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最強のおっさんハンター異世界へ~今度こそゆっくり静かに暮らしたい~  作者: 月島 秀一
第五章:モンスターだらけの世界

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二十八:違和感


 頭の中で楽観的なものから悲観的なものまで――様々な考えが浮かんでは消えていく。


(赤龍と緑龍は弱かった……だが、それで青龍が雑魚だと決まったわけではない……っ)


 もし青龍がグラノスレベルだった場合――マズい。


 スラリンの能力は非常に汎用性が高いが、それでも無敵というわけではない。


 そもそも一度に消化できる量には限りがあるし、いくつかの明確な弱点が存在する。


(スラリン……無事でいてくれ……っ)


 そうしてジグザドスさんの後を追っていくと、そこには――体中に無数の穴が開いた青龍がいた。そしてその隣には――不定形の漆黒の塊がボコボコと蠢いている。


「肉……にく、にぐ……にぐぅ……っ!」


 いつもの可愛いらしい声と、底冷えするような暗い声が重なって周囲に響く。


「す、スラリン……さん……?」


「うわ……っ。な、何あれ……っ!?」


 事情を知らないアイリとヨーンは、怯えた様子で一歩後ずさった。

 一方、俺とリューは少し冷めた目でスラリンを見やった。


「ねぇ、ジン……これって……」


「あぁ……間違いないな」


 見間違うわけもない――これはただの禁断症状だ。


 暴食の王であるスラリンは、常に身を焼くような食欲に追われている。

 彼女が過度に食欲を抑え込もうとすると、だいたいいつもああなる。


 俺はホッと胸を撫で下ろし、隣で動かなくなった青龍に目をやる。


 おそらくスラリンの影にやられたのだろう。

 体中に空いた黒い穴からは、今も真紅の血がゆっくりと流れ出している。


(ふぅ……心臓が止まるかと思ったぞ……)


 この様子だと楽に青龍を倒すことはできたようだ。

 ただ「討伐証明が必要だから、狩ったモンスターはすぐに食べては駄目だぞ」――日頃からこう言い付けていたために、食べていいかどうかの判断がつかず現状に至ったのだろう。


「おーい、スラリン。大丈夫か?」


「……あ゛っ。……じ、ジンーっ!」


 一瞬にしていつもの体に戻ったスラリンは、涙目になって走り寄ってきた。


 ぐーっ。


 と凄まじく大きな腹の虫が鳴いている。

 やはり極度の空腹に苦しんでいるようだ。


「あ、あ、あ……あのお肉……た、食べちゃダメ……っ!?」


 口からダラダラと涎を垂らしながら、彼女は青龍を指差した。

 アホ毛が右へ左へとせわしなく動き、余裕の無さは容易に見て取れた。


「あぁ、食べていいぞ」


 今回のクエストは特に討伐証明となる部位もなければ、誰彼に狩ったモンスターを見せる必要はない。


「ぜ、全部……っ!?」


「あぁ、スラリンが頑張って仕留めたターゲットだからな。もちろん、全部食べていいぞ」


「や、やったーっ!」


 彼女は全身から黒い影を伸ばすと、ものの五秒もかからないうちに全て食らい尽くした。

 つい先ほどまでそこにあった青龍は、まるで手品のように消えた。


 そのあまりの早業に遠目からずっと様子を窺っていた村人たちから、「おぉ……っ」というざわめきの声が上がる。


「あぁ……おいしかったぁ……っ」


 肉の味を反芻するように、スラリンは幸せそうにお腹をポンポンと叩いた。

 その間、ざっとスラリンの全身をチェックしたが、幸いなことにどこにも傷はない。


「ね、ねぇ、ジン! グラノスのお肉は?」


 スラリンはつい今しがた食べたばかりなのに、すぐさま次の食事を求めていた。

 実際既にお腹が空いているのだろう。今もゴロゴロと腹の虫が鳴いている。

 どうやら青龍だけでは、彼女の空きっ腹を満たすことはかなわなかったようだ。


 彼女は本当に……本当に燃費が悪い。


 少しまともに戦闘するだけですぐにこうなってしまうのだ。


「いや……グラノスは煤になってしまったから食べるのは無理だな」


 彼女ならば食べられないことも無いが……それほど腹は膨れないだろう。


「そ、そんなぁ……っ」


 スラリンはがっくりと肩を落とした。

 実はかなり期待していたのかもしれない。


「す、すまんすまん。かなり手強い相手でな。手加減する余裕が無かったんだ」


「うぅ……それなら仕方ない、ね……」


 アホ毛を元気なく垂らしながら、渋々といった様子で納得した。

 俺とて可能ならばグラノスの綺麗に仕留めたかったが、その考えは奴の憤怒の剛鱗を見た瞬間捨てた。物理攻撃に対して圧倒的な優位性を発揮する奴の権能は凶悪極まりない。


(実際、ヨーンの助言がなければ本当に危なかった……)


 あの緊迫した状況下で、大聖典の予言にまで頭が回るとはな。

 さすがは悪魔族、並外れた知能を持ち合わせてい……る。


(……ん?)


 そこまで考えたところで、俺は大きな違和感を覚えた。


(おかしい……どういうことだ?)


 ヨーンは何故、大聖典にグラノスを狩るヒントが書かれていたことを知っていたんだ?

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