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最強のおっさんハンター異世界へ~今度こそゆっくり静かに暮らしたい~  作者: 月島 秀一
第六章:

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一:報告


 元の世界に戻ってきた日の翌日。

 俺は早速冒険者ギルドへ向かい、タールマンさんにクエスト達成の報告をしていた。


「――というわけで、気付いたらこの世界に戻っていたというわけです」


「なるほど……本当にご苦労だった」


 彼は難しい顔をしたままグラスに口をつけた。


「それにしても……ジン君が手こずるほどのモンスターか……」


「憤怒の大罪グラノス――高度な知能を持つ恐ろしいモンスターでした。何より奴の権能は、目を剥くものがありました」


「<憤怒の剛鱗>……か。物理攻撃の一切を無力化するとは……敵ながら本当に恐ろしい能力だな」


 俺がコクリと頷くと、重たい空気が部屋に流れた。


「私の勘違いだと嬉しいんだが……。徐々に大罪が強くなっていっていないか?」


「えぇ、俺もそう思っています」


 初めは強欲の魔龍ゼルドドン。

 次に怠惰の魔人ヨーン。

 そして今回憤怒の大罪グラノス。

 偶然かもしれないが、大罪は強力なものになっている。


「次の世界ではいったいどれほどの強敵が待ち受けているのか……少し不安が残るな」


「そうですね……気を引き締める必要があります」


 それから重くなった空気を吹き飛ばすように、タールマンさんはパンと手を打った。


「しかし、本当によくぞ無事に帰って来てくれた! 国王から預かった報酬を出すので、ちょと待っててくれ!」


 そう言って彼は、執務室の最奥にある金庫から大きな革袋を取り出した。


「報酬の金貨五万枚だ。受け取ってくれ」


「確かに――いただきました」


 正直……本当に助かる。


 昨日の出費は本当に痛かった。

 今後我が家で焼き肉パーティを開くことは、もう二度とないだろう。


(あんなもの……お金がいくらあっても足りないっ)


 スラリンとリューは……まぁいつも通りとして、まさかアイリがあんなに食べるとは予想外だった。


 女性に対して「食べ過ぎじゃないか?」というわけにもいかないので、ニコニコと笑っていたが心と財布は泣いていた。あのときは、小食なヨーンが本当に愛おしく思えた。


(しかし、本当にあんなに食べて……太らないんだろうか?)


 スラリンとリューは本体が超巨大だから何の問題も無いが……アイリはごく普通のエルフだ。


(……謎だ)


 俺がぼんやりと昨日のことを思い出していると、タールマンさんがゴホンと咳払いをした。


「あー……ところで、ジン君。非常に言いにくいのだが……」


 珍しく彼は歯切れ悪く、口ごもりながら何かを話したげだった。


「どうしたんですか?」


「えー……っと、その……だな……。あの国王が君を王都に招待しているんだ」


「……国王が?」


 国王は確か俺のことが大嫌いだったはずだ。


 もちろん、俺も彼のことを好ましく思っていない。


 ほとんど相互不干渉を貫き、今回の謎の穴の調査のようにどうしても仕方がない――ビジネスの場合のみ、お互いに融通を利かせているという関係だ。


 その彼がいったいどういう理由で、俺を招待しているというのだろうか。


「端的に言えば、名目上の要件は二つ。感謝状と勲章の授与」


「感謝状と勲章……?」


 謎の穴の調査についての話ならまだわかる……が、感謝状と勲章というのはよく意味がわからないな。


「すみません、詳しくお聞かせ願えますか……?」


「あぁ、もちろんだとも」


 そうして彼は、俺がこの世界を離れていたときのことを話し始めた。

※次回更新予定1月15日(火)お昼12時!


書き下ろし大量の紙の書籍版もよろしくお願いいたします!

今年は第二巻にコミカライズにと『おっさんハンター』シリーズがいろいろと動きますし、WEB版の更新も活発になると思います!

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