表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
170/223

第十二話:完成したカジノとストラスとの協力

 目まぐるしく時が流れていく。

 ロロノは約束通り、一週間でティロの新武装を開発させた。

 今は新型アヴァロン・リッターの開発に取り掛かっている。

 最強の紅、白、黒の三銃士。今から完成が楽しみだ。


「おとーさん。行ってくるの!」

「がうがう♪」


 クイナがティロの背中に乗って手を振ってくる。

 ティロはわざとらしく両手両足に取り付けられた【タラリア】を見せつけるように歩く。

 試作型から強度を増し、軽量化。さらに燃費の大幅な改善が行われ、クイナの毛を使ったバッテリーが取り付けられている。

 ティロは【タラリア】をすごく気に入っており、食事のとき以外はずっとつけている。


「クイナ、ティロ、気をつけて狩りをしてこい」

「わかってるの!」


 クイナたちは今日もティロのレベルあげに向かう。

 あっという間に消えていった。


 そして、俺も屋敷の外に出た。

 街の中央部に来ると、見慣れない顔が増えていると感じる。アクセラ王国の三つの都市に建設した教会の効果が早くも出始めているのだ。

 聖地であるアヴァロンに参拝にやってくる人間は雰囲気でわかる。

 まだまだ、数は多くないが感情は強く質もいい。

 日に日に礼拝者が増加傾向にある。一か月も経たずにこれだ。これからはますます増えていくだろう。

 ……そして。


「本当に十日で作り上げてしまったな」


【平地】にたどり着き、驚きの声をあげる。

 昨日、無事にドワーフ・スミスたちがカジノの建設を終えた。

 白くて立派な二階建ての建物だ。


 一切自重をせずに数世代進んだ技術をふんだんに使っている。

 防音性、防熱性が高く、極めて頑丈だ。

 空調設備と音響設備も導入されている。

 千人収納できるようにと条件を出したが、その倍でも動員できそうだ。


 一階では世界各地から引き抜いたディーラたちがその手腕を見せつけ、二階の半分は飛竜レースを楽しむための数百人を収納できる巨大スクリーン付きのシアターがある。

 そして、二階のもう半分はテナントとなっており希望者にスペースを貸し出すようにした。


 テナントは有料にしてある。そうでないと、カジノ周辺で店を開くものたちに不公平だからだ。

 すでにテナントの募集は終えており、予約が殺到して抽選になっている。

 オークションでなく抽選にしたのはテナント料が高くなるほど必然的に客から多くの金を搾り取らないと立ち行かなくなる。客に損をさせて満足度が下がる。それは俺の本意ではない。


 そして、テナントには少し仕掛けをしてある。毎月売り上げの報告を義務付け、二か月連続で売り上げが最下位であれば契約更新は許さない。

 カジノに出店すれば、よほど下手をしない限りは利益がでる。その慢心により、品質を落とさないための保険だ。

 儲かる場所で商売するために、みな必死に最下位を避けようと努力をし、その結果カジノの満足度があがる。


 俺の姿を見てドワーフ・スミスが駆け寄ってきた。

 彼女に建物の正面に案内される。

 そこには多数のカジノ関係者がいた。今日はカジノのお披露目で中をみんなで見て回るのだ。

 時間が来たので、カジノ関係者たちと建物の中に入り視察を始める。

 外側から見ても美しく荘厳な建物だったが、中に入るとその驚きはさらに大きくなる。


「ドワーフ・スミス、よくやった。想像以上の出来だ」

「がんばりました! 期限ぎりぎりになりましたが、満足できるものを作り上げた自負があります!」


 重機以上のパワーと精度をもつゴーレムを動員し、土魔術を駆使したとはいえ、十日でここまでのものを作るとは思っていなかった。

 そう思ったのは俺だけではないらしい。


「これは、なんと」

「夢でも見ているかのようだ」

「……このような荘厳で美しい建物が十日?」

「普通なら数年がかりでも、作れるか怪しいですね」

「ははは、王国の連中はこれを知ったら失禁しますぞ」


 カジノ関係者たちも言葉をなくしている。

 建築中の様子を見ていたのだろうが、初めて中に踏み入れ、さらに驚きを増したようだ。


 カジノの隅々を見て回る。細部まで作りこまれておりどこにも手抜きのあとがない。

 しばらくすると、職人とディーラの一団によって荷物が大量に運び込まれてきた。

 机や椅子、巨大なルーレットや楽器の類。絵画や壺など、ありとあらゆるものが配置されていく。

 その先頭にいるのはアヴァロン一の商人、コナンナだ。


「皆様、時間がありません! 早急に内装を整えてください! これから三日間、寝られるとは思わないでくださいね! 代わりに賃金は三倍出しますし、期限通りに仕上げればさらにご祝儀もありますから! 絶対に間に合わせましょう!」

「「「はい!」」」


 職人たちが元気よく返事をし作業に取り掛かる。

 ディーラたちも付き添い、己が仕事をしやすいように逐一口を挟む。

 ドワーフ・スミスたちにできるのは器を用意することだけ。

 カジノに仕上げるのはコナンナと職人たちの手腕にかかっている。


 その関係で建築中にもコナンナとテナントの当選者には内装も見せているし図面も渡してあった。

 コナンナは、この十日の間にディーラ、職人たちと話し必要なものを買い集め、作業に必要な人手を用意している。

 すべては建物が完成次第即座に内装を仕上げられるようにするためだ。

 コナンナが俺に気付いてにこやかな表情を浮かべて駆け寄ってくる。


「コナンナ、来週のオープンに間に合うか?」

「もちろんでございます。ただ間に合わせるのではなく、期待以上のものをご覧にいれますよ」


 頼りになる。

 コナンナは絶対にできないことは約束しない。

 彼がやるといえば、その通りにやるのだ。


 彼と別れたあとは、カジノの隅々まで関係者たちと視察を終えた。

 問題点は一つもない。

 とくに二階のシアターは素晴らしかった。


 試しにシアターの設備を使って過去の飛竜レースを上演したが、凄まじい臨場感だ。スクリーンの出来も音響も素晴らしい。

 天井の開閉ギミックもばっちりだ。

 視察を終えたカジノ関係者たちが意気揚々と帰っていく。


「ドワーフ・スミス。俺はおまえたちを過小評価していたようだ。ロロノに頼らずとも、ここまでやれるとは思っていなかった。謝罪と感謝をする。あとで臨時報酬を届けさせる。その金で楽しんでくれ」

「ありがとうございます。ドワーフ・スミス一同。その言葉が聞けてうれしく思います」


 これだけのものを作れる以上、アヴァロンの建設関係はすべて一任していいだろう。

 それだけで、ロロノの負担が随分と減る。

 鍛冶屋としての仕事もドワーフ・スミスに任せて、ロロノにはアヴァロンの戦力増加につながるものに専念してもらう。


「そういえば、おまえ以外はどうしたんだ? カジノができて手が空いただろう」

「いえ、まだまだお仕事が。カジノのオープンまでに上下水道を完成させておきたいですし、カジノと周辺施設を覆う防壁も作りたいです。今はインフラの全体設計を進めております。設計ができるまで手が空いている子たちは、周辺施設を作る人間たちを助けたり、デューク様の宿の別棟にプレハブを建てていますね。働きに来てくれた人たちがテントや居候で辛そうですから」

「気が利くな。ありがたい」


 インフラ設備は絶対に必要だ。

 人間が千人以上集まるということは、それだけ排泄物やゴミが出るということ。その対処をしなければ、すぐにカジノは薄汚くなるだろう。


 インフラが整っていない段階ではいくら清掃しようが限界はある。

 そして、宿に増設したプレハブもうれしい。

 カジノの周辺施設を作るために多くの職人と施設で働く多くの労働者が押し寄せてきているが、彼らが住む建物などは用意できていない。


 もともと、アヴァロンにはデュークが経営している、労働向けの素泊まりしかできない激安宿があるが収容人数に限りがある吸収しきれない。

 だから、ほとんどのものたちは、商人が用意したテントや、知り合いの部屋に居候という形になっている。

 ドワーフ・スミスの言っているプレハブ小屋ができれば、住宅事情が改善される。


「……ただ、やりすぎるなよ。デュークには増設した宿はカジノ関係者以外は使用不能、値段は半額にするように伝えろ。準備ができしだい、カジノ周辺でアナウンスを頼む」

「わかりました! そのように手配します」


 大人数が泊まれる激安宿は魅力的だが、カジノ目当ての宿泊客を見込んで宿を建設している商人たちもいる。

 そこと客を取りあってもつまらない。

 それに、プレハブは応急処置だ。今、アヴァロンたちは人間の職人により家の建設ラッシュが始まり空前の好景気だ。

 補助金を出してでも、それらの家を買ってもらうように誘導しないといけないだろう。労働者が家を買えば定着率が上がる。

 定住者が増えればありとあらゆるものの消費量があがる。


「本当にプロケル様は人間に気を遣いますね」

「人間の感情がいないと俺たちは生きていけないからな。尊敬も尊重もするさ」


 今回だけでなく、実はいろいろと人間に気を使っている。

 たとえば、ドワーフ・スミスたちには鍛冶屋以外で人間からの依頼は一切受けるなと命令している。

 ドワーフ・スミスたちが本気になれば、職人や鍛冶師、錬金術師の仕事をすべて奪ってしまう。

 そうなれば、アヴァロンから人が減る。

 街の運営も楽ではないのだ。

 基本的に、ドワーフ・スミスたちは公共事業と鍛冶専門だ。


 何はともあれ、カジノは予定通り来週には営業開始できそうだ。

 アヴァロンに繁栄をもたらす夢の施設。

 その力が発揮される日は近い。オープンと同時に大勢の人間たちが押し寄せてきて上質な感情を振りまいてくれるだろう。

 俺はまた強くなる。

 そして、もう一つ楽しみにしていたものが来た。


「来たか。返事が遅いから心配したぞ」


 肩に青い鳥が止まる。

 ストラスからの手紙だ。


「受けてくれるか、ありがたい」


 ストラスのダンジョンとアヴァロン。

 双方を強化するための提案にストラスが乗ってくれた。

 さっそく、あとでストラスのダンジョンに向かおう。

 成功すれば、暗黒竜グラフロスたちの弱点を払しょくできるし、ストラス側も高い攻撃力を得るだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載始めました!
こちらも自信作なので是非読んでください。↓をクリックでなろうのページへ飛びます
【世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する】
世界一の暗殺者が、暗殺貴族トウアハーデ家の長男に転生した。
前世の技術・経験・知識、暗殺貴族トウアハーデの秘術、魔法、そのすべてが相乗効果をうみ、彼は神すら殺す暗殺者へと成長していく。
優れた暗殺者は万に通じる。彼は普段は理想の領主として慕われ、裏では暗殺貴族として刃を振るうのだった。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ