156話「チート魔導装置『次元扉』! 最後の砦!」
最高機密要塞から世界の中枢へ移動して『森羅万象の円盤』の所まで来た。
そこでウニャンによってコハク、モリッカ、フクダリウス、スミレ、エレナ、ノーヴェン、コマエモン、ミコト、リョーコはナッセとヤマミ同様に複数の並行世界で共通する記憶がインプットされた。
憂う顔で涙を流すリョーコ。神妙なスミレ。相変わらず陽気なモリッカなど、それぞれ反応が見受けられた。
「だ……大丈夫なのかぞ?」
「混雑とした記憶ァ……落ち着けば、頭ァスッキリしてくるぜ。そして……」
アクトはあらぬ方向へ見やる。
床が震え、凄まじい威圧が膨れ上がていく。
「ぬおおおおおおおッ!!」
フクダリウスが膨大なオーラを轟々と噴き上げていた。これまでにない凄まじい激流。まるでマイシにも劣らぬ圧倒的パワーだ。
しかも魔法専門だったはずのノーヴェンもオーラを纏っていた。ズズ……!
《経験やスキルなど、併合されてパワーアップ現象が起こる事があるんだ》
「うむ。我々も数日に渡る頭痛の後にパワーアップした」
分かってたかのようにウニャンとアメリカジェネラルは付け足してきた。
そりゃそうか……。オレもヤマミも多くの経験やスキルを得て、こうしてこの世界に来たんだよな。それと同じ事が起きても不思議じゃないなぞ。
併合っても流石に単純な足し算じゃないけど、このパワーアップは大きい。
「こりゃあヤミザキにも勝てそうだぞ」
「うん」
ヤマミも柔らかい笑みを見せている。
オレたち二人だけじゃないんだ……。みんなも同じになったんだ…………。
思わずガッツポーズと拳を握り上げる。
《急かして申し訳ないけど、ヤミザキが狙うであろう装置の事も説明しないとね》
ウニャンはアメリカジェネラルと一緒に、床の先の光の道の上に立っていた。オレたちは乗ればいいんだなと足を歩む。全員揃って道の上に立った時、アメリカジェネラルは告げた。
「道よ! 『次元扉』へ!」
道はその声に反応し、オレたちを足元から光の膜で覆う。そして道をレールとして高速で移動し始めた。ほぼ直線が多いが屈折するたびにカクカクと移動方向が曲がっていく。
新幹線に乗ったかのように、周りの景色が高速で後ろへと流れていくのを見て呆気に取られた。
「い、行き止まりだ────ッ!?」
リョーコの叫びに「うわわっ!」と慌てた。
それはそのはず、続いていた道の先は丸い円で終わっていた。それでもこっちは止まらない。
焦ったリョーコが後ろへ走り出す。しかしオレが突っ立っている側で、リョーコはその場で必死に走ってるだけだった。
怪訝そうにフクダリウスは歩き出してみる。やはりその場で歩く仕草しているだけのように見えた。
……位置が固定された!?
「うわー! ここから出られないよー! やっばぁー!」
「助けてー!! ダーリーン!」
エレナはこちらへ飛びつこうとするが、ピョンピョンその場でジャンプするだけだ。
ヤマミもオレも焦りを募らすが、円に着くや否や光柱を伸ばして急上昇。上の円に移動すると再び続く道を走り始めた。
「ふう……」
「なるほど……。円は上下移動する為のモノか」
フクダリウスは一息ついて納得したようだ。
「もー! 脅かさないでよー!」「早く言ってーッ!!」
「も、申し訳ない。事前に説明しておくべきだった……」
プンプンなリョーコとエレナに、アメリカジェネラルも汗を垂らす。
スイスイと電子回路のような道を高速で移動し、行き止まりの円に来ると上か下へ縦移動して、再び道を進む。その繰り返しが続いていた。
「これは機械ではない……デスネ」
「ああ。機械文明とは違い、魔導文明らしい。魔法で導く文明という意味でそういう呼称になっている」
「僕の世界も魔導文明です。鉄や電気ではなく、自然霊や魔法力を使って人類に恩恵をもたらすものです」キリッ!
今度はコハクが説明。さすが元異世界人だけあって詳しいなぞ。
そうこうしている内に、ドンブリ型の巨大な浮遊物と地球儀みたいなのが見えてきた。
地球儀みたいに方眼線の走った球体。それを左右から挟むアーチを太い柱が支えて床と繋いでいた。その広大な床にもやはり魔法陣が煌めいている。
そこへオレたちは運ばれていった……。
終点となる円に着くと、自由に動けるようになってホッとした。
「……扉? どう見ても地球儀……」
「えー? 扉っていうかタマタマじゃないのー!!」
リョーコが割って入るようにリアクションしてくれる。
「こう見えても大掛かりにワープできる装置らしい。試した事はないが……」
てっきり大きな扉かなと想像してたぞ……。
《そう。これが『次元扉』さ。任意のモノを任意の場所へ転移させる時空間魔導装置。それは異世界にも渡れるほどだね。ワタシが異世界から大阪まで繋げた時空間魔法と同じレベルだよ》
「師匠と同じ……? そんなに凄いのかぞ……??」
「ナッセ。私も時空間魔法使えるけど、地球から異世界への移動はとても無理。それほど間の空間は遠く底知れない隔てりなの。それを繋げるのは相当なレベルよ……」
ヤマミのその迫真な言葉に思わず息を飲んだ。
「はは……。そりゃヤミザキにとって喉から手が出るほど欲しいだろうぞ」
「ええ」
「どういう事?」
リョーコが怪訝に眉をひそめて首を傾げる。
「大勢で自由自在にどこでも移転できるなら、洗脳した日本人全員で異世界でもどこにでも攻められるだろ?」
「ヤバない……!」
「充分ヤバイぞ!!」
「この魔導装置は要塞のコアから召喚すれば、地上のどこにでも設置できる」
アメリカジェネラルの言葉にオレたちは目を丸くして、その利便性に驚かされた。
わざわざここに来なくても、地上でワープ装置を設置して大勢の人を転移させる事も自由自在だ。ウニャンの言ってたように宇宙や異世界へ遠征できるのなら、とてつもない武器になる。
もしかしたら滅亡兵器などヤバい兵器を送って、敵国をダイレクトで滅ぼす事も可能なのだろう。
悪用されたらと思うと、思わず身震いする。ゾクッ!
「いざとなれば壊す事はできるのかし?」
「……残念な事に復元されるシステムだ。履歴データによると、歴史上に幾度なく壊されたらしいが無駄だったようだ……」
「ち……! 勝つしかないって事かし」
「そういうことだ。だからこそ事前に知っておいて欲しかったのだ」
ヒエッと青ざめた。
これでは敵に奪われないよう破壊する最後の手段は使えない。つまり負ければそのままヤミザキの手に入ってしまう。
そう、オレたちの負けがそのまま、異世界への侵略を許す事になる。かなり責任重大だ。
「な、なんでこういう作りにしちゃったんだぞ?」
《と言うよりも、世界の概念そのものだからね。なにしろ世界の中枢になっているんだ。ブラヴァツキーはそれを『賢者の秘法』を介して地球側で視覚化して操作可能にしてるだけだよ》
あくまでこの現世に具現化されているだけで、元々は精神世界か量子世界に存在する概念って事かぞ?
つまり世界が存在している限り、これらのシステムは永久に存在するって事か?
オレは頭良くないけど、なんとなく分かる気がする。
「じゃあその『賢者の秘法』とやらを壊せばいいんじゃないのかし?」
マイシの視線を追いかけると、方眼線が走った球体の中心に純白に輝く宝珠が見えた。ここにも二個目が……!?
《それを壊したぐらいで、このシステムを地球から引き剥がす事は出来ないかな》
「ち……」
「おいおい、壊れたら具現化ァ……できねーんじゃないのかァ?」
ズイ、とアクトが刀を肩に乗せて一歩出る。
《もちろん『賢者の秘法』も復元されるだけの話だよ》
「やっぱダメかァ……!」
誰もが絶句する。事の重大さを改めて思い知ったのだ。
ウニャンはピョンとヤマミの肩へ飛び乗る。
《これも人類が犯した業というヤツだね》
「だからこの要塞が作られたんだ。ここは我々人類最後の砦とも言える。なんとしても守らねばならん!」
アメリカジェネラルは覚悟を胸に真剣な顔でそう言い放った。
思わず息を飲み込む。責任か重圧か、体が震える。するとヤマミが優しく肩に手を置いてくる。彼女を見るとコクリと頷いてくる。
ヤマミも一緒だ。ヤミザキに敗れれば彼女もまた終わる。そこに『赤い刻印』の有る無しは関係ない。
────いや! ヤマミはオレが死なせねェ!!
「そうだな! なんとしてもここは死守しないとな!!」
「おう!」
「ええ!」
「イエス……!」
「そうこなくては!」
「そうだァ! 腹ァ……くくらねェとなァ……!」
覚悟の言葉に、生徒たちの面々も次々と応えてくれる。ヨネ校長も微笑む。
するとリョーコが真剣な顔で歩み寄る。
「あたしは絶対に死なないからね!」
頼もしい笑みを見せて、オレの胸に拳をドンと置く。
彼女もインプットで自分が死ぬ並行世界の記憶も知った。それ故の言葉かも知れない。前の前世でオレも彼女の死を看取った……。この悲しい思いは二度とゴメンだ。
それはリョーコも同じなのかもしれない。
「ナッセ覚悟しろし! こうなったら一蓮托生だし!」
「ああ! マイシこそ死ぬなよ!」
ライバルであるマイシもフッと笑う。
「へっ! 大きなお世話っしょ!」
火ぃ付いちまったぜ! こうなりゃ生きるも死ぬも、みんな一緒だ!
ヤミザキがどう出るか分からない、けどどんな手で攻めてこようがオレたちは……!
「絶対に勝つぞォォォォォ────ッ!!!」
「おおおおおおおおおおおおッ!!!
響き渡る気合いの咆哮で、オレたちは一斉に荒ぶるオーラを発する。ビリビリ大気が震えていくと共に、相互干渉で増強したオーラが怒涛と天高く噴き上げていった。
その振動は地上にまで響き渡るほどのものだった……。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!!
「日本でも頼もしい仲間を持ったな……。ニンジャ・ナッセよ」
アメリカジェネラルは快い笑みを見せた。
あとがき雑談w
ブラヴァツキー「やーはろはろー! うっかり地球に恐ろしいモン定着させゃった魔女でーすい!」
なんとロリだ! ロリが来た!!
ふよふよ浮いている三日月に乗っている、パジャマ姿の魔女が来ちゃった!
パジャマは星型のネオンに光るパーカーみたいな感じで、お揃いの模様の三角帽子もチャームポイント!
黒髪ロングでまんまるい無垢な目。虹彩の下の方でハートマークっぽいのが入っている。八重歯も加わって可愛さパワーアップ!
ウニャン「その年頃が気に入ったのかな? 本当はもっと思慮深くて年う……」
ブラヴァツキー「だめだめー! 幼くてKAWIIミーちゃんがモノホンでーすい!」
ウニャン「これで地球代表の魔女としてでいいのかな……?」(不安)
ブラヴァツキー「イーエス!! それでよろよろー!」
可愛くぶりっ子っぽくピースサインを見せてくる。ブイッ!
ブラヴァツキー「生前ねー、色々あって溜めてたから、今ははっちゃけて素のミーちゃん出しちゃってるワーケねw」
ウニャン「それはともかく、彼女もまた『賢者の秘法』を会得せし偉大な魔女だよ」
ブラヴァツキー「次にねー、ミーちゃん出てくるから楽しみにしてーてー!」
ウニャン「ちょっ! それダメー!!」(大慌)
次話『ヤミザキついに復活!! 恐るべき手段でアメリカへ大侵攻!』





