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111話「ヤミザキの恐るべき切り札!!」

 ヤミザキは鋭く厳しい視線を見せた。


「その夢に対して覚悟も信念もない。まだ子供のように幼稚な絵空事(えそらごと)に酔ってるだけに過ぎん。それでは理想と現実の違いを思い知らされて、(はかな)()ちるだけだぞ……」


「違う! オレたちは危険を覚悟し洞窟(ダンジョン)を潜って異世界にたどり着けたんだぞっ!」

「……ヤマミを通じて多少把握(はあく)している。リッチ戦は一人勝手に突っ走って、危うく自滅しかけたではないか? 計画性もない無謀の極みよ」

「ぐっ……」


 胸に突き刺さり、あの頃の汚点が心情をかき乱してくる。

 激情に任せて後先考えず殺陣進撃(さつじんしんげき)を撃ちまくって倒せたには倒せたが、自分も倒れてみんなに迷惑をかけた。ヤマミはそれを心配して色々気遣(きづか)ってくれた。

 ……一歩間違えれば、全滅してもおかしくない状況だったぞ。


「だが、今は違うぞ!! 殺陣進撃(さつじんしんげき)流星進撃(メテオラン)へと進化(カスタマイズ)し、力の加減を覚えた。絶対にあの頃よりも成長しているんだぞ!」

(おご)るな! 異世界を甘く見てはいかんっ!」


 ヤミザキの厳しい叱責に、思わず肩が竦む。



「私もかつては異世界を冒険していた。そして得たのがこの『刻印(エンチャント)』だ……」


 ヤミザキの全身に行き渡っている赤い刻印(エンチャント)が怪しく灯っている。

 コンパチ男や自分の子供を監視し、支配や操作もできる。そして力を与え、コータロにしたように逆に奪う事もできる能力だ。


 じゃあ、オレの『刻印(エンチャント)』も……?

 いや、師匠(クッキー)から与えられてその作成方法とか教えてもらっていた。だが、これも異世界の技術ぞ……?


「私にはこれが精一杯だった。ありとあらゆる秘法はあったが、得たのはこれだけだった。初見殺しとも言える数々の障害で何度も死にかけた事もある。それに多くのかけがえのない仲間も失った……。

 ……それに()()()より、ずっと強い奴が他にもゴロゴロいるぞ?」


 マイシたちは絶句し、言葉を失う。

 今までが自惚(うぬぼ)れに思えてくるくらい、ヤミザキの言葉は重かった。


「仮に今のお前でヤマミと一緒に行った所で、異世界の厚い壁を前に挫折(ざせつ)するだろう」

「そ、そんな事ッ…………!」


「ハッキリ言ってやろう……。地球はまだ異世界の標準的な文明レベルには届いていない。

 ようやく初心として一歩踏み出しただけに過ぎん。仮想対戦(バーチャルサバイバル)センターや創作士(クリエイター)センターなどの施設も最低限のものしかない。あっちはもっと豊富だぞ。それ故に充実した猛者(もさ)が多い」

「まだ地球は未開地で低レベルって事かぞ……?」

「残念ながら、な」


 ヤミザキは首を振る。そしてゆっくり拳に握って、胸の高さにまで突き上げる。


「だからこそ異世界列強に対抗できるよう、地球代表として我が勢力を育てておるのだ!」

「そんな目的が……!?」

 なんつー大きな話だぞ……。


「それでも貴方のやり方は()められたものではありませんよ!」キリッ!

「人造人間の件だって許されないし!」

「そーだ! そーだ!」


 ヤミザキは軽く笑い、額の右側にズズッと黒い角が生える。


「……私のやる事なす事すべてが善行じゃないのも百も承知。必要悪もあるという事だ。このカルマホーンがその(あかし)だろう」

「も、モンスターになっちゃうんだぞ!!」

「覚悟と信念を強く持てば、カルマホーンなど恐るるに足らず!」


 カッと毅然(きぜん)とした言葉を吐き、重圧(プレッシャー)を放つ真剣な目。

 かつて異世界へ挑み、色々なものを失い得た力。それで自ら生涯(しょうがい)をかけて事業を展開して、野望を絶対叶えんと邁進(まいしん)する強い信念を感じさせる。

 その揺るぎない強い意志がモンスター化を押し留めているのが分かる。


 それに比べ、オレは一体何をしていたんだ……?

 ヤマミと一緒に観光気分で異世界を旅しようとしていた?


 まるで天上の世界にいるような途方もない大物に、オレは勝とうとしていたのかぞ…………?



「ナッセよ。我が夕夏(ユウカ)家の後継者候補に選んだのは、お前の器が必要だったからだ」

「お、オレの!?」

「お前の(せま)く浅い意思にはもったいないほどの高スペックの器。私がそれに成り代われば、更なる成長の飛躍を望める。より優秀な子孫を増やし、人類は更なる進化を遂げるだろう。その為の必要な犠牲だ」


 凍てつくような目的に体が震え強張ってしまう。


「そうだ。マイシ。お前のようなドラゴンの力を持った人間は後の未来に必要だ。暴れてくれたおかげで充分なデータが得られたぞ。感謝しよう」

「そ、そんなし……!」


 自分が実験台だと愕然とするマイシに、ヤミザキはフッと軽く笑う。



「そんな身勝手なラスボスは許しません!」


 すると地響きが大きくなっていく。ヤミザキは震源地へ一瞥(いちべつ)

 なんとモリッカが杖を両手で握り、腰の方へ引いて無数の光子を収束させていた。ゴゴゴ!


「ま・じ・か・る……」


 モリッカを中心にゴウッと光球が大きく膨らむ。それに伴い大地は抉れ破片が浮く。

 しかしヤミザキは落ち着いた様子で眺めているだけだ。


「ふ、伏せろし────ッ!!!」

「ナッセ君! 早くッ!」


 そ、そうだったぞ!! やべぇぞ!! つか事前予告してくれぞッ!

 慌ててスライディングするように地面へうつ伏せに滑った。



「大爆裂────ッッ!!!」


 モリッカは勢いよく杖を突き出し、扇状に膨大な奔流(ほんりゅう)を撃ち出す。それは地面を深々と抉り飛ばしながらヤミザキを光の彼方(かなた)へ呑み込む。


 ズドオオオオォォォォォォン!!!


 眩い閃光と共に、明々と爆発球が大地を穿ちながら膨らんでいく。

 破片混じりの荒々しい烈風が吹き荒び、なおも大地は震撼(しんかん)する。ズズズ!



「や、やりましたよ! へっへっへー!」


 フラフラしながらも両拳を振り上げて喜ぶモリッカに、ジト目で「おいフラグ立てるなぞ」と口走る。

 マイシもコハクも上半身を起こし浮かない顔で、赤々と燃え上がる灼熱の余韻(よいん)を眺めていた。


「哀れなものだな……。その程度で私を殺せるなどと思い上がるとは!」

「んなっ!?」


 灼熱の余韻(よいん)から人影がのそっと浮かび上がる。高温の炎を周りに、ヤミザキは不敵な笑みで無傷の上半身を見せてきた。


「くっそ! はあああああーっ!」


 ヤケクソとモリッカは青い雷を纏い、音速(マッハ)級の超スピードで地面を裂きながらヤミザキへ突っ込む。

 しかしヤミザキはカウンターでモリッカの腹に拳を撃ち込み、ドンと衝撃が背中を突き抜けた。

「ごふー!」

 ゴロゴロ回転しながら地面を転がってペタンと横たわった。



 あ、あの大爆裂魔法を喰らってノーダメージだなんて、これが……四首領(ヨンドン)!?

 格が違いすぎる…………ぞ!

 だが、大爆裂魔法がダメとしても! 奥義さえ喰らわせればッ!!



「……もうよい。エキシビジョンマッチはここまでだ」

「いや!」


 怖いけど、引き下がるもんか! と一歩足を踏み出す。


 オレは恐怖に震える身に勇気を奮い立たせて、ヤミザキへ立ちはだかる。

 バクバクと心音が高鳴る。


「受けてもらうぞ!! オレの最大最強の奥義をッ!!」

「ほう?」


 太陽の剣(サンライトセイバー)を天にかざし、周囲の無数の光り輝く波紋が(しずく)を作っていく。

 あちこちから数多くの(しずく)太陽の剣(サンライトセイバー)の宝玉となるように凝縮されていき、その力場に足元がボコッと陥没。なおも重くのしかかる膨大なエネルギーを剣に込めながら、脳裏にヤマミが浮かぶ。


 犠牲にしていいもんじゃない!


 必要悪って言ったけれど、それで異世界列強に挑んだって胸糞悪いじゃないかぞ!


 だから! この手で! 夕夏(ユウカ)家の呪縛を終わらせてもらうぞッ!!


 大地を揺るがしながら、背景に星々(きらめ)く宇宙を展開。

 オレは螺旋状に渦巻く星屑(ほしくず)を従えた銀河の剣(ギャラクシィセイバー)(たずさ)えた。明らかに大爆裂魔法(エクスパンション)よりも絶大な威力を誇っている。

 マイシもコハクもビリビリと肌に響いて、その威力を噛み締めている。

 コハクの槍が、ぐったりしているモリッカを(つま)むように引っ掛けて飛び去った。


「……さて、私もそれ相応の力で受けて立とう」

「行っくぞォ────ッッ!!」


 大地を蹴り、大爆発。

 超高速で駆け抜け、銀河の剣(ギャラクシィセイバー)を引いたままヤミザキへと迫る。その際に後方から衝撃波の津波が荒々しく追いかけてくる。


「オレはァ────、絶対に勝ァ────────つッ!!!」


 裂帛の気合いを発して、抜刀術のように横薙ぎと銀河の剣(ギャラクシィセイバー)を振るう。巨大に伸びた刀身が大きく弧を描いてヤミザキへ襲いかかる。


 その刹那(せつな)、ある事象がナッセの視界に映った。


 滝のように墨汁(ぼくじゅう)のような液体がヤミザキを覆うように溢れ、それは線画に紡ぐように描かれていく。やがて明王(みょうおう)のような仰々(ぎょうぎょう)しい神仏へと(かたど)り、それを器に絵の具のような液体で満たされていく。

 なに……これ……!?


「見せてやろう……。これこそが私の切り札『偶像化(アイドラ)』だ」


 ヤミ、ヤミ、ヤミ、ヤミ、ヤミ……!


 風景が異世界になったかのように、おどろおどろしいモノへと浮かびあがる。

 辺りは赤黒い砂漠。幾重の波紋状の砂丘に囲まれている。そしてあちこち鈍い黄金の無数の文殊利剣が突き立っていた。

 空は夕日のように赤いグラデーションで、黒い三日月の月一つ。


 ヤミ! ヤミ! ヤミ! ヤミ! ヤミ……!


 ヤミザキを包む巨大な神仏は赤いエーテルで包み、憤怒の表情を見せている。そして片手に超巨大な文殊利剣が握られ、それを大きく振りかざす。

 その黄金の刀身に赤いエーテルが凝縮されるように注がれ、洗練とした形状の赤黒い刀身で包む。キイィィィ……!

 まるで振動音が不気味に響く漆黒の剣だぞ……。

 戦々恐々(せんせんきょうきょう)させられる威力がビリビリ感じられる。だけど退く訳にはいかぬと、全身全霊でヤミザキへ銀河の剣(ギャラクシィセイバー)を振るう。


「ギャラクシィ・シャインスパァ────クッ!!!」


 それに対しヤミザキを(よう)する巨大な神仏も同じように文殊利剣を薙ぎ振るう。辺りを吹き飛ばすほどの烈風を率いて互いの剣はぶつかりあった!


 ガッッ!!!


 その瞬間、輪状の斬撃が拡大するように広がり、数十キロ先遠くの山脈を上下に切断して通り過ぎていった。



 バキィィィィィン!!


 横薙ぎに通り過ぎていく文殊利剣、そして無残に粉々と砕け散る銀河の剣(ギャラクシィセイバー)。光飛礫が四方八方と弾け散り、その衝撃的な光景にオレは絶句。

 マイシもコハクもその信じられない結果に見開く。

あとがき雑談w


コクア「異世界列強とは……?」

ヤミザキ「まず異世界のおさらいだ。我々の地球を含める宇宙一つで()()()()


 例え、生命体が存在する太陽系と酷似した恒星系が数え切れない程あっても、ほとんどが星間交流できなくとも、()()()()()らしい。

 恒星系列強、銀河系列強、とか本編に関係ない裏設定はさておきw


コクア「世界は広いですね……」ゴクリ!

ヤミザキ「うむ。それを前提に、異世界とは我々の宇宙と同じぐらいの大規模で、別の宇宙の事を言う」

コクア「ナッセ様たちが行っていた異世界は……?」

ヤミザキ「『洞窟(ダンジョン)』で繋がってて紛らわしいが、れきっとした別宇宙だ」


 どんな理由で繋がっているのかは不明だが、元々は全く繋がりのない世界同士だったと思われる。


ヤミザキ「それとは別に、異世界を次々と侵略して領地を広げている『異世界列強』が存在している」

コクア「そ、それでは!?」


作者「やめて!! やめて!! 話している内にどんどん世界が広がりすぎて収拾つかなくなっちゃうよ~~~~!!」


 おもむろにスイッチを取り出して、その赤いスイッチをポチッ!


 ドゴドゴドゴオォォォン!! 異世界列強連鎖爆破w


作者「ふうw 設定リセットで事なきを得たw」(*´∀`*)

ヤミザキ「……お前が一番ひどいと思うぞ」(ドン引き)

コクア「同意です」(ドン引き)


 ※ギャグなので本編には影響しませんw



 次話『頼もしい戦士が加勢に!? ぐわああああ!!』

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