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この花は咲かないが、薬にはなる。  作者: sirosugi
ストラ13歳 ラジーバ 留学編

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120 薬師、さらっと偉業をなす。

 楽しい、楽しい特訓タイム。

 鍛えると決めた、なので、さっそく拉致して魔改造。

 そういう勢いでの行動はろくなことにならないので、、マルクス王子に一応、断りはいれた・・・よ?

「ちょっとばかり鍛えて、あの駄犬よりも優秀に仕上げてきます。」

 そう啖呵を切った私に帰ってきたのは嘲笑と戸惑いだった。

「何を言っているんだ。獣人の才能は絶対だ。毛無しが俺たちに叶うもんか。」

 おい、マルクス王子、獣人に差別はないって嘘だろ。江戸時代の身分制度ばりに差別意識があるじゃないか。まあ、人種とか犯罪歴とかで、下の立場を作ることで社会を安定させるのは、発展途上の政治の常とう手段だから仕方ないけど。

「す、ストラ嬢。君の才能も実力も分かっているが、それはさすがに。」

 それを王子が自覚していないのはまずくないか?

「毛無しは気の毒な存在だ。どんなに優秀な血筋でも生まれることはあるし、生まれつき、成長は遅いし、魔力も弱い。かつては、前世で悪行を為した魂が罪を償うために毛無しになるとも言われていたぐらいだ。我々だって、彼らを救いたい。国外からの来客者の中には、彼らの保護を申し出る人もいるが。」

「ああ、それは体のいい奴隷商法では?」

 保護という名目で、連れ出して、使い潰す。自己肯定感の低い毛無士さん達はそれでも受けいれてしまう。むしろ、自分はまだマシ、幸せなほうだと思ってしまう。

 家族は家族で、恥部扱いの身内は自分と周囲の視界から消えてくれるので、万々歳。雇い主の「元気にやっている」という言葉を盲目的に信じていれば、罪悪感もない。

 そして、生まれたのが、かの帝国が誇る奴隷部隊、だったりするけど、長くなるので、またいつか。

「くだらない。」

 自分が傲慢かつ、偽善で大鉈を振るおうとしている自覚はある。全員を救うとか、社会を改革しようなんて傲慢なことは思っていない。

 ただ、目の前の理不尽に怒りを覚えて、独りよがりに救おうとしているだけだ。


 でも、それの何が悪い?


「その喧嘩買いますねー。2週間後に、土下座させて差し上げますから覚悟しておいてください。」

 はい、王族にメンチを切る。不敬罪です。だがそんなことは知ったものか。

「はい、運搬。」

「じじじ(了解)」

 決意した私は、マルクス王子に詳しい説明をあえてせずに、ハチさん達に指示をだして、ぐったりとしている毛無しさん達5人を近くの荷馬車に放り込んで、そのまま街の外まで運び出した。

「ま、待ってくれ。街の外は危険だ。水も食料もなしに?」

「大丈夫です、馬車に準備してあります。」

 我に返ったマルクス王子とお付きの人達が追ってきたが、私は無視して馬車の近くまで来て、そこで休んでいたクマ吉たちにも声をかける。

「みんな、ちょっと面白い事するけど付き合う?」

「ぐるるるる(いいよー。)

「ふるるるる(早速か、さすが姐さん。)」

 ノリノリの精霊さん達も引き連れ、ラクダ置き場を超えて、更に砂漠へと進み充分に距離を取ったところで、私は、クマ吉に触れる。

「いくよ、手伝って。」

「ぐるるるる(あとでブラッシングしてね。)」

 大規模な魔法を行使するとき、私は精霊さんの力を借りる。

 正確には私のイメージを精霊さんたちに伝えて形にしてもらうのだ。スーパー土木機械であるクマ吉だが、精霊である彼は土魔法も大得意。

「いけ。」

 イメージするのは、前世で読んだ忍者マンガのキャラクターが防御のために使った砂のドーム。直系100メートルほどの円形で砂が盛り上がり私達を覆い尽くす。

「サンちゃん、レッテ。」

「ふるるるる(心得た。)」

「ぴゅー(まだ寝てたいのに。)」

 完全に覆い尽くされる前に、レッテを掴んだサンちゃんが飛び上がり、ドームの天辺に巨大な火炎を生み出す、同時にレッテが白い息を吐きだしてそれを冷やしていく。

 何を作ったか?ガラスですよ、みなさん。

 ガラスの主成分は珪砂、つまり砂だ。これを1500度の高温で溶かし、冷却させればガラスになる。遊びで何度かやったことがあるので、効果は確かだ。

 透明度を上げるにはソーダ灰とかも必要だけど、今は最低限の彩光ができればいいので問題はない。むしろやや茶色のガラスなので日よけにもなっていいだろう。

 時間にして数分、砂漠や火炎の暑さを感じる前には上半分がガラスで覆われたなんちゃってドームの完成だ。

「仕上げはハチさん部隊。」

「じじじ(みんないくよ。)

 最後はハルちゃんたちハチさん部隊が、お得意の蜜蝋コーティングをしていく。クマ吉の魔法でカチカチに固めているので強度は充分だけど、もともとが砂なので念のためだ。

「な、なななあ。」

「今日から2週間、アナタたちにはここで特訓をしてもらいます。」

 突然の光景に言葉を失っている毛無しさん達を前に、私は勝手に宣言をした。

「ええ、ど、どういうことでしょうか?」

「貴女様は一体?」

 弱々しく疑問を口にするが、拒否するという反応はなかった。

 これもまた、実力主義の獣人らしい、あの犬獣人をボコボコにした上で、精霊と仲良しな私の姿を見た彼らの中には、疑問はあれど、反抗の意志はなくなっていた。

 これも良くないから、いずれは矯正したいところ。まあ、そんな考えはすぐに消えるけど・・・。。


 そういうわけで、ドキドキ、ハッサム流ブートキャンプのスタートです。


ストラ「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、痛い目に合わないと、人は動かじ。」

マルクス「物騒。」


 区切りがわるいので、今回は短め、次回はこそ、毛無さんたちの名前を紹介するぞー

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