第十一話:アヴァロンの三銃士
食事が終わり、ロロノたちとまったりしながら地下のシアター室にいた。
【星の記憶】にアクセスし、【創造】したアニメ映画を見ていた。今はスタッフロールが流れている。
ロロノが、スイッチを入れればキック力がいようにアップするシューズや、どうみてもおかしなぐらい伸びるし丈夫なサスペンションを見て、目を輝かしていた。
ちなみに、クイナは途中でティロを枕にして寝ている。クイナの場合、派手なものでないとすぐに寝てしまうのだ。
夕方のことを思い出す。
ロロノの二つの新兵器の実験を行った。
空を駆ける具足【タラリア】。
巨大炸裂式杭打ち機【モーテリウス】。
ゼロ距離からの急激な加速と、空中での疾走を可能にする【タラリア】は、前足に取り付けられた六本の爪の鋭さもあり、ティロの機動力と攻撃力を爆発的に上昇させる。
【タラリア】のことは、ティロもすっかり気に入ったようだ。
しかし、後者の【モーテリウス】はティロには合わなかった。
とはいえ、完成度は高く、圧倒的な破壊力を持つ素晴らしい武器なのは間違いない。そのまま捨てるのはもったいないので、巨大なボディと圧倒的なパワーを持つアヴァロン・リッターに移植が決まった。
アヴァロン・リッターならあの重量でも使いこなせるだろう。
「マスター。今日の映画は面白かった」
「ロロノ、言っておくがキック力増強シューズや、不思議なサスペンダーは作ろうとするなよ」
ロロノが目をそらす。
きっと、作るつもりだったのだろう。
あれはかっこいいが、俺の魔物たちが使ってもあまり活躍できそうにない。
ロロノはわりと衝動で動くので注意が必要だ。
彼女はわざとらしい口払いをしてから口を開いた。
「それは置いといて。アヴァロン・リッターの右腕に【モーテリウス】を移植するって話で思い出した。先の戦いで、大量のツインドライブの実戦データが集まった。おかげで問題点の洗い出しができた。それをもとに新型ツインドライブコアの設計が終わってる」
「それはすごいな。今でも短時間ならSランクの魔物とすら渡り合えるアヴァロン・リッターがまだ強くなるのか」
思わず、身を乗り出す。
少しでも戦力を増加したいアヴァロンにとって、これ以上の朗報はない。
「ん。安定性が大きく増すし、理論上は出力が40%ほど上昇する予定。……ただ、新型は旧型よりも二つのコアのマッチングが厳しい。アヴァロンに存在するコア全部でマッチングテストをしてみただけど、新型に使えそうなペアは三つだけ。とりあえず、新型を作ってから新型のデータを集めて量産するための方法を考える」
マッチングが厳しいとはいえ、アヴァロン・リッターの出力が四割増しになるのは素晴らしい。
さらに、その新型コアで【バーストドライブ】をすればどうなるか。
……いや、【バーストドライブ】は過剰出力を持て余している。これ以上出力が増えてもあまり意味がないだろう。
「新型のゴーレムコアの開発よりも、【バーストドライブ】の改良のほうが気になるな。そっちはどうなっている?」
【バーストドライブ】……アヴァロンリッターの切り札。
ツインドライブコアに加えて、コンデンサー魔力を使用し、オーバーロードさせることで圧倒的な魔力を得られる。
その際の戦闘力はSランクの魔物にすら匹敵する。
これには二つ欠点がある。
ゴーレムコアへの負担が大きすぎて短時間しか行えないし、行ったあとはしばらくゴーレムコアの出力が大きく低下する。
さらには、過剰な魔力が流されてボディの魔力回路がずたずたになり、スクラップ同然になってしまうのだ。
今はコアの出力アップよりも、【バーストドライブ】の改良が優先だろう。
「そっちも実戦データから、魔力回路の強度自体を上昇させる手法を発見した。加えて外部パーツのスタビライザーをコアにつける。過剰すぎて魔力回路が耐えられない出力を、ボディではなく外部の超大型ジェネレーターとブースターに誘導して負荷を分散する」
「単純だが、いい発想だ」
魔力回路のキャパを超える出力は毒にしかならない。
だから、それを別のところにもっていく。
ロロノが最近、【創造】で作り与えたタブレットを操作し、図面を出す。
「新型魔力回路も、スタビライザも実はまだ設計が終わった段階。新型ツインドライブコアと合わせて、新しいアヴァロン・リッターを試作してテストする。これがうまくいけば、全部が解決する」
なるほど、三つの改良案をすべて盛り込んだアヴァロン・リッターを作るのか。
「それは楽しみだな。すべてが成功したらすさまじい期待になりそうだ」
「ちょうどマッチングに成功したゴーレムコアが三セットあるし、はじめの三体はデータ収集のために、まずは量産を考えずに持てる技術全部つぎ込んでみる。できれば、いろんなバリエーションがほしい。見て、さっそく【モーテリウス】の搭載を前提に新型アヴァロン・リッターを考えてみた」
「……えらくごついな」
「この子は、近接特化型。基本設計思想は圧倒的な重装甲で突っ込んで、巨大炸裂式杭打機【モーテリウス】の一撃をもって仕留める。多対一は捨てて、敵のエース狙いの決戦兵器」
「破壊力はありそうだが、これだけ重いと速度はでないだろう? コンセプトが破綻していないか?」
どう見ても、今までのアヴァロン・リッターよりも一回りか二回りほどごつい。
どれだけ火力があろうと敵に追いつけなければ意味がない。
この巨体では速度がでるとは思えなかった。
「大丈夫。マスターに言われて作った半重力ユニット、あれを応用してホバリングできるようにしてある。浮かせてから、ツインドライブ任せの超出力ブースターでぶっ飛ばす。直線の速さだけなら誰にも負けない。究極の突進」
「……なんてロマン兵器だ」
重いから浮かせてからブースト任せでスピードを確保。
まるで子供のような強引な発想だ。
しかし、面白くはある。
「実は、この重装甲も新開発素材。魔力との親和性が高いオリハルコンの特性を活かして、装甲なのにバッテリーとしての役割も果たす。そのおかげで【バーストドライブ】なしでも凄まじい出力。【バーストドライブ】発動時には過剰な魔力を吸収できるし、バーストドライブ後も戦闘力を維持できる」
「一石三鳥だな」
俺の言葉にロロノが首を振った
「一石四鳥、【硬化】のエンチャントが装甲に刻まれているから、魔力が溜まった状態の防御力は驚異的。分厚い装甲で凄まじい魔力量での【硬化】……この子は何者にも貫かれない防御力を持ち、【モーテリウス】で何者をも貫く攻撃力を持っている。攻撃力、防御力、速度、すべて揃っている」
そのために、それ以外を捨てているあたりが男らしい。
継続戦闘力、汎用性、旋回能力、遠距離戦闘。弱点は無数にある。
「この装甲の開発に成功すればアヴァロン・リッターの革命が起こるな」
「……問題は作るのに、凄まじい技量と時間が要求されること。私が三週間ほど、かかりっきりになる必要がある」
だろうな。
そんなとんでも新技術盛りだくさんの試作品があっさり作れるわけもないか。
いつの間にか、ティロがやってきていた。クイナの枕状態から抜け出したらしい。
「ぐるるぅ」
何か言いたそうに、うるんだ瞳でロロノと俺を交互に見つめる。
ロロノが苦笑し、ティロを撫ぜる。
「ティロ、わかってる。ティロの【タラリア】の完成が最優先。ちゃんと一週間で終わらせる」
「がうがう♪」
どうやら、三週間装甲を作るのにかかると聞いて、自分のおもちゃが後回しにされることを危惧してやってきたらしい。
ティロがお腹を見せてひっくりかえり、ロロノが撫でてやる。
……たまに思うのだが、ティロは俺の魔物の中で一番あざといし、かしこいのではないだろうか?
ペットというポジションと自分の可愛さを自覚し、要所要所でしっかり甘える。
「マスター、一週間以内にティロの【タラリア】で完成させる。そのあと三週間は新型アヴァロン・リッターの開発に専念させてほしい」
「理由を聞かせてもらっていいか? ロロノはアヴァロンの戦力強化の要だ。その三週間は重いぞ」
ロロノが三週間という時間で出来ることは多岐に渡る。
新型アヴァロン・リッターの有用性が証明できなければ許可できない。
「三週間あれば、この子だけじゃない。新型アヴァロン・リッターを三パターン作ってみせる。装甲をはじめとして、新型パーツは一度にたくさん作ってもさほどかかる時間は増えない。今、見せた近距離戦特化型、遠距離戦特化型、汎用型を作るつもり。この三機ができれば、アヴァロン・リッターを超えたアヴァロン・リッターが三体戦力に加わる。なにより、次期主力量産型アヴァロン・リッターに必要なものが見える。今のままじゃ新技術の量産はできない……実際に作ってみる必要がある」
新技術を搭載した一騎当千の試作機。
そして、三体の試作機から得られたデータをもとに作られる量産機。
……想像すると興奮してきた。
これらは確実に、アヴァロンの戦力を大きく上昇させる。
元よりアヴァロンの主戦力は三つ。
アヴァロン・リッターをはじめとしたゴーレム部隊。
暗黒竜グラフロスの空戦部隊。
デューク率いるアンデッド部隊。
三大戦力の一つが大幅に力をつけるのだ。断る理由がない。
「わかった。ロロノはティロの装備開発が終われば、新型アヴァロン・リッターの開発に専念してくれ。それが終わるまではロロノに頼らず、アヴァロンを運営していく」
「ありがとう。マスターの期待を超えるものを作って見せる。世界最高の鍛冶師のプライドにかけて」
ロロノへの期待値は高い。
だが、ロロノはその高い期待のさらに上に行くだろう。
「楽しみにしているよ。終わったら、またご褒美にデートしようか。前のデートのときに、そう約束していたからな」
「ん。ずっと、ずっと楽しみにしてた。がんばる! すごいのを作る。紅と白と黒の三騎士、父さんとアヴァロンを守る三銃士!」
ロロノが力強く微笑む。
頭を撫でてやる。
今から、ロロノが作る三機の試作機。そして新たな量産型が楽しみだ。
「さて、そろそろ寝ようか。ロロノ、徹夜明けで辛いだろう。映画に付き合わせて悪かった」
「ううん、こうして父さんと一緒の時間が好きだから楽しい。ただ寝るのはもったいない。でも、そろそろ眠い」
立ち上がるとロロノが腕を組んでくる。
そのままベッドに向かう。
今日はゆっくり眠ってもらい、また明日から頑張ってもらおう。
そういえば、手紙を出し忘れていたな。
ストラスからもらった青い鳥の足に手紙を巻き付けて空に放つ。
ゴーレム部隊が強化されるのだ。
空戦部隊も強化しないと。俺とストラス。双方の空戦部隊を強化するための案を書いた手紙をもって、青い鳥は飛んでいく。
きっとストラスなら俺の提案を受け入れてくれるだろう。




