160話「制約と誓約の儀式! 血戒の魔石版」
コウモリやワイバーンの骨格をした刻印獣が滑空して機密要塞へなだれ込もうとしている。
しかしヒーロー、ヴィラン、創作士、ミニシュパによる混合射撃で次々迎撃していく。それでも刻印獣は物量に任せて絨毯爆撃を展開。
グレンの遺跡で射線を多少遮っているものの、炸裂する凶悪な爆炎は多くの犠牲者を出していく。
それでも負けじと応戦して、交互に射撃が飛び交う。
ドオオッ! ドガッドガアッ! ズガアァッ! ドーン!!
「かああああああッ!!」
マイシは竜のオーラを纏ったその両翼で飛び立ち、思いっきり空の大群を突き抜けるように『炸裂剣』で、爆発の連鎖を重ねていく。
勢いのままにズドドドドドドドドと一直線に大群を引き裂いていった。
ケン治は万歳するように両手を掲げて、指それぞれからビームを斉射して空の刻印獣を撃ち落としていく。反撃の対地攻撃が降り注いでくるが、当たっても平然だ。
「ほっほっほ! この帝王には効きませんよ」
フードをかぶった得体の知れない創作士へ、リザードマンの骨格をした刻印獣が数人囲んでくる。
クワーッと牙と爪でフードを裂かんとする瞬間、水の渦が溢れ出して弾いてしまう。なんとフードの創作士を守るように水の渦が阻み、あちこちから水鉄砲のように噴出した激流で刻印獣を打ち砕く。
「ね、姉さんのように戦うんだっ!!」
それは女の声だった。まだ幼い感じだ。
フードの後ろからゼリーのような透明感のある尻尾がぬるりと生える。しかし不意に空からの爆撃で容赦なく爆発にまみれてしまう。
しかしフードが粉々に焼き切られただけで、中の人は無傷だった。
青髪のショートで中学生頃の幼さを残す少女。手には刀が握られている。そして全身をゼリーのような水の衣で覆っていて、頭上からは竜の角を象っている。
「ほう? しかしどこか面影が見えますね……」
ケン治は怪訝に眉を潜める。
健気な性格のせいで分かりにくいが、目付きとか顔立ちとか誰かに似ている気がした。ゼリーの竜を象る角でハッと気付いた。
「そうか!! あのチビはマイシの……!? 血縁……、そうだな妹か!?」
「姉さんの知り合い?」
「……今は味方ですがね。というか誰ですか?」
睨んでくる顔からマイシを彷彿させる雰囲気が窺えた。
「私は龍史ナガレだよっ!」
「誓約……? まさか!?」
フクダリウスは片手間のように斧のひと振りで刻印獣を斬り散らしながら、タネ坊とキンタに見やる。
タネ坊の握る二刀流の夫婦ナイフが刻印獣を細切れに、キンタもゴリラに変形した豪腕で大型を打ち砕く。
「せや……」
「……ああ…………」
フクダリウスに聞かれ、歯切れが悪そうにタネ坊とキンタは浮かない顔を見せる。やがてその口から語られていく────……。
創作士センターの中には、とある『儀式場』と呼ばれる施設がある。
むろん、この最高機密要塞にもある。その部屋には特殊な石板が設置されていた。
『血戒の魔石板』
創作士が自らに「制約」と「誓約」を課して力を得る魔法の石板だ。
これも遥かな古代より伝わってきた謎の石板である。これにより、絶大な力を得た創作士を輩出してきた────。
と、同時に自殺率も高い曰く付きでもあった。
話は一刻ほど前に遡る。グレンの部屋。
「どの並行世界でも俺様より先にくたばりやがって! この馬鹿野郎がぁッッ!!」
怒りのままにグレンはタネ坊をバキッと殴る。
吹っ飛んだタネ坊をキンタが受け止め、一緒に壁へ叩きつけられた。ドシャッと剥がれた壁の破片と共に二人は呻きながら床に横たわる。
「う……」「ぐうっ」
恐ろしげな形相のグレンが一歩一歩近づいてくる。
タネ坊とキンタは戦々恐々と震える。しかし、ガバッとグレンはタネ坊とキンタを抱擁した。父親として愛する息子を抱きしめるかのように……。
「今回こそ死んでくれるなよ……! 絶対にな!」
グレンは涙を流していた。そしてその暖かい温もりに、呆然としたタネ坊とキンタは次第に感涙していく。
だからこそ、この戦争で足手まといになるワケにはいかない! そして生き延びなければならない!
……そう固く決意させられた。
タネ坊とキンタはとある儀式場の部屋へ入っていた。ヒーロー側の許可も取っている。
雰囲気に沿ってか薄暗く、中心に祭壇があって半透明の石板が立っている。そこにライトが当てられていた。真剣な面持ちでゆっくり二人で歩む。
石板には何も書かれていなかった。だが!
《ヌシは何を課す? 己に課した条件次第で望みの力をもたらしてくれよう》
まるでモニターに文字が打ち込まれたかのように、メッセージが流れて浮かんできた。
ゴクッと息を呑む。
《ただし、くれぐれも生半可な覚悟で課さない事だ。課したが最後、二度と取り消す事は叶わぬ。それを望みたくなくば早々に立ち去るがよい》
……自殺率が高い理由はそこにある。
人は覚悟を決めるが、その場で本気で誓っていてもいずれは薄れていく。その時に深い後悔に苛まされる。人間とて永遠に同じ気持ちを保ち続けるのは至難の業だからだ。
これまで誓ってきた創作士たちの犠牲によって、その厳しさを物語っていた。
それ故に絶大な力をもたらしてくれる。
それこそが真の意味での「制約」と「誓約」だ。
この石版は不思議なモノで、世界のルールと繋がっている。個人で課した「制約」と「誓約」が世界のルールとして適用されるのだ。
例えば「強力な能力を発動している間、急速に自分の寿命が縮む」という神かがったルールも現実にできる。
しかし、それを悪用しての他人に重い「制約」と「誓約」を押し付けたり強要したりなどは許されていない。あくまで自分自身が心底望んでいる時のみだ。
それを破ろうとする不届き者には逆に重いルールを課されてしまう。
とある昔に奴隷にそれを強要した愚か者が、呪いにも等しいルールを課されて死よりも苦しい人生に苛まされたという……。
それだけ厳粛な儀式場でもあるのだ。
タネ坊とキンタは互いに半顔で見合わせ、頷く。
「ドラゴリラ! 俺はお前の全てが好きだ! 愛してる!」
「ワイもや! この世でオカマサ以外あらへんくらい愛してるんや!」
別れを惜しむような儚げな顔で、ゆっくり抱きしめ合う。
絡み合うようにイチャイチャと互いの温もりを堪能し、何度かキスし合った。そして抱き合っていた胴体から腕が離れていく……。
意を決した二人は石板へ向き直った。
「俺たちは……、今後同性愛をしない!」
「ワイらは……、もう同性恋愛はしないんや!」
「その代わり、俺たちの潜在力を限界以上にまで引きだしてくれ!!」
するとボイスメモのように石板に二人の名前とそのルールが赤い文字で刻まれた。しばしして薄っすら消えていく………。
《その覚悟の分だけ、ヌシの望みを叶えよう……》
「本気かッ!?」
それを聞いて、フクダリウスは驚愕と目を丸くした。
タネ坊とキンタはコクリと頷く。背後から襲いくる刻印獣にナイフを突き立て、ゴリラの拳が打ち砕く。バガァン!
「……後に死ぬほど後悔するかもしれない。だが腹は括った!」
「せや! ワイかて本気だったやから、それ捨てるんや断腸の思いやわ」
────男性同性愛。
タネ坊ことオカマサとキンタことドラゴリラはまさに同性愛者だった。
何も知らぬ人が聞けば、その理解は難しいだろう。
だが、男女が恋愛するのと変わらない情緒だ。異性か同性か違いがあるだけで、愛する気持ちは何らも変わらない。
「例えれば、ナッセとヤマミが恋愛を諦めるようなものか!」
「ああ……」「せや……」
フクダリウスは「ううっ……」と汗たらたらに呻いた。
軽率な人が聞けばホモ野郎と蔑み、下らない「誓約」だと一笑に伏すだろう。
だがタネ坊とキンタはずっと前から、ナッセとヤマミ以上に恋愛をしてきた。それこそ男女カップルがやるであろう事は全部やっている。
手を握ったり、キスしたり、抱き合ったり色々……。
それを世界のルールで排除するという事は、今後できなくなるという事…………!
「本当を言うと結婚までいきたかったよ」「ワイもな」
「…………何故ワシに相談しなかった? それでいいのかッ!?」
二人は揃って首を振る。
「俺たちで決めたんだ! 後悔はない!」
ギラリと二人は決意の眼差しを見せた。
むしろフクダリウスの方が苦悩に満ちた顔をしている。今後死ぬほど後悔しても取り消す事はもうできないのだ。
例えるなら、ナッセとヤマミが結婚して家族を築いていくこれからの未来を「誓約」一つで消滅させてしまう事にも等しい。
だが二人は清々した笑みを見せた。
「それ以前にワイらはナッセの奥義で敗れ、命を救われたんや。更にモンスター化も浄化してもらった。それだけの事をしてもらっただけでも感謝してもしきれへん」
「そういう事だ……。俺たちは既に極刑されても仕方ないほど重い罪を犯している。これくらいなんでもない」
取り消す事もないほどに二人の覚悟は固い。
フクダリウスは察して「分かった……」と目を瞑って首を振る。
吹っ切れたのか、タネ坊とキンタは颯爽と大地を蹴った。
「ナッセたちの未来を繋げて行くためにもッ」
「先輩のワイらが身を扮して、この戦争と大災厄に立ち向かうんや──ッ!!」
彼ら二人は熱血と全身からエーテルを激しく燃え上がらせ、手を叩き合う。更に増大したエーテルを噴き上げて獅子奮迅と数十体の刻印獣を一掃していく。
それを見届けてフクダリウスは満足そうに口角を上げた。フッ!
「ぬうおおおおおッ!!! 『無頼漢』チーム完全復活だぁッ!!」
この喜びを体現するかのように、フクダリウスの筋肉が更に膨れ上がり、大地を揺るがすほど凄まじいオーラを噴き上げていく。
もう止められない! タネ坊、キンタ、フクダリウスの猛攻が爆発だ!!
嵐が吹き荒ぶように数百数千と刻印獣が粉々と宙を舞っていく!
あとがき雑談w
タネ坊とキンタが「同性恋愛」をしないという厳しい誓約をする事で、限界を超えた力を得たと聞いて……。
ナッセ「おいおい、マジでそういう『誓約』したのかぞ?」
リョーコ「ってか同性愛できないってだけで、普通の恋愛できるんじゃん!」
フクダリウス「ならば同性と恋愛できるのか? ナッセならアクトと、リョーコならマミエと」
想像したらオゲェーと顔面真っ青で吐く仕草するナッセ。
リョーコも「うーん、それはないわね」と首を振る。
フクダリウス「それと同じ事がタネ坊とキンタにあるのだ。彼らは異性に恋愛はできん。ふざけて同性恋愛しているのとは違うぞ」
ナッセ&リョーコ「わ、分かった……」「悪かったわ」
するとスミレがニッコニコでリョーコの背中からぬるりと抱きつく。ゾワワとリョーコに寒気が走った。
リョーコ「その気はないから! そういう気はないから~~!」
スミレ「え~! でもその気にしてア・ゲ・ル~w」(百合全開~w)
リョーコ「ぎょえ~~! やめてぇぇぇ~~~~!!」
スミレの色っぽい流し目と唇。艶かしい愛撫。悶えるリョーコ。
目のやり場に困るのでナッセとフクダリウスは赤面しながら、立ち去ろうとする。
リョーコ「置いてかないでぇぇぇぇぇ~~~~!!!」
リョーコは犠牲になったのだ……。百合の犠牲にな……。
次話『ついに「いれかえ」で七皇刃の出番が!?』





