85話 VS火竜
久々更新につきあらすじ
ギルドの面々の視線に耐えきれず空中散歩をしてたらドラゴンに遭遇
「まさか、竜とは・・・」
むき出しの牙。
鋭い爪。
表皮を覆う岩肌の様に猛々しい鱗。
爬虫類の様に瞬膜が覆う眼球。
含めれば全長5メートル程あろう、長い尾。
爬虫類めいたその特徴は見紛うことなく竜。
(本物なんて見たことないけど・・・・『目利き』)
名:なし
レベル:34
種族:サラマンダー
性別:男
武器:なし
防具:なし
攻撃力:1002
防御力:794
素早さ:414
知力:356
精神力:288
器用:42
運:12
状態:ふつう
称号:なし
所有スキル:
《咆哮・火LV.2》
《竜鱗の加護LV.1》
(サラマンダー?竜じゃないのか・・・?確かに、竜のイメージに付き物な翼はないが・・・スキルの『竜鱗の加護』)
更に『目利き』をスキルへとフォーカスすると。
《『竜鱗の加護』:『竜種』限定スキル。弱点属性以外すべての物理攻撃、属性攻撃への耐性。レベルに応じて効果は増減。なお、『竜殺し』属性のみ被ダメージ2.0倍》
「やっぱりドラゴンで間違いなさそうだな」
だとしたらかなり厄介そうだ。
『竜鱗の加護』の効果だけでも反則的なのに、レベルに対してのパラメーターの高さ。
こちらの半分のレベルで攻撃力が4桁に突入している。
これだけで、ドラゴンという種の生まれ持つ強さがうかがえる。
(こいつは名持でもなく、最初の一体目となると多分『竜種』の中の劣等種みたいなものなんだろうけど・・・・)
新たな敵を慎重に分析していると、サラマンダーの頭部回りの景色が蜃気楼のように歪むのを視認した。
「なんだ・・・?」
牙がかみ合った隙間から赤い揺らめき。
炎がチリチリと大気に爆ぜる光景を目にした時、俺はようやくヤツがしようとしていることを察する。
「くっ!」
数秒後に来るそれに備えるために周囲を見渡すと、俺のすぐ後方に一人取り残され腰を抜かしたように地べたへへたり込む女性の人影があった。
「くそっ!」
即座にストールを外套へと変形させ、その射線上に割り込む。
こちらを狙っているのか女性を狙っているのかはわからないが、とにかく俺は動いた。
そして次の瞬間。
サラマンダーはその口蓋を見せつけるように大きく開口。
その喉奥から放たれるは灼熱の火球。
その圧と熱は。
廃棄区画で久我の手下が放った火球とは一線を画す破壊力を孕んでいた。
(けど、実体があるならっ・・・!)
火炎放射のようにうねる実体無き炎であれば防ぐのは難しい。
気休めに外套へと変形させたが恐らくそれでは焼かれていただろう。
だが目の前にせまる火球は先述の火球と系統は同じ。
つまり―――
「だぁっ!」
かき消せないこともない。
「グルル・・・・」
左腕の一振りで灼熱の火球を散らす。
その光景を目にし、俺を完全に敵として認識したようで、唸るように喉を鳴らし威嚇する。
「―――今の内に逃げろ」
座り込む女性に手短に避難を促す。
それは正直、彼女を慮ってというよりこの戦闘において間違いなく重荷になると判断したからだった。
(ガントレットが軋む。今の一撃だけで相当熱もこもっている・・・・それにもう充魔が半分以上溜まっている)
全ての事実が、目の前のモンスターの。
ドラゴンの地力の高さを物語っていた。
そこにはレベルで上回っているアドバンテージなど存在しない。
この種の前では一片の隙も見せることができない。
なにかを守りながら戦うなんてあまりに無謀だ。
「まったく。ゴブリン、グール、吸血鬼と来ていきなりドラゴンか」
もう少し段階を踏んでほしいもんだ。
「でもまぁ―――」
自分の中に沸々と燃えるものがあり、それを俺は自覚している。
スキルが発現して以来、俺が戦ってきたモンスターは二足歩行の人型。
どこか対人の延長線みたいな部分はあった。
だが今目の前に立ちはだかる異形はまさに怪物。
「いい機会だ」
今までのセオリーを覆す突然の邂逅だが、多分俺がこの世界で生きていく上でいずれは通るだろう道。
「倒すぞ。サラマンダー」
「グルルル!」
その宣言を合図に敵は動き出す。
しなやかに胴をうねらせ、地を這うように四足をもって向かってきた。
(まるでトカゲだな。それに速度は大したことはない)
だが如何せん、人型以外との戦闘経験が足りなさすぎる。
『洞観視』をもってしてもその動きから次の行動を予測することができない。
(けどこの巨体と素早さのパラメーターからして、攻撃速度も愚鈍なはず)
するとサラマンダーはそのまま突進してくるかと思いきや、前脚を突っ張り長く太い尾を鞭のようにしならせ、俺の間合いの外から横薙ぎの攻撃を仕掛けてくる。
が――――
(思った通り大した速力じゃない、見てからで十分避けられる)
跳んで避けると、火球に狙い撃ちにされるのでそれを屈んで躱す。
頭上で空を切り、その円周上に置き去りにされた車両や電柱を、なぎ倒し吹き飛ばしながらサラマンダーは一回転した。
「・・・・破壊力は抜群だな」
ひと薙ぎで巻き上げられた重量物がけたたましい音をたて落下する最中。
躱された苛立ちを表すように地へと尾を叩きつけ、爆ぜ散るアスファルト。
ヤツが纏う鱗の硬度がうかがえる。
「この調子で暴れられたら、ここら辺が滅茶苦茶になる」
攻撃力は怖いが予測なしに充分躱せる速度。
スキルを含めた防御力も未知数だが、攻撃しない事には倒せやしない。
ここからはこちらが攻めさせてもらう。
「いくぞ!」
こちらの出端をくじかんと、再びやつは炎を吐き出した。
「! 今度は放射型!?使い分けられるのか・・・!」
広範囲へと燃え広がる赤い炎。
火球タイプをかき消されたのを見て攻撃方法を変えてきた。
さっきの女性を庇った状態だったらひとたまりもなかったかもしれない。
「だが遅い!」
火球よりも緩慢に迫る炎。
それを振り切るように俺は駆けだした。
(火の手が燃え広がる前に懐に飛び込む!)
回り込むように高速で走行し、なるべく最短を駆ける。
こちらの影を追うようにサラマンダーは首を向け吐き出される炎もそれにならう。
「グルゥ・・・」
こちらの速度を見てこの火炎はでは焼けないと判断したのか、牙をガチンと噛み合わせ一度炎を切ると。
再び放射状の炎を吐き出した。
だか今度は俺に向かってではなく――――
「地面に向かって・・・・反射か!」
地にぶつかった炎は、アスファルトを焼きながら地を這うように扇状に広範囲を覆うように迫る。
「ちっ!」
想定外の頭脳プレイに舌打ちをしつつ大きい横っ飛びで灼熱の絨毯から逃れる。
すると、アスファルトへと延焼した時点で再び牙を噛み合わせたのか、二撃目のブレスの準備を既にヤツは整えていた。
「グァッ!」
放たれた火球は、俺の着地先へとドンピシャで放たれ。
「しまっ・・・!?」
人工の大地を溶かし、爆ぜさせ抉る爆音が街中に響いた。




