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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ13歳 ラジーバ 留学編

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146 町長にばれました。

 騒ぎを起こさずにはいられない(自覚アリ)

 一面い広がる緑の大地。そして水のたまった池と流れる用水路。流れる水は透明で輝き、海の水とは違い匂いが薄い。

「こ、これは。」

 生まれて初めて見る光景を前に呆然としているのはアクアラーズの街長であるオクマナさん。若い頃は漁師として働いていたという彼は、筋肉モリモリで真っ黒に日焼けした肌を持つ、海の男って感じの人だ。

「これは、なんじゃーーーーー。」

 砂漠で絶叫するのは、体力と水分を消費する上に魔物を呼び込む可能性があるのでやめましょう。

「オクマナ殿、その気持ちわかりますぞ。」

「一緒に作業していた私達も信じられない。」

 そこまで言うか?

 いや、まあ私もここまでうまくいくとはおもわなかったけどさあ。


 土壌改善の第二段階で農作物を植えた私は、砂ダムの要領で水場を確保し、毎日水を補充した。その傍らでクマ吉と白熊の土魔法コンビには海岸線を走ってもらって砂を固めて壁を作ってもらい潮風と砂が流れ込んでくるのを防ぐ防砂壁を作ってもらった。これの効果は劇的で風に塩辛さがかなり弱まった。

 そこで、手が空いた暇つぶしに、サンちゃんとファルちゃんのコンビにより表面がガラス化され、ついでにとばかり精霊草の残りを植えたら緑の壁が出来てしまった。

 そこまでのレベルになるともはや、この場所を隠しておくことはできず、町長であるオクマナさんと数人のお偉いさんが視察に来たというわけだ。

「油料理やカニの調理法でも驚いたもんだが。街のゴミからこんなすごいもんを作るなんてな。」

 まあ、連日のように街の生ごみを持ち出す集団として警戒はされていたようだ。

「今日は、これ以上驚くことがないって思っていたのだが・・・。」

 そんなわけで宿に押し掛けてきたオクマナさん達は、私達をかばう宿の客達に驚き、私が見せた身分証明(王家発行)に驚き、ここの光景に驚き、更には説明されて、この光景が再現できるという事実に驚いた。

「これが魔法でも精霊様の御業でなく人力で、?」

「そうですよ、時間と手間をかければ、誰でもできますよ。」

 精霊の力によってごり押しはしたけど、時間をかければ人間でもできる。問題は精霊草の管理だが、ある程度地盤が出来れば、他の植物でも代用ができるかもしれない。

 特に、この街は貝殻や魚などの生ごみのほか船でたまったゴミなども豊富にある。

「海への影響もあるので、急に辞めずに量を減らしながら様子を見たほうがいいと思いますけど。」

「いやいや、腐るほどあるかなら。むしろ捨て場がなくて困っているぐらいだ。」

「ほう。」

 聞けば近場の海岸は生ごみで溢れシークラブなどの魔物の温床になっているため、最近では船をだして沖合でごみを蒔いているそうだ。

「厄介もののゴミで緑が増えるなら試す価値はある。」

「そうですね、船便のゴミも引き取れば感謝されるかもしれません。」

 なんか盛り上がっているオクマナさん達。砂漠に生まれた緑と水場。そんな非日常を前にしても、冷静に安全性と利益を考える姿はたくましい。

 何かを期待するようにちらちらとこっちを見ないでください。ちゃんと教えるから。

 ただ暑いから、街に戻ってからでいいですか?

 

 超特急で街に連れ戻された私は宿で涼みながら、改めて緑化の方法を話すことになった。

 ガラス化や焼き畑農業は精霊さんの助力がないと実現が難しいので、基本となる精霊草と精霊エキスの存在はサラっと説明し、実現可能そうな生ごみの活用法に重点を置いて話す。

「ゴミの分別はより丁寧にする必要があります。殻や骨は砕いて細かくして乾かした方が効果は高いと思います。それ以外の生ごみは藁や砂をかぶせて数日置いてガス抜きをしてください。」

 生ごみには糞や尿も含まれる。そのまま蒔いた場合、ガスによって土壌が痛むので、時間を置いて堆肥

にすることも必要になるだろう。

「そのまま蒔くのはだめなのか?」

「だめではないですけど時間はかかりますね。たぶん。」

「そもそもくそとかしょんべんか。なんかやだな。」

 アクアラーズには農業の習慣がないらしい。肥溜めなんてハッサム村には普通にあったぞ。

「海に垂れ流しておいて何をいまさら。」

 意識の改革は必要だろうけど、そこは街側でがんばることなので私は知らん。

「あとは、水場の確保ですね。」

「そうだ、あのきれいで辛くない水。あれはどうやって。」

 砂ダムの仕組みも説明するが、言葉だけでは理解できずそのまま簡易的に作って見せることになった。

 港町であり、色々な物資があるアクアラーズだが、ガラスの生産工場もあり、そこから板ガラスを数枚購入して箱型にくっつけてもらう。うん本場の職人が作るガラスは気泡もなくて透明度も高い。この箱だけでも結構な値段になりそう。

「水槽かこれは?」

「そうですね、仕組みはそんな感じです。」

 さらに同じものを三つほど注文して作ってもらい、同じサイズの木箱もいくつか用意してもらう。木箱といっても安物なので隙間が開いているボロボロなものだ。

 並べた6の箱、半分は木箱で、半分はガラス製だ。そして空箱と砂入り、砂と砕いたカニの殻を入れたものを用意する。

「まずは木箱ですが、隙間が開いていれば水はこぼれますよね。」

 魔法で生み出すた水を入れれば、空の木箱は隙間から水がこぼれてすぐに空になる。

「でも砂をいれておくと。」

 砂が入った木箱は、砂が吸うことで水漏れがやや遅くなる。

「なるほど、布とかで穴を塞ぐようなものか。」

「確かに一時的に水漏れは防げるな。」

 船乗りたちはこの結果に心当たりがあったらしい。

「で、これをガラスでやると。」

 残りの四つに同僚の水を流していくと、木箱もある程度は水を保持できたけどガラスの箱の保持具合は圧倒的だった。

「ってことは、あれか、嬢ちゃんが作ったのは、でっかい水槽ってことか?」

「でもそれじゃあ、すぐに干上がるぞ。街中だって、一晩で干物ができるんだぞ。」

 まあ、この先は時間を置いてみてもらおう。



 そして次の日。

 再び集まってもらった全員の目の前に水がこぼれて乾いてしまった木箱と、水が半減したガラスの箱。そして、ほとんど水が減っていない砂入りのガラスの箱だった。

「な、なんてこった。」

「水がスポンジの役割をしてるんです。」

「スポンジ?」

 詳しくは知らない。ただ、コンクリートで水が漏れるのを防ぎつつ砂を使って保水する砂ダムの原理はこのようなものだ。前世でみたニュース記事をもとに再現したらなんかうまくいった。

「ガラスか、他の物ではだめなのか。」

 まあ、そこは、前世のゲームの知識と精霊パワーでごり押したしたからガラスを使っているけど、レンガやコンクリートでもいけるのではないだろうか?

 ただモルタルとかコンクリートの作り方まではさすがに知らない。

「まあ、水漏れを防ぐことが出来ればなんとかなるんじゃないでしょうか?」

 この素材問題はマルクス王子にも相談したが、解決法は未だに見つかっていない。ワームを乱獲して皮を集めるとか、そこら中を火の海にするとか物騒な案しか出さなかったんだよねーあの王子。

「それなら、砂レンガでもいけるんじゃないか?」

「はい?なんですかそれ。」

「おう、この辺の岩山からは粘り気のある黒い液体がとれることがあるんだ。それと骨を煮込んだものを混ぜて作ったやつを砂に混ぜると石みたいにカチカチになるんだ。」

 なにそれ、もしかして。

 思えば、砂漠の街の建築物って・・・。

 

 

 コンクリートで重要なアスファルトは石油の加工品なので、ストラさんもお手上げです。

 天然のアスファルトは、古代エジプトや縄文時代にもあったそうです。

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