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最強のおっさんハンター異世界へ~今度こそゆっくり静かに暮らしたい~  作者: 月島 秀一
第五章:モンスターだらけの世界

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三十:宴


「気にしないでください。俺たちのターゲットが、たまたまグラノスだったというだけですから」


「それでも……っ! 我らはジン殿に救われたという事実は何ら変わりません……っ! やはり伝承は正しかった。貴方様こそ、古くから伝わる大英雄に相違ありません……っ!」


「え、えぇ……それは、そうですね……」


 面と向かって「大英雄」と呼ばれても全くしっくりと来ないが……。


 まぁ自分が撒いた種だ。そこは我慢するしかない。


「感謝の気持ちを込めて――ささやかながら、村を挙げての宴を開きたいと思います」


 するとそれに真っ先に反応したのはスラリンだ。


「う、宴っ!? た、食べるっ!」


「こら、スラリン……宴は食べるものじゃないぞ……?」


 彼女の頭の中では宴=肉という等式が成り立っているようだ。

 あながち間違いではないが、それはやや性急過ぎだ。


「もちろん、肉に酒――そのほか我が村伝統の料理をいくつもご用意させていただきます!もしよろしければこの後、お時間を少々いただけないでしょうか?」


(ふむ……)


 スラリンとリューの期待に満ちた目と、何よりもグーッという腹の音が何よりも雄弁に「宴に出たい!」と叫んでいた。


「えぇ、それは大丈夫ですが……本当にいいんですか? この二人はかなりの大食いなのですが……?」


 俺がスラリンとリューに目をやりながらそう言うと、ジグザドスさんは顔をしわくちゃにしながらニッと笑った。


「えぇ、もちろんでございますとも! 何でも好きなだけ、仰ってくださいませ!」


 その瞬間、二人は目を輝かせながら、前のめりになった。


「ぃやったーっ! リンはね! お肉がいーっぱい食べたいな!」


「……たくさんの肉を……所望するっ!」


 遠慮を知らない二人は早速、ジグザドスさんに注文を付け始める。


「スラリン、リュー、お前らはもう少し遠慮と言うものをだな……」


 俺がそうしていつものように二人を(たしな)めようとすると、


「遠慮だなんて、とんでもございません! 何でもお好きなものを仰ってください。できる限りのものをご用意させていただきます!」


 ジグザドスさんは胸をドンと打って、自信満々にそう言った。


「あ、あの、ジグザドスさん? この子は本当にビックリするぐらい食べるので、あまりそういうことを言うのは……」


「いいえいいえ! 何を仰いますかジン殿、心配はご無用でございます! この村の周辺には驚くほどたくさんのモンスターがおりますので、肉は尽きることがありません! それに村には大量の備蓄もございます! 食料の心配など、そんなそんな!」


 ……そのたくさんのモンスターは俺が<爆発>でほとんど全て吹き飛ばしたんだが。


 それにスラリンとリューがお腹いっぱい食べるとなると……おそらくこの村の備蓄は一夜にして消えるだろう。


(まぁ、ジグザドスさんの顔色を見ながら、二人がほどほどに満足したあたりで止めるとしようか)


 俺が一人頭の中でそんなことを考えていると、


「そうだぜ、ジン様! 天下の大英雄様が遠慮なんてしちゃいけねぇよ!」


「私も腕によりを掛けて料理を作らせていただきますっ!」


「ジン様は、何がお好きなんですか? ぜひ教えてください!」


 ザリにスウェン、それからマイルがそう言ってくれた。

 ここまで気を使ってもらいながら、遠慮をするというのはさすがに失礼だ。


「そうか……じゃあ俺は酒を頼んでもいいか?」


「もちろんでございます! 他のお連れの方々も、ぜひお好きなものを教えてくださいませんか?」


 それからアイリは新鮮な野菜を、ヨーンは甘いものを希望した。


「了解いたしました。それでは我らは宴の準備をして参りますので、お二人はお休みになって――」


 そうして話がまとまりかけたそのとき、


「――ま、マてっ!」


 三匹のゴブリンが会話に割って入った。


「ご、ゴブリン!?」


 どこからか驚愕の声が漏れた。


(これは……ゴブシャマさんのところのゴブリンか?)


 三匹は腰に差した短刀も抜いていないし、特に敵意は感じない。


 いったい何をしに来たのだろうか?


「う、うタゲ……っ!」


「俺タちも、開ク!」


「宴を……お前たちが?」


 俺がそう問いかけると、彼らはコクリと頷いた。


「俺タち、ジンに感謝、大キい!」


「族長、恩をカエす、言ってタ!」


 ふむ……確かに、あのゴブシャマさんなら言い出しそうなことだ。

 少し、話を聞いてみてもよさそうだ。

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