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112話「肉弾鉄壁! 狂戦士の仁王立ち!」

 ナッセの銀河の剣(ギャラクシィセイバー)とヤミザキの誇る『偶像化(アイドラ)』による文殊利剣が交差し、その衝撃によって発生した輪状の斬撃が周囲の山脈を斬り散らした!

 山のことごとくは真っ二つと山腹が切断され、山頂部分が浮く。

 遅れて吹き荒れた二次余波が大規模な粉塵(ふんじん)を巻き上げ、木々を揺さぶり、薙ぎ倒し、轟音が通り過ぎた。

 ズズズズズ……!

 地上に落ちた山頂部分は、その自重による落下の衝撃で端から粉々に瓦解(がかい)



 だが、敗れたのはナッセの奥義の方だった……!


 砕け散った銀河の剣(ギャラクシィセイバー)はその光飛礫を散らし、解き放たれたように星屑(ほしくず)が四方八方と弾け散っていく。

 それに(あお)られて、ナッセは呆気にとられたまま尻から地面に落ちた。



「……ほう。さすがは三大奥義と言われるだけの事はある」


 ポタポタ……。黒い血が地面に滴り落ちる。

 マイシとコハクは「なっ!?」と視線を移す。なんとヤミザキのカルマホーンが斬り飛ばされ、その欠片は赤黒い地面に突き刺さっていた。

 明王を象る『偶像化(アイドラ)』の腹から絵の具のような粘着質の液体が溢れて、地面にゴポゴポと滴り落ちていた。なんとナッセの奥義が一掠(ひとかす)りと『偶像化(アイドラ)』を斬り裂き、ヤミザキの額まで届いていたようだ。


 ナッセは動揺して手に握る砕け散った銀河の剣(ギャラクシィセイバー)を震わせていて、周りが見えていない。



「だが、ナッセ君の心は折れたようだ。まぁ、器としては関係ないがな…………」


 額の切断された角の断面から黒い血が頬を伝っているのもお構いなしに、ヤミザキはニヤリと笑む。

 と、同時に『偶像化(アイドラ)』の腹の傷は癒えてしまう。


「このままでは総統継承式には出れそうにないな。仕方がない保護してやろう……」


 明王を身に包んだままヤミザキはゆっくり歩みだし、ナッセへと掌を向けようとする。

 呆然自失していてナッセは青ざめたまま動かない。



「あ、あたしのせいだし…………!」


 コハクはハッとする。自責の念で唇を()んで震えるマイシ。

 計画性のない無謀な試み。そのせいでナッセを巻き込んだ。ヤミザキがナッセに突き付けたように、自分もまたいかに無謀で愚かな事か痛いほど思い知らされた。

 しかも利用されていた。自らドラゴンの力で思う存分暴れさせていたのも、ヤミザキの思惑(おもわく)通り。


 その気になればマイシなど簡単にねじ伏せられる。敢えて踊らしていたのだ。

 もう耐えられない。耐えられるはずがない。自分のせいでみんなを巻き込み、危機に陥ってしまった後悔……。


「うわああああああ────ッ!!」


 天に向かって絶叫。灼熱滾る竜を象るエーテルを全身から噴き上げ、旋風を周囲に吹き散らす。

 怒りに呼応するように轟々と高熱を(はら)むエーテルが咆哮を上げて燃え盛る。


「ま、待ちなさいッ!」


 手を差し出したコハクの制止もむなしく、マイシは地面を爆発させ駆け出した。

 ヤミザキはそんなマイシの挙動(きょどう)に気づく。

 まるで灼熱纏う巨大な赤き竜が翼を広げて、咆哮を上げながら殺気まみれに襲いかかってくるかのような錯覚(さっかく)を覚えた。

「ほう」と薄ら歓喜の笑みを浮かべる。


「火竜の爆裂波動砲(バーストキャノン)ッ!!!」


 マイシは口を開け、連動するように頭を覆う竜のエーテルも上顎と下顎を開け、極太の灼熱光線を吐き出す。唸りを上げる膨大な奔流がヤミザキを激流に巻き込んだ。

「ぬ……!?」

 視界いっぱいに広がる灼熱の爆炎が轟音を立てて明々と燃え盛った。


「てめぇはあたしがぶっ殺してやるしッ!!!」


 逆上するままに灼熱の業火球を乱射。爆音響かせて爆発は連鎖して、更なる灼熱地獄を広げていった。

 大地を揺るがし吹き荒れる熱風に、コハクは咄嗟(とっさ)にナッセを抱え、自分の背を盾にした。


 ゴッゴゴゴゴゴゴゴォォ……ン!!!


 なおも爆発の連鎖は轟き続け、天を衝くように広がり続けた。



「フッ! 低俗な火竜もここまで力を上げるとはな……」


 凶悪な高温滾る灼熱地獄すら、ヤミザキを(よう)する明王は平然と跳ね除ける。

 絶句するマイシは、薙ぎ払う文殊利剣によって弾き飛ばされ、地面を数度バウンドして地面を滑りながら横たわる。

 全身を覆っていたエーテルは燃え尽きるように蒸発していく。


「あ……ううっ……」


 震えたままマイシは激痛に呻き、やがて気を失う。刀も折れ、柄だけが側に転がっていた。

 それを見下すヤミザキの視線は冷たいものだった。


「充分なデータは得られた。下僕に加えたい所だが、素行の悪さで組織を乱されては敵わん。自分の不始末は自分で始末してやろう。死ね!」

「ま、待てッ!!」


 背中を痛めながらもコハクは必死に制止の手を差し出す。

 だが無常にも巨大な文殊利剣は振り下ろされ、それはマイシへと迫る。コハクは槍を飛ばすが間に合わない!


 ズドオオオン!!


 剣閃は地上を穿ち、噴火のように土砂を巻き上げた。



「……随分(ずいぶん)(しつけ)が乱暴な総統様だな。虐待も度を越しておるわ」


 コハクは見開く。濛々(もうもう)とした煙幕が晴れると大柄な男が人影で浮かび上がる。

 メイプルリーフを模した真紅の仮面。肩幅が広く隆々とした筋肉が(あら)わになる。そして重量感たっぷりの大きな戦斧をかざし、マイシを守るように立ちはだかる。


「フクダリウスさん!」

武劉(タケリュウ)フクダリウスか……。今日は随分(ずいぶん)客が多いな」


 マイシを軽々と肩に乗せ、ズシンズシン足を踏み鳴らしコハクへ近づく。マイシを下ろし「守ってやれ」と目配せする。


「なぜあなたが……?」

「悪いが盗み聞きして後をつけさせてもらった。マイシの事だ。ナッセを言いくるめて殴り込みするだろうと思ってな……。いい薬だと思い、これまで引っ込んでいたが、これ以上は見過ごせん!」

「……済まぬ。僕がついていながら」

「コハク殿。後は任せたぞ」


 コハクは頷く。


 だが「せめてアクトも現れれば」と切望する。今回は相手が悪すぎる……。


 横たわっているマイシの肩に触れる。意外と怪我はなく気絶しているだけだと、安堵した。

 ナッセは項垂れて無気力になっているだけでほぼ無事だ。


「ナッセ君! あのフクダリウスが来ましたよ!」


 しかしピクリとも反応しない。

 ここまで奥義が破られたショックがでかいのか、と悲観する。しかし気持ちは分からなくもない。

 これまで数々の強敵を打ち破ってきた常勝無敗の奥義が破られたのだ。

 自信を木っ端微塵に打ち砕かれ、打ちひしがれるのも無理ない。立ち直るには相当時間はかかるかも知れない。いや、最悪トラウマとなって臆病に拍車(はくしゃ)がかかる恐れもある。



「さてエキシビジョンマッチはここまでにしてくれないか?」

「ふむ」


 揺らめく赤いエーテルを覆う明王を包んだままヤミザキはニヤリと怪しく笑む。


「ナッセ君はこちらで保護しよう。それで終わりにしてやってもいい」

「……とんだ総統様だな。そんなに器が欲しいか?」ギッ!

「なんとでも」


 ヤミザキは不敵な笑みで歩みだす。フクダリウスは「むん!」と全身の筋肉を膨らまし、メキメキと巨人のように大きくなっていく。

 ズシン、と地面を踏みしめると大地が大きく揺れる。

 かはぁ、口から煙を吐く。狂気に満ちた眼でヤミザキを見据える。


「ぬおおおおおおーっ!!」


 戦斧を振りかぶってヤミザキへ迫る。太い剛腕が大気を切るように振るわれ、超重量の戦斧がヤミザキの首をはねんと軌跡が横一文字に描く。


 ガッ!!


 平然とするヤミザキ。見開くフクダリウス。

 なんと明王がヤミザキを守る鎧のように戦斧を阻み、破片を散らしてその刃を欠けさせた。


「フッ! この『偶像化(アイドラ)』は、己の潜在意識を化身(けしん)化させて精神生命体(アストラル)に昇華する技術(スキル)。物理法則に対して無敵化し、なおかつこちらは自由に干渉(かんしょう)できる。魔法力を混ぜたオーラである第二次エーテルでやっと届く程度。

 だがこの私は魔王級にも等しい……。互角を張るのなら第三次フォースを発揮するしかないぞ?」

「くくっ!」


 分かってはいた。だが、これほどまでとは想像以上だった。恐らくモリッカの大爆裂魔法もそれで防いだのだろう。

 フクダリウスは憤りながら汗を流す。


「コハク……、逃げろ!」

「し、しかし!!」

「ここはワシが止める! 覚悟していた事だ! 頼む! ワシの想いを()んでくれいっ!!」


 戸惑うコハクだが「くっ!」と頭を下げる。

 もうどうしようもない。そんな事は分かっている。だが、仲間(フクダリウス)(おとり)にして逃げ出すなど非道な事はできない。しかし戦闘不能になったナッセとマイシとモリッカをそのままに戦えるなど無謀の極み。選択の余地はない。


「さっさと行ってくれいッ!!」


 苦慮(くりょ)の末、コハクは四つの槍でナッセたちを乗せて共に飛び去る。

 ヤミザキは「むっ!」と表情を険しくし、追いかけようとする。が、フクダリウスが自慢の巨体で立ちはだかる。


「さぁ! ワシとエキシビジョンマッチの続きだ!!」

「貴様ァ! そこをどかぬかッ!!」


 漆黒の稲光が轟々と迸る。明王は巨大な文殊利剣に凝縮させた黒い刃を包ませ、天地を割るほどの強撃を振るう。それはフクダリウスの強靭な巨体に炸裂。


「ぐわあああああッ!!!!」


 周囲に漆黒の稲光を放射状に散らし、爆ぜた衝撃波が大地を穿っていく。

 大地を断ち割るように深い亀裂を走らせ、それは地平線にまで一直線と裂いた。

 しかしフクダリウスの足はザッと大地を踏みしめる。

 ボタボタとおびただしい鮮血を全身から流しながら、依然と仁王(におう)()ち。ギロッと見据えるフクダリウス。


「貴様! なぜ耐えれるのだ!? この『夕夏明王(ユウカみょうおう)降魔滅殺剣(こうまめっさつけん)』を受けて五体満足などと信じられんッ!」

「グフフッ! この程度で四首領(ヨンドン)とは……、笑止!」

「うぬう……!」


 ナッセの奥義でなければ確実に敵を(ほふ)れる滅殺剣。

 魔王級のエーテルを圧縮して鍛えこまれた漆黒の刃は大地を裂き、山をも真っ二つに断ち割る。その威力を前に耐えられた人間は誰一人としていない。いないはずなのだ。


「貴様ァァァァァッ!!!」


 プライドを傷つけられ、激昂(げっこう)(あら)わにヤミザキは吠えた。

 明王から溢れ出す赤いエーテルが嵐のように吹き荒れ、驚天動地と大地を揺るがす。

あとがき雑談w


アリエル「フクダリウスの威力値は72000よぉ~」

ヤミロ「……おかしくねぇか? ナッセの奥義で威力値20万超えるんだろ? それを超える威力に耐えれる7万程度のフクダリウスって矛盾してねぇ?」


アリエル「間違ってないわよぉ~? ()()()とは言ってないからさぁ~」

ヤミロ「…………あー」(納得)


 あくまで威力値は攻撃力であって、防御力や耐性とか一切含めていないのだ。

 威力値と違って、防御値とか測りづらいし。



 次話『モリッカがヤミザキと自爆を!?』

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