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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ13歳 ラジーバ 留学編

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128  獣人にも意地がある?それは何か?

 バトル回?なるといいなー。

 待ち構えていた1人は、先日の一件の犬コロだった。

「おいおい、なんだ立派な物をもって自信満々か。いいご身分だな。」

 ムキムキの身体に毛深い犬顔、いかにも獣人ですという姿の彼。二週間前のヤケドはもう治ったらしいが、よく見ると毛並みに乱れがある。なるほどトリミングはしないタイプらしい。

「身だしなみって大事だよね、飼い主は何してるの?」

「俺は飼い主じゃないっての。」

 ガン無視しておじさんをからかうと、その顔をプルプルと震わせてこちらに一歩踏み出すが、火の玉を生み出すとビビッて仲間の下にへと戻っていた。

「おいおいおい、そんな派手なのはやめてくれ、火事にでもなったら面倒ですまないぞ。」

 そんなことは分かっている、あくまで精鋭と言われる人々の反応を見たかっただけだし。私は素直に火の玉を決して、改めて集まっている6人を見た。

「んで、彼らがご自慢のメンバー、1人明らかにレベルが低いけど。」

「あれは、どうしてもというわけでいれただけだ、前座にもならん。そのうちしれっと冷やかしにまわっているさ。」

 なるほど、調子に乗っている新人に現実を教えたいのは私だけじゃなかったらしい。

 

 で、新ためて精鋭と呼ばれる人たちは、それなりだった。全員が全員きちんとした装備をして、がっしりとした体格をしており、それでいてこちらを侮るわけでも警戒するわけでもなくリラックスしている。

「お初にお目にかかる、レディ。この度はこのような機会を与えていただき感謝します。」

 慇懃無礼な態度でこちらに頭を下げるのは長身の男性だった。ツルっとしつつ金属のような輝きを放つ肌、道着のような服から見える腕は、ゴツゴツした甲殻に覆われている。何より目立つのはどっしりと存在感のある尻尾だ。

「そいつは、ロザード、爬虫類でも上位の竜系の獣人だ。」

 竜、ドラゴンという存在は、この世界に存在する。ただ大陸には存在せず、ゲームでも素材や名前のみが登場していた。竜系の獣人、竜人呼ばれる存在は、その典型だ。

「ラジーバの最初の街にこんな大物がいるとはわねー。」

「仕事で近くに来ていたのです、ですが、このような機会を与えられ、わが身の幸運に感謝です。これも日頃の行い、そして精霊のお導きでしょう。」

「・・・。」

「すまん、腕は確かだが、変人でな。」

 なにか恍惚とした顔をしているロザードさんだけど、その立ち位置振る舞いは達人のそれだ。あのくそ皇帝ほどの覇気はないけど、攻撃の隙が見えてこない。それは他の4人にも言えることだ。さて、どうやって戦うべきか。

 いや、まて私。今回は私じゃなくて、サラさん達に任せるんだ。ちょっとゲーム感覚でテンションがバーサーカーになりかけていた。精霊さんたちの護衛抜きで戦うような無謀はしない。

「では、尊き人に私の実力を示させていただきましょう。」

 うん、この人、違う意味でメンドクサイ。

 と、こちらが冷静になるくらい、ロザードさんのテンションとリアクションがおかしい。


 竜人と呼ばれる種族は信心深い。己に与えられた天分とも言われる能力、そして優れた視力は他者よりも深く世の中の理を理解している。そのため、超常の存在である精霊に対する信仰心は高く、それと心を通わせる聖女の存在は、彼らにとって夢のようなものだった。

「よもや、私の代で聖女様とお目通りが叶うとは。」

 独自の情報網を持つロザードは、王国にて聖女の噂を耳にしていた。

 第二王子の婚約者にして辺境伯の娘であり、癒しの力を持つと言われる姫君。そして、聖女の力でも癒せぬ病を癒す秘薬を創り出し、精霊を使役する魔女。この二つの噂を聞き、いつの日か出会えることを楽しみにしていた。

「マルクス王子が、王国の薬師様を王都に招待した。」

 その情報を得たロザードは、仲間を説得し、理由を付けてはじまりの街であるラグナラードへ赴いていた。本来ならば立場のあるロザードや仲間たちが、この場に居合わせたのはその信心ゆえだ。

 到着予定の日時より先にたどり着き、マルクス王子達一行が訪れるのを待っていた。

 

 そして、魔女ことストラ様は、砂漠を渡る船で訪れた。


 その威容にロザード達は驚いたが、何よりも心をひいたのは、その船を曳く精霊だった。

 地の精霊。ラジーバにも精霊は存在するが、あれほど巨大な存在は初めて見たし、そんな存在が人間に従っているという事実は驚きだった。その上、船から降りた聖女は、複数の精霊たちに群がれながら、それ以上の存在感を放っていた。それが魔力と呼ばれるものであることは理解していても、ただの人間がこれほどの力を蓄えている。その事実だけでも感動ものだった。

 すぐにでもその場に近づき跪いて、臣下に加えていただきたい。

 その願いは、仲間によって止められた。先方から接触がない限り、王子一行へは不干渉と、事前に命じられていた。今回は姿を見るだけ、正式な面会は後日、王都でとのことだった。後ろ髪ひかれる思いで、ぎりぎりまで見守っていた。

 王城で面会し、言葉を交わす。それを心待ちにしつつ見守っていたら、聖女は、慈悲深くも毛無したちに手を差し伸べられた。

「ちょっとばかり鍛えて、あの駄犬よりも優秀に仕上げてきます。」

 なんとも力強い言葉であったが、そういった類の慈悲は珍しいものではない。過酷な砂漠で生きるために自然と生まれた差別と現実。余所から来た人間には 奇異に見えるものだ。毛無したちの境遇に同情し、金銭な食料を与える者もいれば、国に連れ帰るという奇特な人間がいる。

 だが、同情や努力で生まれ持った才能の差は埋まらない。

「それでも、あの方なら。」

 一連の出来事を見守っていたロザードは、確信をもって斡旋場のマスターに準備を提案した。聖女ならば、毛無し達を一端の戦士へと鍛えあげる。それならばお披露目する場所が必要だと思ったからだ。

「すまないが、近いうちに迷惑をかけることになる。腕利きをあらかじめ選抜しておいてくれ。」

 マルクス王子からの要求もあり、マスターは半信半疑で準備を進めていた。

 そして、聖女は宣言通りに、毛無し達を鍛え上げて斡旋場へと現れた。自信の溢れた彼らの表情を見れば、聖女が成し遂げたことを疑う者などいないだろう。

 だからこそ気に入らない。

「獣人の意地を見せる必要がありますね。」

 戸惑っているマスターにそっと伝言したのは、嫉妬からだ。

 聖女は、自分の正しさを証明しようとしているだけだ。そこに他意や悪意はない。

 それでも獣人としては、毛無しが自分たちよりも強いことを認められない。そんな思いを持った者が、対戦相手として名乗りを上げ、選抜された。そんな中、ロザードだけはただ1人、聖女に己の力を示したくてうずうずしていた。

 その思いに、当の聖女が不信感を強めていることに気づかないまま。



 なんとも言えない熱のこもった視線にどうしたものかと思っていたら、サラさんがずんずんと前にでてその長身で視線から私をさえぎった。

「貴様、そんな不躾な視線を向けるな。女神様がけがれる。」

 女神じゃねえよ、でも、さすがサラさん、同じ女性としてロザードさんの妙な視線に気づいて盾になってくれたのだ。今後はサラ姐さんと呼ばせてもらおう。

「はっ、何を言っているんだ。貴様。」

「そんなあからさまに見ていて気付かないと思ったのか、このロリコン。」

「おいこら。」 

 ロリコンは余計じゃないかな?そんな私の抗議は知らんとばかりにサラさんは私と抱きしめるように背後に避難させ、他の4人も私をかばうように移動していた。

「ふ、ふん。毛無風情が調子に乗るなよ。」

「そうやって見た目を指摘するしかない三下が。」

 おいおい、竜人って獣人のエリートじゃなかったけ?サラ姐さん、大丈夫ですか?

「そうだ、調子のんな。」

「あんた達が、女神様の前に立つのも無礼よ。」

 いや、待て。なんか他の人達も覚悟がガンギマリなんですけど。おかしいよ、あと、私は女神じゃないよ?ただの一般貴族だよ。

「く、聖女様の慈悲をたまたま受けただけのくせに。いいだろう、私の力を見せてやる。」 

 おい、なんか落ち着いた竜人ムーブはどこへ行った?

 ロザードさんと5人、その燃え上がる闘志に他の連中までなんかヒートアップし、まるで戦の前かのように殺気立っていく。

「ただじゃすまさないぞ。」

「そりゃ、こっちのセリフだ。」

 こうして、のちにストラ事変と言われる模擬戦と言う名の決闘は行われることなる。私の知ったことじゃないけど。うん、私は知ったことじゃない。大事な事なので2回言っておこう。

「嬢ちゃん、まじであんた何者だ?」

「私の知ったことじゃない。」


サラ「ストラ様のために。」

ロザード「その席は私のものだー。」

その他「我々の立場は?」

 なんか濃いキャラが増えた。

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一番毛無しは竜人では?
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