を眼前にかざす。
「だったら、最初っから全力で勝負だッ!!」
カッと灯る『刻印』の大きな星は太陽にマークの形を変え、それを囲む円に三ツ星が浮かぶ。そして剣は太陽の剣へ巨大化。
「せいやあああああッ!!!」
リョーコはゴウッと昂ぶるオーラを全身に噴き上げた。力強く輝くオーラが唸りを上げる。
アクトは依然余裕で刀を肩に乗せて様子見。
「こっちも全力を尽くしてこの決闘に臨むZE! オレのターン、ドロー!! 手札から【龍を呼ぶ法螺貝】を発動だYO!!」バン!
【龍を呼ぶ法螺貝】
自分で吹いて発動できる。それぞれのプレイヤーは手札・デッキからドラゴン族モンスターを3枚まで選んで自分の場に特殊召喚する。
ミコトは法螺貝を手にして吹く。ブオオオオ~!
するとデッキから三つ流星のような光が飛び出し、宙を翔けた後にミコトの背後へ降り立つ。カガッ!
ユニコーンのような角を持つ真っ白い龍が三体顕現された。ドドーン!
「グオオオオオオ!!!」
【ユニホーン・ホワイトドラゴン】
光属性・ドラゴン族・攻撃力1000000/守備力1000000(カードゲーム用)
美しい角を持つ伝説の白龍。その威光で何者をも恐れさせ、その天轟く破壊光線は全てを滅ぼす。
「……もはやなりふり構わないのですネ。もう何も突っ込みまセーン」観念して首を振る。
ミコトは法螺貝をポイ捨てする。
「【龍を呼ぶ法螺貝】が墓地に送られたので、一枚ドローさせてもらうZO!」
こんな非常事態、ノーヴェンとコマエモンはテキスト外の効果を言い出したミコトにツッコミを入れられない!
《言ったもん勝ちっていうのが、いい加減だね》
ウニャンもヤレヤレと首を振って呆れていた。
「さて、少々拙者も本気出すと行きますかな」
鋭い目線を見せたコマエモンは前屈みに、腰の鞘を手に居合の構えを取る。ザッ!
ノーヴェンはメガネをかけ直しレンズを煌めかす。周囲の無数のメガネをぐるぐると周回。
「メガネビーム斉射!!」
無数のメガネはビビビビッとビームを大量に撃ち出す。屈折しながら無頼漢三団子へ向かう。
「タネ坊! フクダリウス! ワイ行くで!!」
「おう!」
「う、うむ」
四つん這いのキンタは前足を振り上げて、思いっきり地面を叩く。すると周囲に土砂を垂直に噴き上げた。それがビームを阻み、壁を前に爆発の連鎖が巻き起こる。
「おおおッ!!」「せいっ!」
盾を足場に上空から剣で、地上からリョーコが斧を振りかぶって飛びかかる。しかしタネ坊はギロッと大きな目で振り向き、太い手に備えた大きなナイフでそれぞれの一撃を受け止めた。ズン、と衝撃波が広がり地面が陥没。
「強くなったな! ナッセ君にリョーコ君!!」
でかい顔のタネ坊は不敵に笑む。
二本のナイフを振るい、ガギギギギンとオレとリョーコを相手に激しい斬り合いを繰り返す。ついでに背後からのコマエモンの剣戟も捌ききっていく。
「【ユニホーン・ホワイトドラゴン】で総攻撃だZE! ホーリーストォォーム!!!!」
ミコトの攻撃宣言に従って、三体の白龍は口から電撃迸る光線を一斉に吐き出した。
地面を削り、大気を震わせ、一直線に光線が無頼漢三団子へと目指す。
「フクダリウス・ハリケーン!!」
フクダリウスは口から竜巻状の奔流を吐き出し、三つの光線を迎撃。
ドガアァァァッ!!
大爆発が広々と轟き、周囲に烈風を撒き散らす。木々をバサバサ揺らし、岩山がミシミシ軋む。
リョーコは「せいっ!」と右側から、コマエモンも「フッ」と居合い斬りで左側から、キンタの太い足を斬り払う。
「足を狙うの見え見えや~!」
なんと素早く飛び退かれ、空振った斧と刀がぶつかり合い、その余波で周囲の木々をスパパッと斬り散らした。苦い顔を浮かべるリョーコとコマエモン。……速い!
ノーヴェンの目標は三団子、ナッセとリョーコを巻き込んで、全方位からメガネビームが弾幕が覆いかぶさる。
しかしオレは盾で、リョーコは腕を交差して全身オーラでガード、アクトは刀で弾く。無頼漢三団子は土砂の障壁を周囲に発生させて阻む。ドガガガガッ、と爆発の嵐が荒れ狂って広範囲を蹂躙。
ノーヴェンは走り回りながら、浮遊メガネを率いてビームを連発し続ける。それを阻止すべきとオレが飛び込むと、彼は慌てて飛び退く。
「うっとおしいから、先に落とすぞ!!」
「シット!」
こっちはノーヴェンと対峙。しかし割って入るようにキンタの巨大な前足がズンと踏み下ろす。しかし両者共に飛び退いていた。同時にノーヴェンはメガネビームの弾幕をオレに集約。すかさず盾で阻み爆発はそこで連鎖。だが残りのビームが盾を避けて集中砲火。ドドドン!
気配を感じノーヴェンは上を見る。盾を囮に、オレは既に跳躍して剣を振りかぶって急降下だ。
「くっ!」汗を垂らすノーヴェン。
「サンライト・フォォォ──ルッ!!」
流星のように、鋭い光の軌跡が襲い来る最中、ノーヴェンを通り過ぎてコマエモンが飛び出す。
「やらせぬ!! 雷電流居合術、烈閃!」
電撃纏う居合の抜刀とオレの太陽の剣がぶつかり合う!
ガキィィン!
それを狙って、フクダリウスは「ウィンドミル!!」と目から花風車状の散弾を連射。
「ぬ!?」「やべっ!!」
鍔迫り合いしていたコマエモンとオレは反発するように離れ、その間を花風車の散弾が通り抜けた。その流れ弾で向こうの木々が広範囲に渡って斬り散らされていく。ザザザザンッ!
「いっせーの!」
リョーコは激しくオーラを迸らせ飛びかかる。それにタネ坊、フクダリウス、キンタはカッと眼光を見せ、歯を食いしばって強固に踏ん張る。
「クラッシュ・バスタァァーッ!!」
ズドッ!!
轟音と共に地面を揺るがすほどの、渾身の一撃が炸裂!
ズザザザ、三団子は地面を滑って吹っ飛ばされる。が、掠り傷一つ! シュウウ、と煙幕が立ち込める。
硬い! リョーコは汗を垂らす。
「もはや大乱戦!! 『インテリスリー』『無頼漢』『スター新撰組』が入り乱れに、激しい接戦だァ────ッ!!」
オオオオオオオオッ!!!!
燃え上がるような激戦に、興奮した観客は歓声を轟かせた。拳を振り上げて各々、気に入ったチーム名やメンバーの名前を連呼する。
あとがき雑談w
ミコト「オレが闘札王の素晴らしさを教えてやるZE!!」バン!
『闘札王』
とある週間少年雑誌で掲載されたゲームを題材にした漫画に出てきたカードゲームを現実にしたもの。
若干、カードの効果やルールが漫画の中と若干違ったが、それでも人気爆発が起きて世界中にも普及されたカードゲーム。
ただ、初期のカードで最強のモンスターのステータスが既に100万を超えていたため、シリーズを重ねるにつれてインフレしていった。最終的に攻撃力守備力が1000垓までに達した。
召喚士がそのカードを現実の戦闘用に使い始めた。
カードのステータスは適用されないものの、創作士の力量によって強さが変わる設定になった。テキストを信用してはいけない。
たまに言ったもん勝ちで、テキストに書かれてない効果を強引に発動させる召喚士も一定数いる。
100000000000000000000000と攻撃力守備力に長々と書かれてギネス世界記録となった。
【ルール】
ライフは40点。初期の手札は5枚。モンスターゾーンは三つ。魔法罠ゾーンも三つ。
デッキは40枚以上。エクストラデッキは1000枚まで。(多すぎィ)
何故か墓地1と墓地2(除外ゾーン)がある。
ただし対抗カードだけはどのゾーンに当てはまらない。(自分と相手の場の真ん中に1枚のみ置く)
召喚コストはモンスターカードに書いてある通り。
【ゲームの流れ】
①最初に1枚ドロー。
②メインフェイズ1。基本的に手札からカードのプレイを行う。
③バトルフェイズで戦闘。モンスター同士では攻撃力で守備力にアタック。守備側の数値を超えていればそれを破壊。また属性相性によって無条件で破壊できる。
相手モンスターがいない時は直接攻撃となり、攻撃モンスターのレベル数値分だけ相手ライフにダメージを与える。
ちなみにこのフェイズでは、どのプレイヤーも罠や対抗カードを発動できる。
④メインフェイズ2。メインフェイズ1と変わらない。
⑤エンドフェイズ。手札が10枚以上なら、10枚になるように捨てる。(モンスター魔法罠手札がゼロの場合はディスティニードローで5枚引く)
これらが終わったら相手のターンに移る。
⑥以下繰り返しで、相手のライフやデッキをゼロにしたら勝ち。
ミコト「マナーを守って楽しくデュエルだZE!!」ドン!
ナッセ「こういう設定のカードゲームがある世界観って認識でいいぞ」
リョーコ「トーフダって掛け声でデュエルしてるっぽいね。一時期間違われて豆腐が売り切れになる社会現象になったとか?」
ノーヴェン「今では闘札王カードとセットで豆腐が売られてマース!」
豆腐「解せぬ!」
次話『知略でナッセたちチームは大ピンチに!?』





