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51話「カードバトルの応酬!」

 高低差が激しい地形に、無造作に生える森林。そして柱のように、あちこち岩壁を剥き出しに(そび)える岩山。空は白く、霧が立ち込めていて岩山の上方を(かす)かに覆っている。

 神秘的な風景で、仙人がいそうな雰囲気だ。


『スター新撰組』『インテリスリー』『無頼漢』『夕夏(ユウカ)家第二陣』……、四つのチームが、あちこち点在する魔法陣にランダムで現れた。他のチームがどこにいるかは『探知(サーチ)』などでない限り、分からない。




「さぁ! ついに雌雄(しゆう)を決するべき、注目の四チームが仙境(せんきょう)で決戦だ!! 火ぶたを切るのはどのチームだ──ッ!?」

 サングラス全身タイツ男の実況に、歓声が湧き上がる。オオオオ!!


「まずは『インテリスリー』チーム! どう出る?」



 ミコトとコマエモンは、ノーヴェンの方へ顔を向ける。


「今回は強敵ぞろいだZE()?」

「……特にナッセ達が曲者(くせもの)でござるな」

 ノーヴェンは無言で(うなず)く。


 気になるのはナッセ達の動向デス。初日でいきなり自分たちと同じAランク層にまで駆け上がってきましタ。正直言ってはらわた煮えくり返る展開デスが、それだけ彼らは強いというコト。私情をはさんでは勝てまセーン!


「ナッセがエースと見て間違いないデス。恐らくまともに()()えばミーは勝てまセーン」

「うむ」


 コマエモンも、それが的確な分析と(うなず)く。

 接近戦を挑むのは危険だ。(シールド)を応用して、防御だけではなく足場にも使っている。特に空中で方向転換できるのが厄介(やっかい)だ。


「オレのターン! ドローだZE()!!」


 ミコトは五枚の手札を左手に、変な(ディスク)に装着してあるカードの(デッキ)から右手で一枚を抜き取る。

 同時に『探知(サーチ)』を広範囲に広げていく。これこそミコト自身のフィールドである。闘札召喚士(カードサモナー)において、自分のフィールドを広げてカードの効力を適用させるのは定石(じょうせき)だ。


「二枚のカードを場に伏せるZE()!」


 手札から二枚を抜き取り、シュバッと地面に投げつけて地面に溶け込ませた。


「ふむ、様子見という事か」

 コマエモンは静かに(たたず)む。ノーヴェンは冷静な顔で向こうを見据えていた。攻撃するでもなくただ立っているだけだ。

 上空に『衛星(サテライト)』を放って弾幕をばら()いて他のチームをいぶり出せばいいのだが、曲者が相手ではわざわざこっちの場所を知らせるようなもの。力量を見誤れば全滅も有り得る。

 ノーヴェンは緩やかに両手を左右に広げ、『分霊(スクナビコナ)』した無数のメガネを低速でばら()いていく。それらは森林の(しげ)みへと潜り込んで、広範囲を探索させていく。


 ……憎き相手ほど、冷静に処理するのが最適解デース。


「おおっと! これは珍しい!! 『インテリスリー』初めての待ち!」

「ほとんどの試合では、先行して相手チームをいぶり出して罠にはめて徐々に詰んでいく戦略が多かったですが……」

「それだけ『スター新撰組』を警戒してるって事ですねー?」


 どよめく観客。



「さて、『夕夏(ユウカ)家第二陣』はどうでしょうかー?」


 白いフードを身につけた三人組。先頭の一人は少女の顔。後ろの二人は同じ顔をした男。いずれも無機質そうな表情。人形のように微動だにせず突っ立っている。



「と、ともかく『無頼漢』はどうだ!?」


 タネ坊は両手に持つナイフで叩き合う。キーン、と鳴り響く。


「どや?」

 タネ坊とキンタは顔を見合わせ、木々の(しげ)みに潜んでいた。

「…………一番近いチームは『インテリスリー』だな。無数のメガネをばら撒いているようだ」

「以前はばら撒いたメガネの散弾で相手をいぶり出してたやけど」

「さっきの超音波サーチで分かったが、二番目に近いのが例の『スター新撰組』だ。きっとそれを警戒しているんだろう」

「げっ! あいつらも近くやね」

 キンタは青ざめる。


 背後のフクダリウスは「待つのか?」と問う。

「……こちらは待って、ナッセ君とノーヴェン君が潰しあってくれるのが理想の展開だな」

承知(しょうち)した」

 フクダリウスは頷く。


「という訳で俺とキンタで誘導する。ナッセ君達をノーヴェン君達に引き合わせるためにな」

「せや、扇動(せんどう)って言うんやー」


 タネ坊は『潜伏(ハイディング)』を発動し、静かに茂みの隙間をすり抜けていく。それに続くキンタ。フクダリウスは後方で待機。



「『無頼漢』はエースのタネ坊とキンタが先行して、フクダリウスが待機! どうやら近くの『インテリスリー』と『スター新撰組』をぶつけ合う作戦のようですー!」

 くるくると回るサングラス全身タイツ男。


「確かに『無頼漢』チームは『インテリスリー』相手に苦渋(くじゅう)()めてきました。できれば『スター新撰組』をぶつけて消耗させた所をフクダリウスで(たた)()けたい所です」

「上手く扇動できるんでしょうかねー?」

「ミコトのカード次第ですな……」

 おじさんは腕を組んで気難しい顔をする。



(トラップ)カード発動!!」バン!

 ミコトが叫び、腕を横薙ぎに振るう。


 タネ坊とキンタの目の前にカードが起き上がったぞ!


()(うつ)しの三面鏡(さんめんきょう)】写した相手モンスターと同じ強さと能力を持った『分霊(スクナビコナ)』トークンを、写した相手のコントロールで特殊召喚する。



「更に──、続けて二枚目を発動するZE()!!」バン!

 ミコトは(てのひら)を突き出し、地面に隠れていたカードを起こす。


誘導転移(ゆうどうてんい)】対象のモンスターを他の対象のモンスター近くに転移させる。



「一方、『スター新撰組』はまっすぐ『インテリスリー』へ走っている模様!」

「それが妥当(だとう)でしょう。厄介(やっかい)な先行チームが待ちに入った以上、先手必勝で攻め入るのが一番ですね」

「早くも『インテリスリー』と激突か────!?」



 森林を駆け抜けるナッセ、リョーコ。その後を付いていくようにアクトが追従。すると目の前に光が(あふ)れる。

「な!?」

 目の前にタネ坊とキンタが急に現れたのだ。当の二人も戸惑いを隠せない。

 だが、切り替えが速い二人は互い手を叩き合って『連動(リンク)』して気合い漲らせて威圧が爆発的に膨れ上がった。そして襲撃に転じてきたぞ。


「──殺陣進撃ッ!!!」


 手加減は無用とばかりに、殺気立ったタネ坊はナイフを逆手に、キンタはゴリラ化して巨腕を振るう。

 しかしオレは「おおお!」と、リョーコは「せいっ!」と気合を発する。

 襲いくるタネ坊とドラゴリラの嵐のような猛攻を、オレとリョーコは捌いていく!


 ガガッガガガガッガガガッガガガガッガガガガッ!!


 いずれもあらゆる急所を的確に射抜くかのような鋭い軌跡! こっちも的確に弾ききって捌いていくぞ!

 ゴリラ化したキンタの剛腕で繰り出す猛攻を、リョーコは斧で激しく弾いている!


「そこッ!!」「せいやッ!!」


 オレは横薙ぎ一閃でタネ坊の振るうナイフを砕き、返す剣で胴体に強烈な一撃!

 リョーコの振り下ろされた斧がキンタの肩から股まで垂直に裂く。

「がッ!?」「ぐああっ!」

 あっという間にタネ坊とキンタは胴体を真っ二つに裂かれた。


 リョーコと一緒に足を止め、背後で光の爆発が二つ轟く。ドドン!



「な、な、なんとぉ────!? 『スター新撰組』へ奇襲を仕掛けるも撃退されました──!!」

 オオオオオオオ!!! 歓声が沸く。


「やっぱりナッセたちは強い!!」

「ですねー! でも……」



「……棺桶化しないぞ?」

「あら?」

 振り向いたオレとリョーコは怪訝に(まゆ)(ひそ)める。光の爆発が収まった後に何もない。

 後で着地したアクトも怪訝(けげん)な顔をしていた。


 チーム個室のモニターの前でウニャンは尻尾をふりふりする。

「カードの効果で、相手チームを『分霊(スクナビコナ)』させて時空間転移。ミコトという召喚士(サモナー)……、(あなど)れないね」



「ミコト殿、どうでござるか?」

「やっぱり強いZE()……。先行しなかったのは正解だったNA()

 自信満々の決め顔を保っているものの、やや強張(こわば)っている。

「うむ。ナッセ達をコピーしないのも正解でござったな」


 ノーヴェンはピクッと眉を跳ねる。

 ミコトの【生き写しの三面鏡】によって生まれた『分霊(スクナビコナ)』トークンは味方になりまセン。あくまで対戦相手の分身。故に間違えれば悪手(あくしゅ)になりかねまセーン!

 だからこそ、相手の力量を測りやすいタネ坊とキンタを対象にしましタ。しかし、やはり想像以上に強いデス…………。



「ぐっ!!?」「うひっ!」

 タネ坊とキンタは見えない壁にぶつかったように後ろへ()()る。

 しばし沈黙。頭に片手であてがう。ナッセとリョーコに瞬殺された記憶が浮かぶ。


 ちっ! ミコトの(トラップ)カードにはめられたか……!?


「どうした? 足が止まったようだが?」

 心配してかフクダリウスが(しげ)みをかき分けて歩み寄る。タネ坊は冷や汗をかき、神妙な表情を見せる。


「……扇動(せんどう)は中止だ。ミコトのカードで生まれた俺とキンタの分身をナッセ君達に()られた」

「せや、『連動(リンク)』したのに負けるとかありえへんわ~~!」

 不意打ち気味の最強最速の殺陣進撃を、ナッセとリョーコは通常攻撃で打ち破った。一体、数日間に何が起きたか分からないが、このレベルアップは異常だ。


「恐らく、少なく見積もってもマイシと同等と見ていい」

「な? 嘘やろ!?」

 キンタは目を丸くする。

「ナッセ君にマイシが宣戦布告した約束の五日目はとうに過ぎている。恐らく二人は対決した。ナッセ君が生き残っているという事は勝ったか……?」

 キンタは「ううっ……」とおののく。フクダリウスも深刻そうに目を瞑って黙る。


 逆に考えれば先行投資。むしろチャンスを得た。もし普通に作戦実行していたら()られていた。


()むを()ん!! 出し惜しみはナシだ!! キンタ!」

「…………せやな! 行くで!」

 ギラリと二人に戦慄(せんりつ)の眼光が灯る。キンタの手にはカードが! ドン!


融合体(ゆうごったい)】自分、味方モンスター2体以上を融合させ、融合モンスター1体を誕生させる。元に戻れない。


「ち、ちょっと待て……! 何だ? そのテキスト!?」

 嫌な予感がして、青ざめるフクダリウス。


「ワイとタネ坊とフクダリウスを素材に【融合体(ゆうごったい)】発動や~~ッ!!」


 お構いなくキンタはカードを(かか)げ、それは輝き出す。


「お、おいっ! 早まるな! ま、待てっ……、ぐわあああぁぁぁぁ……」

 制止も虚しくフクダリウスを巻き込んで、タネ坊とキンタと一緒に渦巻き状に凝縮されていった。そして閃光が放射状に溢れる。カッ!



 ドクン! ミコトは絶句。

「『無頼漢』が【融合体(ゆうごったい)】カードを発動したようだZE()!?」

「むう……!」

 険しい顔で頬に汗を垂らすコマエモン。そしてノーヴェンは目を細めた。


 ゴゴゴゴ……! フィールド上を地響きが支配する!

 大気を震わせ、威圧が膨れ上がっていく。その戦慄(せんりつ)にナッセ達も戦々恐々(せんせんきょうきょう)と汗を垂らす。

あとがき雑談w


ウニャン(タネ坊&キンタの3000~4000程度じゃ、ナッセとリョーコそれぞれの25000越えには勝てないよね)


タネ坊「……それは納得がいかないな!」

キンタ「せや! 日々修練を重ねているのに!」

ウニャン「あ、そうだったね。レベル上限について説明しておこうか」


タネ坊&キンタ「え?」


『レベル上限』

 簡単に言うと、強くなっていけるレベルの上昇限界。可能性の限界とも言う。

 もちろんレベルが高いほど強く、低いほど弱く、これは基本だね。


 厳密に言えば、本当の意味でのレベル上限は存在しない。


 誰だって経験を積んでいけば、どこまでもレベルは上がっていく。それこそ無限とも言える。

 だが、レベルが高いほど必要経験値は多くなっていく。

 それは個人差で差異は生じてしまう。つまり一つレベルを上げるまでに必要とする経験値が途方もなく多いと、それに比例して上がりにくくなる。


タネ坊「な、なんだって!?」ドクン!

キンタ「嘘やろ!?」ドクン!


ウニャン「一つレベルを上げるまで5年以上かかる場合にレベル上限が認定されるらしいね」


 創作士(クリエイター)センターで精密検査した結果、タネ坊は次にレベルを上げるまでの経験値は、毎日一日中修行またはモンスターを倒し続けて7年くらいの量。キンタは6年4ヶ月となったようだ。

 ようやく1つ上げても今度は10年越えってのも珍しくないらしい。


ウニャン「原因としては才能と加齢かな? この辺がキミたちの限界って事だね」

タネ坊「そんな数値は間違いだー!!」

キンタ「絶対検査の故障やぁぁぁあ!!」


ウニャン「……精密検査の結果は信じて欲しいかな」(汗)


 ちなみにレベル上限を伸ばす(必要経験値を減らす)方法は、実はいくつか存在している。

 ただし、何らかのリスクやデメリットを背負うのもある。諦めて余生を静かに過ごすのもよし、方法を見つけて可能性を広げる努力をするのもよしだ。


●死んで転生する。

●誓約と制約の儀式を行う。

●魔獣王や妖精王など種族値が高い上位生命体になる。

●邪悪なフォース『闇の重圧ダークネス・プレッシャー』から生き延びる。

●トラウマ級の悲劇を乗り越える。

●前世の記憶を取り戻す。

 ……他にも方法は存在しているらしい?



 次話『融合モンスター?の登場!? その強さとは!?』

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