126話「追憶! 地竜王グレン降臨!!」
「まだまだぞッ!!」
息を切らし、汗を流し、真剣な眼差しで短剣の切っ先から手裏剣を生み出す。
これが新たに『刻印』で構築した仕様。
短剣の先っぽに星型手裏剣を発生させて、パイプ風車みたいなのになるぞ。
「おおおおッ!!!」
握る両手に力を込め、螺旋描くオーラを纏った星型手裏剣が高速回転を始めた。
ブイーンと振動音と共に回転する刃が半透明の円を描き、オーラの旋風が拡大化されていく。やがて余波として凄まじく旋風が勢いを増し、周囲にも吹き荒れていく。
ヤマミは腕で顔をかばい、それを見守る。
そのまま突進して大岩へ星型手裏剣を押し付け、砂塵を噴き上げて削り続けていった。
ズギャガガガガガガ!!!
強い振動で短剣がブレてしまわないよう、懸命に握って堪える。
だが耐えきれず旋風がパァンッと破裂。それに弾かれるように吹っ飛ばされ、ドスンと尻餅をつく。
「くそぉ……!」
痛む尻をさすり息を切らしていると、視界の隅でヤマミが歩いてくるのが見えた。
「大丈夫?」
「……ありがと。イイ線はいってると思うけど、なんかこう後一歩足りない気がするぞ」
近付いたヤマミがしゃがみこんで、こっちの手を拾い上げて眺めてくる。
マメが潰れて血塗れ。ゴツゴツと硬質化した皮膚が目立つ。暖かい光が包む。ヤマミが回復魔法をかけてくれたぞ。ホッとする暖かさだ。
「毎日、そんな無茶な特訓してて……、でも言い出したら止めないでしょ」
「うん」
「全く!」
ため息をついて呆れられる。なんだか苦笑いしてしまう。
でもヤマミを見ていると、相変わらず綺麗な顔で愛しい気持ちが湧いてくるぞ。
「……もう三ヶ月かぁ」
「最初は数十センチの小さい窪みだったのにね」
ヤマミは大岩の方へ見やる、その視線を追いかける。
五メートル級の大岩に大きく穿たれた螺旋状のクレーター。深さはゆうに一メートル超えていた。
毎日抉り続けて積み重なったものではない。今回で一発試した威力の結果がこれだ。
周囲を見渡せば、大小に窪んだ大岩が並んでいる。
「風穴開けるぐらいにならないと!」
ぐう、と悔しみが込み上げる。
ヤマミは「もう充分じゃない?」って言ってくれるけど、まだ何か足りないもどかしさがあるぞ……。
しかし彼女も彼女で何か思いつめた感じで、フラッといなくなってる事があるんだよな。
帰ってきたら即シャワー浴びてる。何してんのかな?
「まだやるのね!」
「ああ! 星獣相手には全然だろうし、せめて大型ヴィランを粉砕できるくらいに!」
「はい! 弁当持ってきたから、一休み!」
ドン、と大きいカゴが目の前に置かれた。
こっちがムキになっていると、決まって挟み込んでくるぞ。長く暮らしてたらそりゃ分かるか。
サンドイッチカゴのフタを開けると、美味しそうな匂いが鼻に漂う。
白いサンドイッチにウィンナーとレタスとトマト。スライスされたゆで卵や唐揚げもある。
歯応えがシャキシャキしてて味も染み渡るように美味しい。
「更に美味しくなってる!」
「ふふ! 頑張ってるの私もだからね!」
はにかんだ素敵な笑顔が眩しいぞ……。ドキドキ!
────人気のないはずの工場の廃墟。錆やコケで薄汚れたボロボロの屋根、壁、階段。所々穴ぼこだらけ。
「ウグゥ……ウウ……ガァァァ…………!」
頭痛がするのか、額を握る勢いで震える手で押さえていた。表情は苦痛に歪み、ヨダレが垂れる。
地面に両膝をつき、ハァハァ息を切らす。
それを嬉々と眺める男がいた。
「カカカッ! ボクとしては君が憧れでね、ドラゴンが似合うよね~~?
だから是非『種』を受け取って……。あ、もう受け取ってたね~~!」
「グ…………、てめぇ……!」
苦しみながらも意気込む男はワイルドな雰囲気で乱れた黒髪。黒いカッターシャツの上にトレンチコートを着込んだ長身のやや美形のオッサン。
そしてそれを見守る男は奇術師のような風貌で、ニヤニヤした薄気味悪い笑みを浮かべていた。
「さてさて~、トビーが良い事教えてあげましょう~! グレン・ブレイズ君」
クネクネふざけた態度で、トビーはグレンの顔に近づけるよう体を傾けさせた。
不機嫌そうに「興味ねぇな!」と吐き捨てる。
「自慢の弟子だっけ? そのオカマサ君はとっくに殺されてたよん」
その煽るような言葉に、グレンは殺気を漲らせた。ギッ!
かつて自分の息子と思ってあらゆる戦法を授けた愛弟子。その甲斐があって立派な悪漢に成長した。そのオカマサが殺された……だと?
トビーは『その辺のテレビ』に電源を付けた。そのテレビの上に腰を下ろし、ニヤニヤ笑む。
そこはウネウネ蠢く巨大なスライムに囲まれたオカマサの姿が映っていた。
側で相棒のドラゴリラがスライムの中でゴボゴボもがき苦しみながら溶解されていた。おぞましい惨劇に、グレンは愕然とする。
「くっ! う……おおおおッ!! そんな糞雑魚如きに負けるかァァァァッ!」
オカマサは必死に機関銃を連射して奮戦。しかしそれも虚しく、巨大スライムにグバァ────と呑み込まれる。
「アッ!」
ゴボゴボッ、声を出せず必死に苦しみもがきながら、皮と肉からジワジワ溶かされてゆく────。
その衝撃的な光景にグレンは白目で「ブルアアアアアアア!!」と天に向かって絶叫!
信じられるか! ふざけんじゃねぇ!!
てめぇで死ぬのは勝手だが、気に入らねぇ死に方すんじゃねぇぇぇッ!!
俺様より先に死ぬなど、この不孝者がァァァァァァァッ!!
心を澱んだ闇が満たし、心身共に闇へ堕ちてゆく────!
トビーはニヤリと冷淡な笑みで「史上最強にして最悪の地竜王グレン様の御降臨……。さぁアメリカを地獄の顕現と逝きましょうか」と紳士風に丁重なお辞儀する。
「カッカカカカ────ッ!!!」
ドゴオオォォォン!!
廃墟の工場一帯が土砂の噴火で噴き上げられた。
その余波で地震で、アメリカ全土に広がった────────!
当然、ビリビリと強烈な威圧が各地のヒーローを緊張させた。誰もがゾクゾクと怖気が背筋を走る。これまでとは違う強力なヴィラン……。
途方もない黒い殺意がヒシヒシと伝わって来る。
「死ぬかもしれんな……」
バーニングガイはいつになく真剣な顔で立ち上がり、火炎を模したスーツを纏う。
心配そうにベリーショートの褐色の巨乳美女が抱きつく。
「それは言わないで……! 腹の子になんて言えばいいの?」
「スマンな。これまで不器用な私に付き合ってくれて、だがこの子の未来を切り開いていくのが私の使命だ!」
「……私たちの子の未来」
「そうだ。だから命懸けで戦うんだ!!」
ダークシャドーもニンジャ・ナッセもそれぞれ大切な何かを守る為に日々戦い続けている。
このバーニングガイもまた、ヒーローになった時からその過酷な宿命に身を投じている。愛する女性を抱擁して、キスを何度も交わし、熱愛の視線で見つめ合う。
「…………行ってくる!」
「いってらっしゃい!」
こうしてバーニングガイは足から火炎放射させて、空へ飛び立っていった。
ヒーローは誰もが大切なモノを抱え、覚悟と信念を胸に過酷な戦いへと身を投じる。例え勝ち目がなくとも逃げるという選択はない。
集合した大勢のヒーローが戦意を漲らせて一歩一歩と力強く歩んでいく。
彼らが向かうは、なおもドカンドカンと破壊が繰り返されている廃墟地帯。
そこから溢れる膨大で重圧なオーラ。近づくだけでも失神してしまいそうなほどの巨大な威圧感。ビリビリと絶えず振動が地面から伝わる。
それでも怖気づくヒーローは一人たりともいなかった。
「気に入らねぇ!! 気に入らねぇ!! 気に入らねぇぇえッ!!」
グレンと呼ばれた男は、破壊衝動のままに暴れまわって廃墟の建物を粉砕し尽くす。
その体はもはや竜になりかけだ。材質が岩の、鹿ような角や、肥大化した腕と両足。竜の尻尾も岩を連ねているような感じで、しなっている。
「ブルアアアアアアアア!!!」
天に向かって咆哮を上げると、大地を揺るがし周囲に旋風を吹き荒れさせ瓦礫の破片をバラバラに吹っ飛ばしていく。
一足早く駆けつけたヒーローたちはその姿に驚愕した。
「こ、これは……!? 魔獣王、しかも地竜王か!!」
「完全に暴走してるな」
「……『魔獣王の種』を入れられたのは、あのグレンか!? オーマイゴッド!」
『グレン・ブレイズ』
災害級とも揶揄された凶悪無比のヴィラン。普段はめんどくさがって大人しいが、気が向けば破壊衝動のままに殺戮行為をする傍若無人。
常識や論理に無縁で、自分こそ正しいと信じて疑わない自己中心。
趣味は酒とタバコとギャンブルと薬。
殺すと決めたら同じヴィランはおろか女子供にも容赦はしない。そして略奪と虐殺が当たり前の極悪人。その為、孤高のA級凶悪ヴィランとして国際指名手配されている。
「グレンだろうが何だろうが、ヴィランの悪行は見過ごせん!! 我らの未来を守る為にな!」
「ば、バーニングガイ!?」
ズン、と馳せ参じたバーニングガイは迸る戦意を漲らせ、燃え上がった業火のオーラが全身から噴き上げた。
ダークシャドーも「へっ! チビんじゃねぇぞ」と背中からコウモリのような大翼を広げた。続々とヒーローたちも戦闘態勢に入っていく。
「行くぞ!!」
気迫の勢いで飛びかかるバーニングガイに続いて、ヒーローたちも一斉にグレンへと飛びかかる。
ナッセは息を切らし、短剣の切っ先に星型手裏剣を生み出す。ヤマミが見守ってくれる最中、身を扮して全身全霊で『無限なる回転』を極めんと高く跳躍。
「おおおおおおッ!!!」
急降下して大岩に向かって星型手裏剣を振り下ろす。
ギュガガガガガガガガッ!!!
螺旋状に深々と大岩を穿っていく。しかしパァンと旋風が弾けると共に後ろへと飛ばされる。なんとか受身を取って着地し、惰性でズザザッと滑る。
大岩は半分ほど抉られて、周辺に破片が散らばっている。
はぁはぁ、あと一息なのにと汗まみれの苦い顔をする。ヤマミも真剣な表情で見守る。
「くっそ! 数年、数十年と鍛えてれば強くなれるんだろうけど、それじゃ遅すぎるぞ!」
単にオーラを纏わせた星型手裏剣を高速回転させるだけじゃ、全然足りない!
一瞬にして粉々に粉砕するレベルの超火力を生み出せるにはどうすればッ!
あとがき雑談w
前まで脇役だったバーニングガイ、急に存在感増す!?
バーニングガイ「ハハハ! 私はアメリカンヒーロー・バーニングガイだ!」
褐色の巨乳美女「こんにちは。私は妻をやっているアブ・ファーアです」ボイン!
ナッセ「バーニングガイの正体とは……?」ゴクリ!
ヤマミ「ヒーローって、普通正体みせないでしょ?」
バーニングガイ「イエイ! 私はバーン・ファーアだぞ!」仮面パカー!
ナッセ&ヤマミ「すぐバラした────!?」ドガーン!
バーニングガイ「ハッハッハ! 最初こそ隠してたが、ヒーローたるもの堂々とせねばな!」
アブ「そんな漢らしさが好きになりましたよ」ポッw
バーニングガイ「今回のヴィランは最強最悪っぽいから、身を扮して未来を勝ち取らねばな!! バーニングバン!!」
何故かバーニングガイとアブさんはチュッチュッと熱愛キッスし始めたw
だんだん濃厚になってきて描写するのも危ういディープに……w
ベロベロチューw ベロチュッチューw ベロベロベローンw
赤面したナッセとヤマミは慌てて後ろへ振り返る────/////
ナッセ「って事で、普通にアメリカ編やってもいいくらい濃いなぞ」
ヤマミ「ええ。でも、もうすぐ終わるわ。この並行世界も……」
背後でチュッパチュッパと音がw いつまでやってるんだよw
本当はもっと色んなヒーローやヴィラン出したりして話膨らませたいです。
実際、この小説に要点以外書かないだけで、結構色々起きてますよ。
特訓しか書かれてないけど、ナッセとヤマミは出動して多くのヴィランやっつけてます!
次話楽しみに────! (`・ω・´)
次話『ナッセの特訓の成果は……完成に!?』





