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110話「深淵の闇を纏う夕夏家総統!」

 一見、豪華なだけの大屋敷から圧倒的な闇の威圧がこもれ出てきている……。その途方もない深淵の闇は屋敷を覆っていく。ズズズズズ…………!


 ヤバい!


 呼び止めようと声を出す前に、先頭のマイシは地面を滑りながら急に足を止めた。


「止まるしッ!」

「え?」


 マイシは剣を横にかざし、停止を(うなが)してきた。こっちも緩やかに速度を落として足を止める。続いてコハクが止まり、その背中にモリッカが「ぶっ!」とぶつかる。

 ……あのマイシが止まった!?

 緊張で頬を汗が伝う。



「……無粋(ぶすい)(やから)だ。そんなに総統継承式が待ちきれないのかね?」


 一同の肩がビクッと(すく)む。

 初めて出会ったあの時とは違う。屋敷が魔王のような黒い影に変貌したかのように錯覚させるほど、巨大な威圧が膨れ上がってくる……。


 その屋敷の前で黒い渦が大きく広がっていく。ズズ……!

 途端に台風かと思える程の烈風が吹き荒れた。気付けば黒い渦の前にヤミザキが黒いマントで顔以外を羽織(はお)って浮いていた。

 冷めたような無表情。目の奥に底知れぬ闇が(うかが)えそうだ。


 話も聞かずイキナリ斬りつけそうなマイシですら、強張(こわば)った顔で固まっている。引き締めているコハクはともかく、あの飄々(ひょうひょう)としているモリッカすらなんか黙ってるぞ。



 ゆっくりとタイル床に降り立つヤミザキ。

 無防備に突っ立っているだけだが、何故か(すき)(うかが)えない。


「まぁ良い。アポイントメントも取らず殴り込むほどだ。長い猶予(ゆうよ)を持たせたのがよほど気に入らなかったのか? その点は反省しよう。申し訳なかった」


 マントを広げ、両腕を左右に伸ばし「歓迎(かんげい)してやろう」とでも言わんばかりに不敵に笑んでくる。


「謝罪の意を込めてエキシビジョンマッチとして、この私一人で相手しよう……」


 ってか、突然ラスボス出てきたぞ……!!

 なんか四天王っぽい幹部が立ちはだかってきて、それを次々と撃破していって王座に座しているヤミザキと対面、って思ってたけどぞ……。

 五戦隊なんとかがいた気がするが、まぁいい。


 これはむしろ好都合かも知れない…………。奥義さえ食らわせればッ……。



「おぉ、そうだ。(あらかじ)め説明しておこう。その方らの殴り込みは不問に(いた)す。この勝負で負けてもペナルティも無し。しかし万が一、この私に勝ったらなんでも望みを一つ叶えてやろう。

 ……例えば『刻印(エンチャント)』を解除したヤマミを返し、こちらは二度と関わらないというようなのも、な」

「ううっ!」


「ホントかな~? あっやし~!」フフフ!

 ジト目でモリッカがおちょくる。

 見やればマイシもコハクも睨みを利かせている。


「フフッ! まぁ、そう邪険にするな。約束を反故(ほご)にするような卑劣な真似はせん。勝てれば……だがな」


 コ、コイツ……負けるとは思ってないぞ……ッ!?


 しかしその言葉に重みがあり、とても軽率とは思えない……。

 だが、確かに千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスかも知れない。わざわざ引き返して、総統継承式に出直す必要なんかない。

 コイツにオレの奥義が決まればッ……!


 脳裏にヤマミが嗚咽(おえつ)するシーンが浮かぶ。


 夕夏家としての呪縛に未だ(とら)われたままで自由を許されていない。

 そのせいで本当の笑顔を見せられない。異世界へ一緒に行く事もできない。もしかしたらヤミザキの意のままに殺されるのかもしれない。

 ヤツにとっちゃ、自分の子供すら道具でしかないかもしれない。


 そう思うと戦意が(たぎ)る。ザッと自然に足を踏み出す。


「約束は守ってもらうぞ!! 総統ヤミザキッ!!」

「……承知(しょうち)した。では、始めようか…………」


 ヤミザキは赤い『刻印(エンチャント)』を灯らせると、ズズッと赤い葉脈のようなものが全身を這って左右対称の紋様が顔にも現れた。

 ニヤリ、と不敵な面構えで悠然(ゆうぜん)と突っ立っている。


「こっ、こいつ……ッ!?」


「うわー!! コイツ、ナッセと同じ『刻印(エンチャント)』じゃないですかー!?」

「いえ……、その比ではありませんよ……」キリッ!


 ナッセも対抗するかのように拳の青白い『刻印(エンチャント)』を全開にし、太陽のマークと三つ星で囲む円を灯らす。そして燦然(さんぜん)と輝きながら具現化された太陽の剣(サンライトセイバー)を手に身構えた。



「かああああああッ!!」


 (せき)を切ったように、マイシは地響きと共に竜を象るエーテルを全身から噴き上げた。

「え、ちょっ……!」

 ズゴッと地面を爆発させ、暴風を巻き起こしながらマイシはヤミザキへ飛びかかる。炸裂剣(バーストソード)がその首筋を捉え、爆裂が広々と爆ぜた。


 ズゴォォォンッ!


 大地ごと巻き込むように吹き荒れ、破片が飛散。

 地響きを伴って吹き荒れる煙幕混じりの烈風にオレたちは「ぐっ」と腕で自身の顔を庇う。


「……太刀筋が荒いな。高い戦闘力にかまけていては、ただの(けもの)同然だぞ」

「な!?」


 煙幕が晴れるとヤミザキの手から刻印(エンチャント)が剣のような形を取って、マイシの剣を受け止めていた。

 あ、あの……高火力の炸裂剣(バーストソード)をッ……!?


「それからナッセ君。プログラム次第で『刻印(エンチャント)』を状態変化させる事も可能だ。後学として覚えておきたまえ」

「くっ!」


九十九紅蓮(つくもぐれん)ッ!!」

(スーパー)モリッカだー!!」


 コハクが槍を振りかざし、モリッカが青い雷を(まと)って、疾風のようにヤミザキの左右から攻め入る。

 するとヤミザキの背中から紋様が宙に浮き、翼に象る。その一対の翼を手のように動かして、コハクとモリッカの挟撃(はさみうち)を受け止めた。

「なにっ!?」

 二つの力場を受け止めた反動で、ヤミザキの足元の地面から衝撃波がゴゴッと噴き上げ、地盤が弾け陥没。

 しかしマイシ、コハク、モリッカ同時に受け止めたままビクともしない。


「ぐぐっ!?」

「むむー!」

「ナッセェ────ッ! 今だしッ!!」


 オレは天高く上空から太陽の剣(サンライトセイバー)を振り下ろす。大気を切り裂き、疾風を巻き起こしながら急降下。


「おおおッ!! サンッライトォ──・フォォ──ルッ!!」


 ガゴォン!


 流星がごとく振り下ろした強烈な太刀筋が炸裂!

 大地が噴火のように弾け、地鳴りと共に周囲に衝撃波が波紋のように広がっていって破片を流していく。


 だが切っ先は震えたまま、ヤミザキの頭上へ届いていない。なんとヤミザキが二本目の刻印剣(エンチャントセイバー)で受け止めていた。

 二刀流に一対の翼……!? これが四首領(ヨンドン)ヤミザキの戦闘スタイルか!



「久々の運動だ。少々チャンバラに付き合ってやろう」


 ヤミザキは旋風を巻き起こすほど一回転してナッセ、マイシ、モリッカ、コハクを弾き飛ばす。烈風と共に飛ばされるも、それぞれ宙返りして地面に着地、惰性(だせい)で地面をザザザッと滑っていく。

「くっ……!」


 追い打ちもせず、ただ突っ立ったまま余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)と笑むヤミザキ。



「このおっ!!」

「かああああッ!!」


 エーテルを全開に噴き上げ、オレとマイシが飛び出す。コハクは躊躇(ためら)うも無数の槍を並べるように具現化。

 ヤミザキは二つの刻印剣(エンチャントセイバー)を交差し「来なさい!」と構えた。


 ズガガッガッガッガガガッガッガガガガ!!


 怒涛(どとう)と攻め続けるナッセとマイシの気合いこもる剣戟(けんげき)を、ヤミザキはなんなく(さば)いていく。

 なおも攻防の応酬は長々と続き、地響きが絶えない。


「おおおおおおッ!!!」

「かああああああッ!!」


 オレはあちこち(シールド)を足場に飛び回りながら斬り刻み、マイシは炸裂剣(バーストソード)の連発で畳み掛ける。合間にコハクの槍が四方八方から飛び交うも刻印剣(エンチャントセイバー)刻印翼(エンチャントウィング)に弾かれる。

 オレかマイシいずれかが弾かれて間合いが離れた時、モリッカが加勢して乱打(ラッシュ)を仕掛ける。その逆も(しか)り。

 それにより、絶え間なく猛攻の嵐をヤミザキに浴びせられた。


 しかし、ヤミザキの余裕は依然として崩せていない。

 まるで子供たちのチャンバラに付き合ってあげてるかのようだった。



「まじかる魔砲(まーほ)ッ!!」


 モリッカの半握りの両手から放った光線が一直線とヤミザキの背後へ襲いかかる。

 しかし刻印翼(エンチャントウィング)が阻む。ガウンッと爆発が溢れた。煙幕が漂いつつヤミザキは平然と立っていた。


「くっそー! 翼むしりたーい!」

「穿って貫けッ! 九十九紅蓮(つくもぐれん)一閃槍(いっせんそう)天翔穿(てんしょうせん)”ッ!!」


 コハクは勢いよく手を突き出し、浮いていた巨大な槍を音速で撃ち出す。

 地面を爆発させる勢いで、軌道上の地面を穿ち続けながら超音速の槍はヤミザキへと迫る。しかしヤミザキは振り向きざまに刻印剣(エンチャントセイバー)をひと振りして、槍を真っ向から斬り裂く。


 バガァッ!!!


 裂かれた槍は爆ぜて、ヤミザキを通り過ぎながら破片は流れ散った。

 ナッセ、マイシ、モリッカ、コハクは見開く。



「……この程度ではウォーミングアップにもならんな。これではガキのお遊び同然だ」


 ドクン!


 なんだって!? この程度……だって?


 プライドが刺激され、激昂が体を熱く滾らせた。

 お遊びで終わらせる訳にはいかない! 全身からエーテルを噴き上げ、地響きを誘発。


流星進撃(メテオラン)────!」


 オレは地面を爆発させ地を蹴る。広がる夜景、流れる無数の軌跡と共にヤミザキへ飛びかかる。

 マイシも「火竜(かりゅう)のッ、炸裂焔嵐剣バースト・フレイムストームッッ!!」と続く。コハクもモリッカも最大級の気迫で飛びかかり、四人揃ってヤミザキを四方から攻める。


喝呑(かつどん)ッ!!」


 ヤミザキは天に轟くほどの気合いで吠え、全身から稲光を伴う赤いエーテルを放射状に爆ぜた。

 その凄まじい衝撃波が数キロ及ぶ範囲で荒れ狂い、地盤を粉々にめくれ上げ、木々や破片を散らかす。


「ぐあああッ!!」


 巻き込まれたナッセ、マイシ、モリッカ、コハクはそれぞれ四方に流され、受け身が取れず数度バウンドして、地面を滑って無様に転がった。


 ぐうっ……! 四人かがりでも、まるで歯が立たないかぞ……!?


「うぐぐ」と身を起こす。



「まだ立ち上がるか……? してナッセ君。君はヤマミを取り戻してどうするのかね?」

「き……決まってる!」


 震えながらも二の足で立ち上がる。そして再び太陽の剣(サンライトセイバー)で構える。


「自由になったヤマミと一緒に、未だ見ぬ異世界へ旅立つんだ────ッ!!」

「…………フッ、青いな」

「な、何ッ!?」


 ヤミザキは鋭く厳しい視線を見せた。


「その夢に対して覚悟も信念もない。まだ子供のように幼稚な絵空事(えそらごと)に酔ってるだけに過ぎん。それでは理想と現実の違いを思い知らされて、(はかな)()ちるだけだぞ……」

あとがき雑談w


ヤミロ「全く慣れねぇアンコール類飲むもんじゃねぇな」

アリエル「あらあらぁ? クッキーみたく、ミクロサイズの『分霊(スクナビコナ)』で最初っから体内で分解とかすればいいんじゃないのぉ~?」

ヤミロ「バケモンのクッキーと一緒にすんなよ……。そもそも苦手だっつーの」


アリエル「さて、ナッセたちの威力値測るわぁ~w」


 ナッセ(剣士(セイバー)) 57000→67000(賢者の秘法20万以上)

 マイシ(剣士(セイバー)) 80000→85000

 コハク(槍士(ランサー)) 66500→72000

 モリッカ(魔道士(マジシャン)) 65000→70000


ヤミロ「若干アップしてるな……」(錠剤パリポリ)



 次話『ついにヤミザキに奥義炸裂かっ!!』

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