欲を満たすための手
妹ルキナ視点レオ視点
最近、思い通りにならないことが増えてきた。
お父様もお母様も、屋敷の使用人たちも、
どうも扱いが雑になってきた気がする。
「なんでよ……! 私は屋敷で一番可愛いのよ?
もっと私に構いなさいよ!」
鏡の前で金飾りのリボンを整えながら、ルキナは唇を尖らせた。
最近は欲しいと言った装飾品も買ってもらえないし、侍女たちも生意気に“必要なものを優先します”なんて言ってくる。
優先すべきは私でしょうが。
(仕方ないわね……こういう時は、ウィルにねだればいいだけ)
ふふ、と甘い笑みを浮かべる。
ウィル・キヌス。フローラ姉様から奪ってあげた“婚約者”。
腕を絡めて、甘い声をかければ、すぐに鼻の下を伸ばす。
貴族の男なんて単純なのよ。
利用してあげなきゃ損だもの。
「何を買わせようかなっ♪」
ルキナは軽やかに室内を出ていった。
――同じ頃、レオ側。
「次は……ウィル・キヌスだが」
姿絵の横に書類を広げながら、俺は静かに呟いた。
「真実の愛とやらは、証明できるのか……試してやろうか」
影が思わず喉を鳴らしたのが、気配だけでわかる。
『……ゴクリ』
「“真実の愛”ってのはな、悪魔の証明だ。
存在するというなら、証拠を見せるべきだろう。
……そうだな。理不尽な目に落としてやれば……くくっ」
影(もう救いようがない……)
俺はただ、事実を確かめたいだけだ。
ウィルが口にした“真実の愛”が、本物なのかどうか。
理不尽。
裏切り。
破滅寸前の状況。
それでも同じ言葉を吐けるのか――興味がある。
――その頃、遠くの邸宅。
ウィルは突然、背筋がゾクリと冷えるのを感じた。




